水曜日, 4月 04, 2007

日本の軍隊、役割拡大に備える

フィナンシャル・タイムズ

(フィナンシャル・タイムズ 2007年3月29日 翻訳gooニュース) 東京=デビッド・ピリング

日本の安倍晋三首相は3月、防衛大学校の卒業式に出席し、日本は今まさに転換期にあり、卒業生諸君はその中で「軍」(訳注・原文の"military"をそのまま訳出)に入ろうとしているのだと、強調した。

卒業生を前に安倍首相は、北朝鮮の核開発から「大量破壊兵器の拡散」に至る「様々な課題」が、立ちはだかっていると述べた。日本がもっと意思をはっきりと 主張し、国際情勢に積極的に関与するとなれば、これまで以上に世界各地の紛争地に、自衛隊の部隊や装備を派遣することを否応なく意味する。

安倍氏の主張としては新しいものではない。これまでの論調を踏襲した発言だ。昨年秋に首相就任して以来、安倍氏はもっと積極的な外交の展開を主張し、防衛 庁を防衛省へと格上げした。そして日本政府はまさに今、防衛費の割り当てを必要とする様々な施策を次々と打ち出しているところだ。

日米両政府がまとめた在日米軍再編案という大規模なプランに基づき、日本政府は約1兆円を負担する。その一環として政府は、ミサイル防衛システムの配備を 急いでいる。3月末には、地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)が東京北部の航空自衛隊入間基地(埼玉県)に配備された。PAC3はすでに、在日米軍約 5万人に大半が駐留する沖縄の嘉手納空軍基地には、20基以上が配備されている。

PAC3は、日本へ向かって打ち込まれる弾道弾ミサイルを迎撃するよう設計されたもので、日本のイージス艦に搭載されている海対空ミサイルとセットで機能する。

「省」に昇格したばかりの防衛省を率いる久間章生防衛大臣は、そもそも2011年完成予定のミサイル防衛システムを、前倒しで配備するよう主張。「国民の不安を取り除く必要がある」からだと述べている。

日本政府はこのミサイル防衛システム以外にも、巨額の防衛費を払わなくてはならない。たとえば、老朽化した戦闘機約300機を次世代機と入れ替える必要が ある。いま現役の戦闘機の中には、1971年に就役したものさえある。次期機には、1機あたり2億ドル(約240億円)の米国製か、1機あたり6500万 ポンド(約155億円)のユーロファイターのどちらかが選ばれる見通しだ。

さらに日本は、在日米軍再編の一環として、在沖縄海兵隊のグアム移転費60億ドルを負担しなくてはならない。

こうして米軍再編に資金を出し、自衛隊の役割も拡充しようとする一方で、日本政府は防衛費を国民総生産(GNP)比1%以下に抑えるといういわゆる「1%枠」を守ろうとしており、現に防衛費を削減している。

多くの人が、この矛盾に注目している。たとえば、トマス・シーファー駐日米国大使がそのひとりだ。シーファー大使はこのほど報道陣に対し、日本は米政府に 便乗しているという考えを示した。「米国はGDPの4%以上を防衛費に費やしている。このお金はアメリカを守るためだけではなく、日本とアジア太平洋地域 を守るためにも使われている」

大使はさらに「(防衛分野で)日本にできることがたくさんあると気づいてもらいたい。その多くは、『GDP1%以下』という非公式の枠内には収まりきらないものだということにも、気づいてもらいたい」と述べた。

「将来的には様々なことが予想され、日本がこのまま現状レベルの防衛費を維持するのはきわめて困難になるだろう。米政府は、日本が防衛費を増やすことを期待している」

昨年12月末にまとめられた予算案では、今年度の防衛費は5年連続で削減され、前年度比0.3%減の400億ドル(4兆8016億円)と決まった。

防衛関係者や防衛族は、予算増を求めていた。しかし財務省は削減を強く求め、冷戦中に想定されていた陸上攻撃に対抗するための装備を廃棄することで、予算削減は可能だと主張した。

東京のテンプル大学で防衛問題を専門とするロバート・ドジャリック氏は、シーファー大使が日本の防衛費増を求めたのは、米政府の意向を反映したもので、安 倍政権にとってプラス材料になるかもしれないと話す。「日本の保守層にとっては、『もっと防衛に金を使ってくれ』と米国大使に言われるのは、いいことなの だろう」

しかしドジャリック氏の意見では、防衛費増大を受け入れる用意が日本国民にはまだない。戦後を通じて日本は、国家防衛のほとんどを米国に外注していたから だ。「アメリカが、頼りになる傘を掲げてくれているのだから、どうしてもっと払わなくてはならない? そういう考えだ。防衛費を増やせという有権者からの 圧力は全くない」

防衛大の卒業式で安倍首相は、日本の「安全保障基盤の着実な整備を図るとともに、日米同盟を一層強化していく必要がある」と強調した。

しかしドジャリック氏によると、「1%枠」を超えても防衛費を増やすよう日本の世論が求めるようになるには、本当にアメリカは本気で日本を守ってくれるのだろうかという疑問が、もっと高まる必要がある。しかし日本国内ではこのところ、米国への信頼が揺らぎつつあると同氏は言う。6者協議で米政府が、北朝鮮 との合意を急ぎすぎたという批判的な見方が、あちこちで浮上しているというのだ。

米政府が北朝鮮との合意を受け入れたのは、中東で頭がいっぱいだからで、米国は北東アジアの諸問題に真剣に取り組んでいない——。日本の保守層の一部は、こう解釈した。

アメリカは日本を守ってくれない、そういう不信感が広まれば、防衛費1%枠の撤廃を求める世論の高まりにつながるかもしれない。しかし、日本政府が防衛費 増を目指しているという兆候が表面化すれば、日本国内だけでなく中韓からの強い反発を招くことになるだろう。「政治的に、実現可能なことかどうかは分から ない」とドジャリック氏は言う。



給油是か非かってのは分かり易いけど、議論の遡上に載せるんなら、防衛費ってのも、キッチリさせんとあかん類の話なんでないのかな?

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