金曜日, 4月 18, 2008

労働力底上げになるか、ジョブ・カード制度がスタート

「
ダイヤモンド・オンライン 2008年4月17日(木)14:40
 「ジョブ・カード制度」というものをご存知だろうか。ジョプ・カードとは職業訓練の履歴などが記載されているカードで、交付により自身の職業能力が公的証明されるものである。
 日本では「新卒採用」という言葉が示すとおり、学校を卒業と同時に就職した会社でキャリアを形成していくのが一般的だ。「新卒採用」されずに非正社員でいると、能力、知識を向上させる機会に恵まれず、キャリアアップできない悪循環に入るケースもある。
 そこで出てきたのが「ジョブ・カード制度」。
  公的に認められた「ジョブ・プログラム」を受けることで、終了証にあたる職業能力証明書が取得できる。ジョブ・カードに終了証のほか、職務経歴、取得資格 などを記載し、求職活動に活用する仕組みになっている。対象はフリーター、子育て終了後の母親、母子家庭の主婦など、なかでもアルバイトやパートなどでの 勤務歴が長く、企業の職業訓練を受ける機会に恵まれなかった人達に向けた制度だといえる。
 そもそもは、政府の成長力底上げ戦略の一つで、「能力発揮社会の実現」がスローガンとして掲げられている。計画では、ジョブ・カード交付目標数を3年間で50万人、5年間で100万人程度としている。
  ジョブ・プログラムは官民一体となって進めていくところに特徴がある。企業側が受け入れ体制を整えなければ、ジョブ・プログラム制度は充分に機能しない。 2008年3月、先行プロジェクトとしてキヤノンがジョブ・プログラムを開始。現在、17名が技能、技術、事務職とそれぞれの職種に分かれ、職業訓練プロ グラムを受けている。期間中は毎月15万5000円もの賃金が支払われる。
 特筆すべきは、プログラム内容の充実だ。プログラム利用者は 配属された職場で仕事をこなすだけではない。座学によるコンピータの学習なども取り入れ、さらには正社員同様、メンターもついているという。ジョブ・カー ドが単なる紙ではなく、真の能力証明となるよう取り組んでいる姿勢が窺える。
 「少子高齢化が進む中、どのようにして労働力を確保していくかということは当社だけではなく、産業界全体の問題だと思っています。ジョブ・プログラムのような取り組みをしていくことで、労働力の底上げに貢献できれば、ということで始めました」(キヤノン広報)
 キヤノン以外では松下電器とそのグループ企業が4月から開始している。厚生労働省によると、「現在、実施しているのは2社のみです。が、企業からの問い合わせはあります」ということだ。
 まだ端緒についたばかりのジョブ・カード制度。賛同する企業数やジョブ・カードの認知度など、さまざまな要素によって成否が分かれる。3年間で50万人という目標は達成なるか。今後を見守っていきたい。
(江口 陽子)
■関連記事
・【マンガ版】餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?
・リストラ・破綻以外で人材を流動化させる労働法制改革の意義【辻広雅文 プリズム+one】
・労働市場の活性化には「新たな労働ルール」が必要だ【辻広雅文 プリズム+one】
・マクドナルド訴訟だけじゃない。「名ばかり管理職」蔓延の実体【弁護士・永沢徹 M&A時代の読解力】
・正社員のクビを切りやすくする改革は受け入れられるか【辻広雅文 プリズム+one】
・製造業が直面する「2009年問題」の深刻度
・日系企業に影響必至!中国の新労働法制で争議増加か?
・ベトナム“違法”スト多発でお手上げの日系企業

」

月曜日, 4月 07, 2008

景気のウソ・ホント

「
改革の停滞と政治の失敗が日本経済の勢いを止める
ダイヤモンド・オンライン 2008年4月7日
上田 90年代は「失われた10年」などと言われ、長らく低迷しました。そして2000年を越え、3年くらい前 から景気は完全に回復したと言われていますけど、何か実感がない。しかも、このところ急激に円高・株安が進んでいます。そもそも「景気」とは何なのでしょ うか。言葉の意味から探ってみましょうか。
竹中 ある方の説では、「景気」とは、鴨長明の「方丈記」に出てくる言葉であると。景色の「景」に空気の 「気」、つまり「空気の景色」なのだということです。まさに「気分」ですよね。「景気は気から」という人もいますが、「景気」の中には単に「経済」だけで はなく、気分的なものも含まれているんです。
◇ バブル全盛期でも庶民の景気実感は悪かった
上田
 景気の見方にはいろんな基準がありますけど、どこに焦点を絞って見ればよいのでしょうか。
竹中
 エコノミストによって、注目するところが少しずつ違うんです。ただ一番基本になるのは、「国内総生産 (GDP)」と「鉱工業生産指数」の2つだと思います。なぜかというと、GDPは個人の所得と企業の利潤の合計ですから、これは日本人が汗を流して生み出 した所得の合計。そして、結果的にGDPにかなり影響を与えているのが「鉱工業生産指数」です。GDPは3ヵ月に1回しか発表されませんが、鉱工業生産指 数は毎月出ます。両方を見ていくと、ある種わかりやすい基準になります。
 また、景気の動向をわかりやすく得ようとする場合、「月例経済報告」「日銀短観」の2つを見るのが、もう一つの方法だと思います。「月例経済報 告」は毎月、総理官邸で総理大臣を中心に、主要閣僚、与党の幹部らが集まった席で、経済の現状について、経済財政政策担当大臣が報告する会議なんです。こ こで現在の景気の総合判断を示す。結果が今どうなのかを知りたければ、「月例経済報告」を見るのがいいですね。
上田
 竹中さんも以前、担当大臣としてやってましたね。かなり困難な作業だったりするんですか。
竹中
 景気が悪いと、担当大臣は皆から怒られるわけです。なぜ悪いのかと。とくに構造改革をしたくない人たちからね。もう一つ、「日銀短観」という指標も重要です。日本銀行が企業に今の景気について聞くアンケート調査です。企業がどう感じているかが端的にわかる。
上田
 政府が「景気が悪い」と言ってしまうと、世論に責められ、皆がどんよりした気分になるので、洋服屋の店員さんが似合いもしないのに「似合ってますよ」と言うように、政府に嘘をつかれているような気がするんですよ。
竹中
 結論から言うと、日本の政府は、そんなに人の裏をかくほど深くは考えていません。皆さん、実感として景気 は悪いと言いますが、面白い一つの例があります。80年代のバブル時代に、景気の実感を聞いたアンケート調査があるんですが、「景気実感はかなり悪い」と いう結果が出ているんですよ。当時から「大企業は儲かっているけれども、我々の生活はそんなによくない」という実感を国民が持っていた。「実感」には、そ ういう難しさはあります。
◇ 官製不況と改革の後退で日本への期待が低下
竹中
 ただ、政府の経済判断と実感とのズレには、もう一つ大きな理由があります。政府は公の統計で判断します。 たとえば百貨店やスーパーマーケットの売上などです。統計がある業態というのは、すでに出来上がっている分野なんです。でも百貨店は新しい業態ではなく、 今はコンビニだってあれば、さらにその先を行くカテゴリーキラーのような小売業態がいっぱい出来ている。しかし、そういう分野には「業界」が存在しないか ら、統計が無いんです。結局、昔からある古い業態での統計で判断するしかないので、実感とずれる大きな要因となる。
 そこで、10年近く前から「景気ウォッチャー調査」というものが始まったんです。これは、タクシーの運転士さん、スナックのママさんなど、商売の 第一線にいて敏感に景気を感じている方々に聞いているわけです。実は私が経済財政政策担当大臣時代に、景気判断で一番大事にしていたのが、この「景気 ウォッチャー調査」でした。この調査の数字によると、景気は一時期よりは厳しくなっています。
上田
 竹中さんはどう見ますか?
竹中
 日本経済には明らかに数年前のような勢いは無くなってきている。この点はかなり深刻に受け止めておく必要があります。とくに今年前半の景気は非常に厳しいと思います。私の見方をまとめて申し上げますと、今、3つの要因が働いていると思います。
 1つは、政府の失敗です。「官製不況」という言葉もあるくらいで、典型的な例では、今、住宅投資がすごく落ち込んでいる。構造計算の偽装防止のた めに、建築基準法が改正されました。それはわからなくはないのですが、構造計算のチェックをする新しいシステムを作っても、実際のチェックをする人が足り なかったんです。それで建築確認が下りにくくなり、住宅着工戸数が大幅に落ち込んでいる。政府が実施前にちゃんと準備していれば、こんなことにはならな かった。まさに政府の失敗による、経済へのダメージだと思います。
 2つ目は、昨今よく言われますが、小泉政権時代に比べ、改革の勢いが低下していることです。改革が進めば、この国の経済は良くなるぞと皆が期待す る。逆に改革が進まないと、日本は大丈夫かと不安になる。日銀総裁人事の混乱しかり、将来に対する懸念が増え、期待が下がることで、 投資を控えよう、消費 を我慢しようという気持ちになってくる。
 3つ目は、アメリカのサブプライム問題に原油高といった海外からの要因で、日本の景気を押し下げる力が働き始めている。今は本当に分水嶺で、日本 はどちらにも行く可能性がある。私はどちらかというと、やや悲観的に、慎重に見ている立場ですが、実はアメリカでも意見が分かれています。
◇ 米国経済を占う3つの見方
竹中  先日、前の米財務長官であったルービン氏とお話した際に、アメリカ経済について非常にわかりやすい3分類をしていただきました(右図)。1つ目が(A) で、非常に大きく落ち込んで、低迷は長期化する。前の米財務長官であるローレンス・サマーズ ハーバード大教授などは、こういう非常に悲観的な見方をして います。(B)は、サブプライムの影響でかなり落ち込むが、回復も早いだろうというV字型回復です。最後に(C)ですが、アメリカでは半年間マイナス成長 が続いたら不況と認定する明確な基準があります。(C)は、マイナス成長まではいかないだろうということで、つまり不況ではなく減速。ただし、減速は長期 化するかもしれないという考え方です。ルービン氏は、この(C)の考え方に近いと言っていました。
上田
 竹中さん個人としてはどうお考えですか。
竹中
 まだ(A)ではなく(C)に近いけれども、当面のショックは大きいかもしれないと思っています。最近、ア メリカ経済が悪くなっても中国、インドは大丈夫だというデカップリング論という考え方がありますが、私はそれは無理があると思います。中国が影響を受け、 結果的に日本も影響を受けていくでしょう。そこは覚悟しておかなければいけないと思いますね。
※この記事は、BS朝日・朝日ニュースターで放送の『竹中平蔵・上田晋也のニッポンの作り方』第1回(4/6他 オンエア)の一部を再構成したものです。

」

金曜日, 3月 21, 2008

求む、日銀総裁

「
フィナンシャル・タイムズ

(フィナンシャル・タイムズ 2008年3月19日初出 翻訳gooニュース)

国際的な金融危機というささやかな問題に対応する必要があるのだから、日本銀行の総裁探しは急務だと思われるかもしれない。しかし野党・民主党が『この人 は強大な財務省に近すぎる』とみなす候補に次々と反対するのは、正しいことだ。市場は脆弱だし、妥協可能な候補を早急に見つける必要があるが、しかし理想 の候補は「マクロエコノミスト」として優れた実績をもつアウトサイダーであるべきだ。

日本の福田康夫首相は、同じことをただ繰り返しても違う結果が出ると考えているようだ。野党が、東大法学部卒で財務省(旧大蔵省)キャリア出身の武藤敏郎 前副総裁に否決した後、福田総理はやはり東大法学部卒で財務省(旧大蔵省)キャリア出身の田波耕治国際協力銀行総裁を候補提示した。そして民主党はやは り、田波氏も否決したのだ。

武藤氏をどういう政治的理由から候補に提示したのかは、不可解だ。野党は参議院をコントロールしているのだから、わざわざ野党にケンカをふっかけにいくの はリスクが高い。どうしても対決するなら、国民の支持が広く得られている問題についてのみ挑戦するべきだ。にもかかわらず、わざわざケンカを仕掛けていっ て、負けて、そしてまた同じケンカをふっかけるというのは、荒唐無稽だ。ただでさえ弱い福田政権は、これでますます弱体化したように見える。

福田氏の選択はほかでもない、お役所的な伝統に従うという理屈に動かされていたようだ。一定の役職レベルで財務省を退官する官僚は、日本銀行などの組織で ポストを得るのがこれまでの常だったからだ。確かに、中央銀行向けの人材は財務省で見つけやすいだろうし、その逆もまた真理だろう。しかし、財務官僚を半 ば公式に日銀へ天下りさせるという仕組みは、金融政策の独立性を損なってしまう。

このため、もっと強力な日銀総裁が必要だと民主党が力説するのは正しいことだ。それに、民主党が適任だと名前を挙げる、黒田東彦・アジア開発銀行 (ADB)総裁や、(武藤・田波両氏よりはやや若い)渡辺博史前財務官にしても、「非・主流派」というほどではない。総裁空席の穴を急ぎ埋めなくてはなら ないという緊急性を思えば、どちらの候補もあり得るだろう。

しかしもっとラディカルな選択だって、あり得る。中央銀行を取り仕切るという仕事は、ほかにはない独特のものだ。パーフェクトな候補とは、素晴らしいマク ロエコノミストであって、市場心理を読み取れる心理学者で、公の場できちんと話せる手堅いパブリック・スピーカー。かつ国際的な外交官で、優れた最高経営 責任者(CEO)の資質も欲しい。外交官やCEOとしての能力をもつエコノミストを見つけるのは難しいが、一方で、スタッフの言いなりになるのではなくス タッフを問いただすことができるだけの深い経済の経験をもつ官僚を見つけるのも大変なことだ。オーソドックスなものの見方に挑戦できるだけの総裁が得られ れば、日銀にとって大きなメリットとなる。

総裁不在でも、あまり支障はないという意見もあるだろう。総裁がいなくても日銀は機能するし、近く金利を変える可能性も低いし、そもそも多くの重要な政策 決定は財務省が行っているのだから。しかし毎日のように新しい経済危機が出来する今、市場の信頼性はもろく、日本経済の展望も陰りつつある今、トップ不在 は間違ったメッセージを発してしまう。政府と民主党は急ぎ、総裁候補で合意すべきだ。その過程で、日本のなれ合い的な公職人事システムが一新されるのな ら、それはなお良し、だ。

」

結果庶民レベルでものを言うと、具体的に国民が困らんのなら、どーでもイイって話に、落ちていってしまう悲しさはあるなぁ....。

金曜日, 3月 14, 2008

コーヒー店戦争に火をつけたマック低価格路線の勝算

「
ダイヤモンド・オンライン

280円のスターバックス「本日のコーヒー」(左)と、100円のマクドナルド「プレミアムローストコーヒー」(右)。低価格で本格的なプレミアムローストコーヒーに対して、コーヒー専門ショップはこれからどのように対抗していくのだろうか。
 2008年2月15日、マクドナルドは100円で提供していたオリジナルのブレンドコーヒーをリニューアル。「プレミアムローストコーヒー」として全国展開を開始した。

  このプレミアムローストコーヒーが巷で大人気だ。価格はSサイズで100円、Mサイズで190円と低価格ながらも、コーヒー豆には高級品種のアラビカ種の みを使用。また、全店に新規開発したコーヒーマシンを導入。全国のマクドナルドで同じ味のコーヒーが愉しめるようになった。

 リニューア ルに際して、カップのデザインが変更されたが、それだけではなくカップのふたの部分も改良されている。飲み口を開閉式にし、下唇があたる部分に凹凸をつけ ている。これにより、飲んでいるときにコーヒーが飲み口から垂れてしまうことを防止しているのだ。ほんの些細なことだが、細かい心遣いにも「プレミアム」 な印象を受ける。

 日本に先駆けて発売したアメリカでは、コーヒー専門ショップのスターバックスが全米のほぼ全店を一時閉鎖し研修を開くといった事態に発展。このプレミアムローストコーヒーに対して、かなりの危機感を抱いているようだ。因みに、日本ではこのような事態にはなっていない。

 筆者の周りの人たちに評判を訊いてみたところ、「スターバックスのほうがコーヒーとしてはちゃんとしているが、100円であの味なら飲んでもいい」という意見が多い。

 ただし、コーヒー好きと自称する人たちのなかには、「プレミアムローストコーヒーは100円としてはがんばっているが、コーヒーとしてはスターバックスやタリーズコーヒーにはかなわない」という意見も少なからずある。

そこで筆者は、マクドナルド、スターバックス、タリーズコーヒー、ドトールのコーヒーを飲み比べてみた――。率直な感想は「プレミアムローストコーヒー恐るべし」だ。

◇ 価格差では圧倒的優位のマクドナルド

 まず価格だが、「本日のコーヒー」はスターバックスが280円、タリーズコーヒーが290円、ドトールは最近値上げがありブレンドコーヒーは 200円だ。プレミアムローストコーヒーは前述のとおり100円。個人的な意見でいえば、価格帯がやや拮抗しているドトールに比べると、プレミアムロース トコーヒーのほうが飲みやすい。

 スターバックスとタリーズコーヒーに関しては、価格が約3倍も違うだけあって、その差は歴然。コーヒーとしての深みがまったく違う。

 しかし、ヘビーなコーヒー好きでなければ、約3倍の価格の差に価値を見い出せるかどうかは甚だ疑問。朝の忙しいときや食後に「とりあえずコー ヒー」が飲みたいという、ライトなコーヒー好きにとっては、手軽に飲めるプレミアムローストコーヒーのほうに魅力を感じる人も多いだろう。

 マクドナルドの狙いは、まさにそこにあるように思える。朝およびランチタイムは、ビジネスマンにとって忙しい時間帯だ。ゆっくりコーヒーを飲んで いる余裕はない人も多い。100円であれば、支払いも簡単な上、量がやや少なめな点も、忙しい人にとっては好都合。まさに「ファストフード」のコーヒーな のだ。

◇ 経営戦略の中に組み込まれた低価格路線の選択

 もうひとつ、マクドナルドがスターバックスをはじめとしたコーヒーショップと異なる点がある。それは「スナックタイム」の導入だ。

 これは、午後2時から午後11時まで、100円メニューとドリンクSサイズの組み合わせを150円という価格で提供するというタイムサービス。ハ ンバーガーとコーヒー、アップルパイとコーヒーといった組み合わせが、たった150円で愉しめるのだから、子連れの主婦や打ち合わせのビジネスマンなどに 人気があるのも頷ける。

 このように、マクドナルドは戦略的に低価格路線を展開することで、プレミアムローストコーヒーの認知度をアップ。通常「プレミアム」と名付けられ た商品は、ほかの商品よりも「値段は高いが高品質」という差別化を行ってきた。しかしマクドナルドは「プレミアムなのに低価格」という逆転の発想を採用。 これが一般消費者のハートを掴んだと推測できる。

 本格的なコーヒーを提供するコーヒーショップ市場に、100円コーヒーというコンセプトで殴り込みをかけてきたマクドナルド。この勢力拡大は予想 以上に早い。これに対抗するためには、マクドナルド以上にインパクトのある商品投入が急務。「おいしい」だけでは、もはやコーヒーショップはマクドナルド に勝てない状況にあるといってもよい。

 原油価格の高騰などにより、さまざまな商品が値上げされている昨今、コーヒーショップも値上げ傾向にある。しかし、マクドナルドだけを見れば、企業努力により低価格を維持したまま品質を上げることも不可能ではないということになる。

 このプレミアムローストコーヒーの登場は、単純にコーヒーがおいしくなったということだけではなく、「値上げ」以外の何かでこの価格高騰の時代を 乗り切ろうという、マクドナルドの企業姿勢をも感じさせられる商品。突如巻き起こったコーヒー戦争に、スターバックスをはじめとしたコーヒーショップ連合軍は、どのような次の一手を打ってくるのか? ――興味津々だ。

(三浦 一紀)
」

やっぱりデフレ不況って終わってないんだよね。

基礎年金「全額税方式」の前に、厚生年金の見直しこそ不可欠だ

「
ダイヤモンド・オンライン

世界に類のない高齢化が進行する我が国において、年金制度への国民の不信感・不安感は計り知れない。年金制度の在り方の 論議の中で、このところ急速に浮上しているのが「全額税方式」だ。今回から2回にわたって、この「全額税方式」に潜む問題点について駒村康平・慶應義塾大 学経済学部教授に聞く。

 年金制度への不信感は深く、広く蔓延している。2004年年金改正も、国民の不安を取り除くことは全くできなかった。では、日本の年金制度はどうあるべきなのか? 

 このところ浮上してきたのが、基礎年金(注1)を全額税負担にしようという「全額税方式」である。日本経済新聞の年金制度改革研究会が「基礎 年金を社会保険方式から税方式に移行、財源すべてを消費税で賄うこととすべき」(注2)とこれを提唱し、麻生太郎・自由民主党前幹事長も「消費税を 10%にして基礎年金を全額税負担にしよう」(中央公論3月号、注3)と訴える。

 この全額税方式は本当に、不信感を取り払う切り札となりうるのか? 内外の社会保障政策に詳しく、『年金はどうなる』(岩波書店)の著書もある駒村康平・慶應義塾大学経済学部教授に聞いた。氏の答えは「明らかにノー」である。

――このところ、「基礎年金を全額税方式とすべし」との提言が相次いでいます。

駒村:税方式が国民に魅力的に映るのとすれば、たぶん2つポイントがある。1つは現在の年金システムが「空洞化 し、すでに破綻しているのではないか」という疑念が浸透している点。もう1つは「これからの高齢化社会の負担増には、消費税で対応するのが望ましい」とい う見方がある程度、浸透している点にあると思う。

 まず、年金の空洞化について。麻生氏は中央公論の論文で「年金不信で国民年金保険料の納付率は6割程度にとどまっている。国民皆年金という謳い文句は、もはや死語だ」としている。

 確かに国民年金(第1号被保険者)の納付率は67.1%(2007年度)にとどまり、免除されている人の分(17.7%)を差し引くと、5割を切る。

 しかし、1~3号まである基礎年金(国民年金)のうち、払っていないのは1号の話。2号や3号はほとんど皆が払っている。サラリーマンのグループ は、ちゃんと払っている。公的年金の全加入者7000万人を分母として考えれば、未納者というのは、どんなに多く見積もって計算しても10%前後となる。 厚生労働省の定義にそって厳密に言えば5%だ。

 要は全体としてみれば9対1なのである。9割は払っていて、1割が払っていない状態を「破綻」と言うべきなのか。1割の人を助けるために、9割を犠牲にすべきなのか。まず、この点に異議を唱えたい。

――全額税方式が支持される第2のポイントは、消費税でした。

 消費税を、高齢化社会に対応する財源として位置づけるのは当然のことだろう。他の税を増税するよりはいい。給与課税のように、企業行動や個人の働 き方に影響を及ぼすようなこともない。日本の消費税率は他先進国に比べ極端に低いし、消費税をいずれ上げるという流れは必要だろうと思う。

 ただし、である。消費税財源を充てる優先順位の第1が「年金」で本当にいいのか、と問いたい。

――高齢化社会への本格突入で介護、医療にももっとお金がかかるようになる。社会保障全体に目を向ける必要があります。

 消費税を社会保障目的税と位置づけて、介護、医療、低所得者向けの対策、少子化対策などに分けて投入し、今壊れかけている社会保障制度の支えとするのはいい。優先すべきはこちらであって、基礎年金ではない。

 考えてみてほしい。全額税方式で、高齢者全員に満額の月額6万6000円を支給するということは、弁護士や開業医であろうと大企業OBであろうと税金を投入する、ということになる。

 生活が苦しい高齢者はいいだろう。だが、裕福な高齢者をも含めて、一律でお金をばらまく必要はないのではないか。そのぶん、医療や介護をカットしていいのか。ここが最大の問題だ。お金は限られている。消費税でもって基礎年金だけを守る必要はない。

後編では、既に基礎年金の「全額税方式」を導入している国での各国の年金制度と実際の制度運用の状況も、日本の年金制度 を検討するうえで重要なポイントとは何かにスポットをあてる。年金制度の議論を重ねる上で、基礎年金の制度改革の前に、まずは今後の厚生年金制度のあり方 こそ議論されることが望ましいと駒村康平・慶應義塾大学経済学部教授は語る。

――どうやって、全額税方式の新年金に移行していくかという問題もあります。

駒村:日経の研究会報告は「移行前に保険料を払っていた人には、支払期間に相当する受給権を旧制度に基づき確保」とし、麻生氏も「これまで支払った人の分はそれを記録し、それに応じた金額をプラスアルファ分として支給することで(公平性を)クリアすべき」としている。

 では、その上乗せぶんのお金をどこから持ってくるのか。そのお金がどこを叩いてもないから困っているのである。

 そもそも、基礎年金を社会保険方式から税方式に移行する際、消費税で賄うべき必要額は約19兆円とされているが、それは正しくない。よく勘違いさ れるけれども、19兆円というのは、今の基礎年金の平均値に受給者数をかけて出てきた金額。あくまで今の制度を維持するために必要な金額ということだ。

 満額支給の6万6000円を、65歳以上の人に無条件で払うとすると、実は23兆円くらいかかる。未納があって満額貰っていない人の分など、4兆 円もギャップがある。スタートラインのところで問題がある。これに現在の保険方式によってまかなわれていた障害基礎年金、遺族基礎年金のための財源も必要 である。アップする消費税は7%となる。

――上乗せして払うとなれば、さらにお金が必要になります。

駒村:40年間払った人に上乗せして払うとなれば、さらに十何兆円と必要になる。「サラリーマンの年金である厚生年金に150兆円の積立金がある。それを使えばいい」という考え方もあるが、この積立金は、高齢化がピークを迎える2040~50年に備えて取ってあるものだ。

 もし、基礎年金を救済するために厚生年金の積立金を使おうものなら、それこそ厚生年金が破綻してしまう。それはいくら何でも、許されないだろう。はなから厚生年金をぶち壊し、民営化したいのかと勘ぐりたくなる。

 現実的に考えると――税方式になったとしても、今まで払わなかった人は貰えない。払った人は税財源の年金がもらえる。となると、現在の基礎年金が 入れ替わるだけだから、とりあえず19兆円ですむ。ただし、今問題の無年金高齢者は救済出来ないことになる。それどころか、消費税負担増でさらに酷い目に 遭う――ということになる。基礎年金の全額税方式というのは、要はありえない話なのである。

――そもそも、全額税方式を採用している国はほとんどないですね。

駒村:高齢期と若年期の最低所得保証をやろう、という方向にヨーロッパのほとんどの国がなっている。これなら大いに賛成だ。

 世界の年金制度を見渡しても、1階部分で税方式の基礎年金を個人単位で支給し、さらに2階部分に厚生年金を乗せている国など、もうどこにもない。

 スウェーデンなどは、かつてこういった制度だったが、1999年に最低保証年金(編集部注4参照)に切り換えた。「みなさん年金保険に入ってくだ さい。しかし、それで足りない人は税で助けますよ」という制度にした。税財源を全員にばらまくのではなく、必要なところにピンポイントで投入するようにし ないと、制度を維持できないからだ。

 現在、世界の主な国の中で全額税方式の基礎年金を出しているところと言えば、ニュージーランド、オーストラリア、カナダなどがある。しかし、 ニュージーランドやオーストラリアには2階建て部分の年金はない。加えて、高所得の高齢者は税方式の年金を返しなさい、ということになっている。カナダに は報酬比例年金はあるけれども、日本に比べて遥かに小さい。しかも、高所得、高年金の人は年金を返しなさいとなっている。

 高齢化社会の中で無茶なばらまきをやっている国は、世界のどこにもない。それを敢えてやるというならば、他の社会保障をカットすると宣言するに等しい

――年金制度改革が必要なのはもちろんです。現実可能な議論を進めていくためには、何を土台とすべきでしょうか。

駒村:年金制度について議論されるのは、もちろん、結構なことだ。だが、基礎年金の全額税方式はシンプルで、わかりやすい代わりに、夢物語となってしまっている。

 まずは、基礎年金ではなく、ほとんどの人をカバーしている厚生年金について、考えるべきだと思う。厚生年金を残すか、いかにして維持するかを議論し、その後に穴が開いてしまっている基礎年金をどうするかを考える。そういう手順を踏んでいけば、実りのある議論になる。

(1)他の先進国と同じように、年金制度を最低保証年金に切り換えるべきではないか、(2)高齢化社会において税財源を投入する優先順位をどうするか、の2つがポイントになると思う。

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣)

●編集部注

注1)
日本の公的年金制度は、2階建てで構成されている。その1階部分が基礎年金(国民年金)だ。自営業者(第1号被保 険者)、民間サラリーマン(第2号被保険者)、サラリーマンの配偶者(第3号被保険者)に共通する年金で、平均年金月額は5万8000円(満額支給の場合 は6万6000円、2006年度末)である。2階部分は厚生年金や公務員の共済年金。現役時代の報酬によって受取額が変わる報酬比例年金で、平均年金月額 は16万9000円である。

注2)
日本経済新聞社の年金制度改革研究会は1月、年金制度改革に関する報告をまとめた。少子高齢化の加速、保険料未納問題の深刻化によって制度維持が困難になりつつある状態を立て直すため、税方式への移行を求めた。その骨子は下記のとおりである。

・基礎年金の財源を保険料から全額消費税に置き換え
・税率の上げ幅は5%前後。置き換えで全体の負担に増減は生じない
・月額給付は満額で6万6000円
・国内居住10年程度を支給要件に
・移行期間は旧制度に基づく保険料負担を給付に反映
・年金課税を強め高所得者への給付抑制
・3.7兆円の企業負担軽減分は非正規労働者の厚生年金への加入拡大に

注3)
麻生太郎衆議院議員・自由民主党前幹事長は月刊中央公論3月号に「消費税を10%にして基礎年金を全額税負担にしよう~これが安心を 取り戻す麻生プランだ!」を寄稿。「国民に安心を与えるのが政治の責任。抜本改革しか、国民の信頼を取り戻す術はない」とし、(1)杜撰な加入記 録、(2)破綻している年金財政という2つの問題を解消するために、基礎年金の運営を全額税方式に改め、税負担の財源には消費税を増税して充当すべきだと 提案する。その骨子は下記のとおり。
・消費税を段階的に10%とし、約13兆円の財源ができる
・国民年金の保険料負担(月1万4000円程度)はなくなる
・サラリーマンは基礎年金保険料を支払わなくて済むようになる
・将来の無年金の解消も可能になる
・これまで保険料を支払ってきた人の分は記録し、それに応じた金額を プラスアルファ分として支給、公平性を担保する

注4)
スウェーデンは1999年に年金制度の大改革をおこない、1階部分・税財源による定額給付、2階部分・所得比例年 金となっていた公的年金を、所得比例年金のみの1階建てとし、一定年金以下の人には最低保証年金を用意した。負担と給付の関係を明確とするため、「個人勘 定」(支払った保険料の総額を個人単位の口座で管理する)とし、支払った金額に経済成長率にリンクした「見なし利回り」をつけ、個人の年金資産として蓄積 されていくこととした。年金全体の資産と負債のバランスが崩れると、見なし利回りが自動的に下げられ、債務の成長が鈍化する自動調整機能の仕組みも導入さ れた。

」

ちゃんと読んどかんと....。

木曜日, 3月 13, 2008

他人事で無責任な福田首相が“日本売り”を加速させる 【週刊・上杉隆】

「
ダイヤモンド・オンライン

 3月6日朝、いつものように首相官邸からメールマガジンが配信された。

 小泉時代に始まったこの試みは、メディア戦術上、ある程度の成功を収めている。2代の首相を経て、読者数は減少しているものの、直接国民にかけるという当初の目的は十分に達成している。

 しかし、時にその機能が逆効果になることもある。3月6日配信のメルマガこそ、まさしくその類であろう。

〈果実を分かち合う。福田康夫です〉

 こうした出だしで始まる当該回のメルマガは、次のように続く。

〈3 月を迎え春の訪れが感じられるようになりましたが、このところ食料品などの値上げのニュースが目立ちます。みそやしょうゆ、乳製品など、いずれも毎日の食 卓に欠かせないものばかりです。昨年来、パンや食用油から、ティッシュペーパーといったものまで、実にさまざまな食料品や日用品の値段があがっています。 スナック菓子の中には、袋の内容量が減ったものもあります(中略)。

 物価が上がっても、皆さんの給与がそれ以上に増えれば、問題はありません。しかしながら、働いている皆さんの給与の平均は、ここ9年間連続で横ばい、もしくは減少を続けており、家計の負担は重くなるばかりです〉

 ここまでは異論はない。国民生活の現実に即した記述である。この内容に関する限り、国家のリーダーとしての福田首相の認識に、安心感さえ覚える。

 しかし、これ以降が拙かった。首相として、驚くべき「方針」が綴られている。最初に読んだ時は自らの目を疑い、悪い冗談かとさえ思ったほどだ。

〈日 本経済全体を見ると、ここ数年、好調な輸出などに助けられて、成長を続けています。企業部門では、不良債権などバブルの後遺症もようやく解消し、実際は、 大企業を中心として、バブル期をも上回る、これまでで最高の利益を上げるまでになっています。これらは、さまざまな構造改革の成果であり、そうした改革の 痛みに耐えてがんばった国民皆さんの努力の賜物にほかなりません。

 私は、今こそ、こうした改革の果実が、給与として、国民に、家計に還元されるべきときがやってきていると思います。

 今まさに、「春闘」の季節。給与のあり方などについて労使の話し合いが行われています。

 企業にとっても、給与を増やすことによって消費が増えれば、経済全体が拡大し、より大きな利益を上げることにもつながります。企業と家計は車の両輪。こうした給与引き上げの必要性は、経済界も同じように考えておられるはずです。政府も、経済界のトップに要請しています〉

 日本は一体いつから、社会主義国家になったのだろう。どういった権限で、政府が民間企業の経営に「命令」を出せるのか。福田首相は何か大きな勘違いをしているのではないだろうか。

 確かに、景気が低迷し、消費が伸びない理由には、原油高などによる物価の高騰がある。福田首相が指摘する給与所得の伸び悩みがあるのもその通りだ。

 だが、その民間の対策について、内閣総理大臣が口を挟むのはどうか。あまりに僭越ではないか。

 そもそも、消費の購買欲を喚起したいのならば、政府が減税政策を打ち出し、事実上の「給与引き上げ」を行えばいいだけの話である。「果実を分かち 合う」のならば、政府が率先して、富を分配すればいい。国がやるべきことを棚上げしておいて、民間にそのしわ寄せを押し付ける「方針」など、政府の責任放 棄以外の何ものでもない。

◇ いつも他人事で無責任な福田首相

 思い返せば、福田首相はいつも他人事で、無責任だ。

 たとえば、「ギョーザ事件」発生直後のぶら下がり会見では次のように発言している。

「関係省庁が原因をよく調べた上で対応すると思いますよ。(略)まぁ、輸入食品といえども、十分注意するようにと言うしかないでしょ」

  また、イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故発生直後、記者から問われた感想を問われた福田首相はこう反応している。

「おー、そうだってね。大変だ」

 それにしても、なんという他人事だろう。国民の生命、健康を預かる内閣総理大臣のコメントとしてはあまりにひど過ぎる。ある意味、今回の「春闘賃上げ発言」も、首相にしてみれば、ごく自然な感覚なのかもしれない。

 だが、こうした無責任な発言こそが、結果として、日本経済を縮小させていることに、福田首相はそろそろ気づくべきではないだろうか。

◇ 福田首相こそ景気低迷の元凶だ

 世界同時株安の際も、日本政府の方針を問われた福田首相は「様子を見て判断します」と語り、世界を唖然とさせた。そうした無責任な発言により、海外投資家が逃げ、日本売りは加速し、株式市場の低迷を余儀なくされているのだ。まさしく『エコノミスト』の特集(JAPAIN: The world's second-biggest economy is still in a funk? and politics is the problem)の通り、それは畢竟、政治の責任なのである。

 ストラテジストの中には、4月にも株価が1万円割れを起こす、と警告している者もいる。

「果実を分かち合う」といいながら、自ら分配を拒否しているのは政府自身だ。そして、恥ずかしげもなく、そのメルマガで、無責任な「方針」を打ち出す福田首相こそ、景気低迷の元凶なのだ。

」

金曜日, 2月 29, 2008

上場の意味が問われる「空港外資規制」見送りは賢明な判断【弁護士・永沢徹 M&A時代の読解力】

「――国土交通省の思惑か?すり替わってしまった論点。

ダイヤモンド・オンライン

 2007年、オーストラリアの投資銀行であるマッコーリー・グループが、羽田空港ターミナルビルを所有する「日本空港ビルディング」(東証1部上 場)の株式約20%を取得したことが発覚。それを受け、国土交通省は外資出資規制を定めた改正法案を提出したが、内閣でも議論は紛糾。福田首相の指示で閣 議決定が先送りされ、法案は事実上見送られることとなった。

 そもそも空港外資規制とは、成田国際空港会社や羽田空港のターミナルビル運営会社など、空港関連会社に対する外資の出資比率を法律で規制しようと いうものであり、「空港整備法」の改正がそれにあたる。空港を管轄する国土交通省は、「安全保障上問題がある」として、外資の出資比率を「議決権ベースで 3分の1未満」に抑えることを目指し、改正案を提出した。しかし、その是非をめぐり、対日投資の冷え込みを懸念する金融庁だけでなく、渡辺喜美金融担当相 をはじめとする現役閣僚からも反対の声が噴出した。先述した通り、閣議決定も先送りされ、問題は長期化する様相を見せている。今後、霞が関と永田町では水 面下で「空港外資規制」の議論が続くであろう。

◇  実は日本での実績があるマッコーリー・グループ

 マッコーリーとは何者か――。私から見れば比較的“筋のいい”株主である。日本ではあまり知られていないかもしれないが、空港や高速道路などのイ ンフラへの投資を得意にしている投資銀行であり、オーストラリアでは最大である。高速道路では世界的なネットワークを持っており、すでに日本でも実績があ る。東急電鉄の「箱根ターンパイク」、近鉄の「伊吹山ドライブウェイ」を買い取り、「箱根ターンパイク」においては、命名権を東洋タイヤに供与し、 『TOYO TIRESターンパイク』として運営。様々な手法で収益改善を図り、東急時代には赤字だった同社を黒字に変えている。

 また、これらの投資は日本政策投資銀行と共同のファンドで行なっており、そういう意味からも日本に馴染みのある投資銀行である。いわゆる“青い眼 ”で日本の事情がよくわかっていないというのではなく、日本の企業と非常にうまく手を携えてやってきたという外資企業なのである。さらに、彼らがインフラ に投資していくという意味では、日本の空港に関心を持つということも十分にありえることだろう。

◇  空港の「不動産屋」をめぐる駆け引き

 話を「空港外資規制」に戻そう。今回問題になっているのは、「空港」の民営化ではない。「空港ビル」という会社の話なのである。それが「日本の空 港を守れ!」といったように、混同されて議論されているフシがある。「空港」自体は、独立行政法人が保有しているのであって、「空港ビル」は空港の中にあ る売店や食堂、駐車場をはじめとした、いわゆる「不動産屋さん」なのである。その不動産屋を守ることになぜそこまでこだわるのか。冬柴国土交通大臣が「守 らなければならない!」と言って、特別な立法をしてまで守るべきものなのか、もっと議論されていいはずである。

 その不動産屋の大株主となったマッコーリーというのは、前述したように、すでにノウハウもある企業であり、グリーンメーラーのような投資家ではな い。ただ1つ言えるとすれば、“日本の村の中に突然侵入者がきた”という印象はあるのかもしれない。そもそも、空港ビルの代表取締役の一人は国土交通省の OBである。役員には日本の名だたる不動産会社や航空会社から人が来ており、資本も来ているのが現状だ。それが過半数を握っていれば何の問題もないのであ るが、マッコーリーによって“一石を投じられた”という意味合いが強いのだろう。

◇ 国土交通省が「論点」をすり替えた?

 日本の公共部門が非効率であるということは周知の事実であり、高速道路にしてみても、民営化をしたとはいえ、まだまだこれまでのしがらみから脱し ていないという印象が強い。ある面では、外資が高速道路を買収するというのは十分にありうることだし、民営化するということはそういうことも想定し、十分 に議論して民営化や上場をしなければならない。とはいっても今回の空港ビルの問題は、「高速道路や空港などの公共性の高いインフラは外資には買わせない」 ということとは全く別の話であり、「空港の売店をなぜ外資が買ってはいけないのか」という話である。このように議論が完全にすり替わってしまっている気が する。

 それはなぜかというと、マッコーリー自体がすでに(他国で)空港を持っている会社であるからかもしれない。「マッコーリーが成田や関空も買おうと しているのではないか?」という疑心暗鬼もあるだろう。しかし、もしかすると、採算性の悪い地方空港などを外資に売るという選択肢だってあるかもしれな い。現に、箱根山ターンパイクや伊吹山ドライブウェイのように、日本企業がやっていて採算が合わなかったものを再生させた例もあり、全くない話ではないは ずである。 では国土交通省が守りたいものは何なのか――。もしかしたら別にあるのかもしれない。

 マッコーリーは他にも、日本レップという倉庫事業をやっている日本企業に投資し、マッコーリー・グループの傘下に収めている。過半数の資本を持 ち、次々にその資金で全国の倉庫建設を手がけているのだ。このようにマッコーリーは、投資して高値で売り抜けるというハゲタカファンド的な会社ではなく、 比較的腰を据えて事業をやっている会社なのである。

 空港の物販や駐車場の運営といった不動産事業において、規制をしてまで守らなければならない業種かというと、そうではないと思う。空港ビルの従業 員は269名となっており、不動産企業としては決して大きな規模の会社ではない。空港ビル=空港という印象になってしまっているのか、意図的か意図的では ないかはわからないが、論点がずれてしまっているのが現状である。

 国土交通省が法改正の理由の1つとして、英国ヒースロー空港の民営化→上場廃止を挙げている。そもそも、ヒースロー空港は「空港自体」が民営化さ れたという話であり、上場廃止によって公共企業から私企業になったということが問題であると指摘されている。しかしこれは、「空港」の話であって、「空港 売店」の話ではない。なので、国土交通省が今回の問題の引き合いに出すべきケースではないのである。

 わかりやすく築地市場で喩えてみると、市場の中にある卸会社というのは、築地市場からスペースを借りて運営しているものである。築地市場というの は公共のものであるけれども、そこで業務をやっている卸会社は民間企業であり、例えば「築地魚市場」や「大都魚類」のように上場している会社もある。この ように、公共のものを使って事業をしている会社は全て守らなければならない会社かというと、そうではない。

◇ 問われる「株式上場」の意味「公共性」の定義も疑問

 そもそも、上場するときに一定の規制をかけて上場するならまだしも、上場するときには何の規制もかけずに上場しておきながら、外資が大株主になっ たからといって、急に「公的な色彩が強い」と持ち出し、法改正をしてまで規制をしようというのは、議論として成り立たない話である。本当におかしな話であ る。空港の売店をやっている不動産会社と空港そのものの民営化を混同するというのはいかがなものか。むしろ、役所や取引先企業の既得権益を守るためではな いかと思ってしまう。国土交通省が自らの「天下り先」としてぞれぞれの空港ビルを温存するための規制にもなりかねない。

 冒頭で述べたように、渡辺喜美氏をはじめとする3閣僚が、法改正に反対しているのは非常に合理的である。そもそも空港ビル自体が株式会社として営まれている以上は、その株式に対して一定の制限をかけるということは、非常に慎重でなければいけないと思う。

 まだ、電力会社やテレビ局のように地域独占で公的な事業を担っている会社について外資の参入を規制するというのであればわからなくもない。しか し、今回の空港ビルの問題は、そのようなことと一緒に論じられるレベルの話ではない。まるで「ルミネや私鉄系百貨店にも外資規制をかけろ」と言っているよ うなものである。外資が入ることによって競争原理が働き、サービスが向上し、収益改善した例も少なくない。箱根ターンパイクが外資に売られたことで迷惑したという話はあまり聞いたことがない。そういう点からみても、「空港の売店」をそこまで守ろうとするのかが非常に疑問である。

」

水曜日, 2月 27, 2008

「野党ボケ」した民主党の問題は小沢氏の資質にある 【山崎元のマルチスコープ】

「
ダイヤモンド・オンライン

 2月24日に発表された、読売新聞の世論調査の結果が興味深い。

 この調査は、国民の政治意識に関する大規模な連続調査で、今回で4回目となる。主たるテーマは、「政治を信頼するかしないか」だ。

  調査では、「政党や政治家を信頼しない」という回答が68%に上り、「時々政権交代があったほうが良い」と答えた人が63%に上っている。なかでも注目す べきは、自民党支持者でも、政権交代を是とする回答が40%に上ったことだ。政権交代を容認する理由のトップは「腐敗が起こりにくくなる」。自民支持層に もくすぶる現政権に対する強い不満や、クリーンな政治への希求が、調査結果には顕著に現れている。

 ちなみに、政治を「信頼せず」は、世代別に見ると30代がもっとも高く、80.1%に及ぶ。この数字は、20代よりもずっと高い。ロストジェネレーションと言われる不景気で割を食った世代が、政治への不信感を根強く持っているという証だろう。

  読売新聞で上記の調査と同日に(2月16日、17日に)行われた内閣支持率調査では、支持38.7%、不支持50.8%という結果が出た。読売の調査は対 面式で、調査主体が読売新聞社なので、単なるアンケート式よりも政府の支持率は高く出る傾向にある。10%とは言わないまでも、数パーセントは他紙の調査 よりも支持率が高く出やすいのである。その読売の調査で、これだけの不支持率とは、世論的には、福田内閣は相当に追い込まれた状況にある。

◇ 道路でも年金でも鈍り続ける民主党の攻勢

 国民は、明らかに与党に対して不満を持っている。この状況は、野党第一党の民主党にとっては、非常に大きな政治的チャンスのはずだ。

  では、この与党ピンチの中で、野党が十分活躍しているかというと、答えはノーだ。このところの民主党の与党への攻撃ぶりは、メディアを通して見る限りで は、今ひとつ以下である。当初、今国会はガソリン税に焦点を絞り、民主党は暫定税率を否決することでガソリンの価格引下げに追い込む戦術を掲げていた。だ が、伊吹文明自民党幹事長のワザに簡単に屈したというべきか、つなぎ法案で腰砕けにされてしまった。

 暫定税率問題がどう決着するかはまだ決定したわけではないが、目下のところは与党と手打ちをした格好に見えており、民主党が攻勢に立っているという印象がすっかり無くなっている。これは、明らかに政治的失敗だ。

 この挫折で、まさにガソリンが切れてしまったというべきか、民主党は他の問題でも攻勢が鈍り続けている。

 年金問題は、目下、民主党が争点にすれば、自民党に間違いなく勝てるテーマだ。安倍前政権での公約では、年度末の3月までには年金記録の照合をす べて終え、宙に浮いた年金問題に決着をつけるという話になっていた。しかしそれは達成されそうにない。政府が非常に不利な状況にある中で、民主党としては ここで年金問題に世間の注意を惹きつけなければならないはずだ。しかし年金問題もギョーザの毒で印象を消されてしまったのか、現在さして話題に上らず、民 主党側からの積極的な提案も出てこない。戦術が何とも拙い。

 イージス艦「あたご」の衝突事故も、本来であれば絶好の攻撃チャンスだ。そもそも、艦の中の当時の様子がまだ報告できる状態になっていないことが 大問題だし(要は上司が状況を把握できないのか、上司自身に直接的で大きな責任があるから発表できないのか)、艦長がまだ表に出て来ないのも異様だ。もち ろん、石破防衛相に対する責任追及は大いに行われるべきだ。

◇ 日銀総裁人事でも対案を出さずに様子見

 また、日銀総裁の任命問題は、ねじれ国会の中での民主党の側からの有力な攻撃材料であったはずだった。総裁任命は国会同意人事なので、衆参両院で の承認がないと前に進まないのだから、参議院での数が生きる。しかも、武藤敏郎副総裁の就任には大いに問題がある。本来であれば民主党が強く反対し、政府 に対して対案を掲げて対決すべきなのだが、むしろ民主党内の足並みが乱れて、民主党の弱体化を招く材料に転化した感がある。

 これはどうしたことか。小沢一郎代表は武藤氏の総裁就任について、良いとも悪いとも明言しないまま、「俺に一任せよ」という態度である。だが党内 では、仙谷由人元政調会長や岡田克也元代表などから、財政金融分離の原則により、武藤氏への不支持が表明されている。さらに今回は、鳩山由紀夫幹事長から も武藤氏への疑問符がついた。鳩山幹事長は先週ラジオ番組で「武藤氏の副総裁としての5年間のパフォーマンスは必ずしも評価が高くない」と語っている。こ れは今のところあまり強調されていないが、重要なポイントだ。

 日銀の状況は、会社の人事に喩えると、現社長時代の業績が良くなかったのに、現社長を支えた副社長を漫然と後任社長に昇格させようとしているよう な様子に見える。デフレ脱却の遅れや、サブプライム問題の軽視なども含めて、金融政策のパフォーマンスは良いとは言えない。また、コンプライアンス的な観 点からは、福井俊彦現総裁は村上ファンド問題(総裁在任中の明らかな運用行為)で本来辞任していなければならない不適格者であったが、武藤氏は、彼に辞任 を勧告するような骨っぽさを見せたわけではない。

 しかし、小沢民主党代表は、自分への一任で党がまとまるのか、様子見モードに入っているように思える。一任を取り付けて「求心力」を見せたいの か、この問題への対応で党内の敵味方を判別したいのか、意図は分からないが、建設的な議論が無いままに、時間だけが過ぎていく。このままでは、時間切れを 前に総裁空席を避けるために、という理屈を味方にして、小沢氏の下で与党の提案を呑むということになりかねない。それが小沢氏のシナリオだとすればいかに も姑息だし、既に彼の党内求心力は賞味期限切れになっているということだろう。

 そして、これは、民主党の他のメンバーにもいえることだが、武藤氏の総裁就任に本気で反対するなら、今の時点で対案を出していないのは無責任だ。 政府の提案を受けてから対応を決めるという態度には、何のやる気も感じられない。結局のところ人事では官僚組織の論理を受け入れざるを得ないという諦めの 空気が、野党である民主党の中まで覆ってしまっているのだろうか。

◇ 小沢一郎という政治家はもう耐用年数切れか

 民主党の一番の問題は、やはり小沢代表の党運営であり、はっきり言うと政治家としての彼の資質だ。コミュニケーション能力が低すぎるのだ。年金に してもガソリン問題にしても、小沢氏が正面に出て話をするわけでもなければ、党内をまとめて、党として一貫したコミュニケーションが出来ている訳ではな い。不機嫌そうに後ろにいて、様子見ばかりをしている印象を受ける。

「隣の芝生は青く見える」ということもあろうが、アメリカの大統領予備選で、バラク・オバマ氏やヒラリー・クリントン氏が、コミュニケーション能 力を最大限に発揮して、お互いのビジョンを語り、相手を批判し、国民の前に身をさらしている姿と比較すると、その差はあまりに明らかだ。小沢一郎氏が、次 の総選挙で政権奪取を目指す野党のトップなのだという事実を思うと、気が遠くなるなような情けなさにおそわれる。

 厳しい言い方をすると、小沢一郎という政治家はもう耐用年数切れなのではないか。少なくとも、彼は、現代の政治家に要求される仕様を満たしていな い。昨年の辞任表明劇も合わせて考えると、コミュニケーション能力が乏しく、小心で、気に入らないと直ぐにキレる、という人物なのだから、とても国のリー ダーを担う資質はない。

 先の世論調査でも明らかなように、国民は政治の腐敗を起こさないためには政権交代も是とする気持ちなのに、それに野党が応えていない。2年前の偽メール事件の時もそうだったが、民主党は攻勢が取れてきた肝心な時に失速する癖のある困った野党だ。

 もっとも、仮に民主党が政権をとったとしても、健康状態なども考えると、小沢氏を首相にするには限界がある。政治家は引き際が肝心だ。小沢氏は、次の世代に代表職を早く引き継いで、自分は後任者をサポートする形で、野党らしく振る舞う民主党を国民に見せるべきだろう。

」

金曜日, 2月 15, 2008

空港外資規制は「外為法改正」で対応するのが国際ルール 【町田徹の“眼”】

「
ダイヤモンド・オンライン

 成田や羽田といった空港に対する外資規制の導入問題が、渡辺喜美内閣府特命担当大臣ら3人の閣僚の反対に遭い、「閣内不一致」騒ぎに発展した。

  筆者は3閣僚に肩入れする気など毛頭ないが、国家安全保障の観点から言うと、この外資規制には非常に大きな落とし穴が隠されている。あえて強行すれば、国 際社会で物笑いのタネになるどころか、バッシングの対象になりかねない代物なのだ。もし、冬柴国土交通大臣の主張が事実であり、本当に外資規制が安全保障 のために必要だとすれば、長年、財務省が抜本改正要求を黙殺してきた外為法の強化という手法こそ、国際社会に通用する標準方式であることが見落とされてい る。

「関係各省で事務的調整が終わったものについて、閣僚が違うことを言うのは、組織としてどうか。(伊吹文明自民党幹事長からも苦言があったので)私から注意した」――。
  町村信孝官房長官は8日、こう述べて、成田、羽田といった空港運営会社への外資規制を盛り込んだ空港整備法改正案に反対を表明し「閣内不一致」問題を起こ していた渡辺喜美金融担当相、岸田文雄規制改革担当相、大田弘子経済財政担当相の3大臣に緘口令を布いたことを明らかにした。この日に予定していた空港整 備法改正案の閣議決定を見送らざるを得なかったことが緘口令の背景だった。

 問題の外資規制は、国土交通省が「安全保障・危機管理という 点から見て最低限必要なもの」(冬柴鉄三国土交通相)と導入を目指していたものだ。しかし、渡辺担当相ら3人は「資本規制という、鎖国的・閉鎖的な手段を とるのは間違いだ。外国からの投資を促進しようと、首相を先頭にダボス会議にまで行ってきた。ダボス会議から帰ってきたらいきなり外資規制とは、日本がど ちらの方向を向いているのか疑われる」「空港会社に緊急時に国への協力を義務づけるといった手段があり得る」(いずれも渡辺大臣)などと反対、議論が暗礁 に乗り上げていた。

 つまり、閣内では「安全保障」か「投資促進」かの2者択一議論が発生し、自民・公明の両与党も巻き込み、当の与党幹部が「閣内不一致の印象を与えるのはよくない」と嘆く事態を招いていた。

 だが、こうした2者択一論は、資本取引を巡る現在の国際的な常識に反するものだ。というのは、この2つは相反するものではなくて、両立するものであり、そのための国内ルールの整備手法にも国際標準と呼ぶべき方式がすでに確立されているからである。

 その方式は、原則的に、どのような分野であれ、安全保障上のリスクがある外国からの投資については、あらかじめ横串的に網羅する法律を設けて規制することを明確にしておくというものだ。

◇ 米エクソン・フロリオ条項に相当するのは外為法だが

 その代表例を挙げるとすれば、一番に挙げるべきが、米国の「1988年包括通商法」の「エクソン・フロリオ条項」だろう。同項は、必要に応じて、 米財務省、国防総省、連邦捜査局(FBI)など7つ程度の省庁を集めた特別組織を召集し、この組織に広範な判断を委ねることによって、外国企業による米国 企業に対するM&A(企業の合併・買収)を機動的に差し止める仕組みとなっている。

 過去に日本企業の米ハイテク企業買収が難航したり断念したりを得なかったケースがいくつもある。さらに、最近でも、2005年夏に同条項が抑止力になって中国海洋石油(CNOOC)が米石油大手のユノカル買収を断念した例などは有名だ。

 米国では、このエクソン・フロリオ条項が存在し、安全保障の観点からの外資規制が行われているものの、外資導入の妨げになっているといった批判はほとんどない。

 さらに、「先進国クラブ」と呼ばれるOECD(経済協力開発機構)加盟国の間では、そうした横串のルールに関する基本的な考え方が確立されてい る。そして、「この考え方を具現化した日本版のルールとして存在するのが外為法(外国為替及び外国貿易法)」(経済産業省幹部)なのだ。

 外為法は、様々な国際的な資本取引を監視・規制する法律だ。この中で、一般の外資による日本企業への投資については、発行済み株式の10%以上を 取得しようとする場合、1ヵ月以上の余裕を持って財務省や所管官庁に届け出ることを義務付けている。財務省や所管官庁は、このM&Aの審査に最大数ヵ月程 度を費やすことができるだけでなく、安全保障の観点から必要と判断すれば、M&A計画の修正やとりやめを命ずることもできることになっている。

 ちなみに、経済産業省と財務省が現在、英国の民間投資ファンドザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド(TCI)による電力卸大手Jパワー(電源開発)の株買い増しの届け出を受けて審査しているのも、この外為法の規定が根拠である。

 TCIは、現在、Jパワー株の9.9%を保有しており、20%まで買い増したい意向という。Jパワーは、2004年に完全民営化されたものの、今 なお「旧国策会社」だ。電力大手10社に電力を供給する卸の最大手であるだけでなく、送電線網や周波数変換所など多数の基幹電力設備を保有している。さら に、青森県には、プルトニウムを使う大間原発の建設を計画中。こうしたことから、経産省は「国の安全保障の網の中にある。原子力計画や電力安定供給の観点 からも重要なケース」と関心を払っているという。

◇ 空港外資規制の本当の理由は安保よりも天下り先確保?

 こうした外為法による規制と違い、今回、国土交通省が目指した空港整備法のような特定の産業を律する「業法」で外資規制を行うという手法は、国際 社会では極めて特殊なケースとして限定されている。例外の代表選手的な存在が、WTO(世界貿易機関)の基本電気通信交渉で、自由化が進められて来た通 信・放送分野だろう。この分野では、やはり「安全保障上、必要なケース」に限定されているものの、業法による外資規制が存続を認められている。この結果、 NTT法でNTT、放送法でNHK、TBSといった放送局がそれぞれ外資規制の対象となっているのだ。

 残された問題として注目されるのが、JAL、ANAといったエアラインの外資規制を認められている航空業法だろう。一見すると、今回、焦点の空港運営会社と業態が近いからである。

 ただ、エアラインの法律では、空港運営会社まで拡大解釈できないことから、今回の空港整備法改正案が持ち出された経緯があるという。それならば、 本来、空港運営会社を特例であるべき「業法」で外資規制の対象とすることは国際的な標準方式に馴染まない。あえて、外資規制を行うならば、外為法の対象に 加えるのが筋なのだ。現在、政府内部には、より広範な有事法制を整備し、その中で対応すべきだとの議論もあると聞くが、機動的にそのような法制ができると は考えにくい。やるならば、外為法が筋だろう。

 とはいえ、今回、問題になっている空港運営会社が保有しているのは、売店、飲食店が入っている空港ビルや駐車場だけらしい。滑走路や管制といった 重要な資産・機能は国の所管で、空港運営会社は関係ないという。本当に、安全保障上の観点があるのかどうか、「単なる天下り先確保のために外資を阻んでい る」(内閣府幹部)との見方も根強いだけに、この検証は欠かせない。

 仮に検証の結果、空港運営会社を外為法の規制対象に加える必要がないという結果が出たとしても、外為法の見直しが不必要ということにはならないという問題も重要だ。

◇ 現行の外為法では被買収企業を取り戻せない

 というのは、外為法は“ザル法”状態であり、改正が必要だとの議論が長年、放置されてきたからである。

 実際、外為法は、トヨタ自動車系の照明機器会社の小糸製作所がテキサスの石油資本の買収に直面した際に効力をなさなかったばかりか、その効力への疑問から特殊会社法であるNTT法を廃止しようとする際の妨げになってきたからだ。

 昨年夏にも、粗鋼生産量で世界最大のミッタル・スチール(オランダ)が同2位のアルセロール(ルクセンブルグ)との経営統合を実現。新会社が、一 段の拡大を狙っており、同じく3位の新日鉄(日本)、4位のポスコ(韓国)、5位のJFEスチール(日本)などの吸収を検討していると伝えられたことか ら、経済産業省が「鉄鋼業は、軍事転用が容易な技術が多いだけでなく、関連企業でイージス艦など兵器そのものを製造しているところもある。現行法の尻抜け 状態を早急に解消する必要がある」(中堅幹部)と主張。ようやく、保護が必要な産業の具体名を列挙する形をとっている現行法令に、一部の素材産業を書き加 えることに漕ぎ着けたが、まだ不十分な部分が多いとの見方は根強い。

 特に、気掛かりなのは、現行の外為法には、事前届け出義務を怠り、外資が日本企業の買収を強行した際に、その投資を無効とする法的な手立てが用意 されていないことだ。現行の罰金制度では、買収された企業を取り戻すのにまったく無力で、いつもは犬猿の仲の経済産業省と総務省が珍しく「早期の抜本策が 求められる」と強い危機感を共有しているのが実情だ。所管の財務省はいつまでもサボタージュせず、重い腰をあげるべきときに直面しているのではないか。

 福田康夫内閣も、2者択一の必要がないことや、閣内不一致ではなく強力なリーダーシップが求められていることを肝に銘じるべきだろう。

」

色々勉強になります。

木曜日, 2月 14, 2008

ガソリン“暫定税率”は永久に続くのか?永田町の欺瞞を許すな!【週刊・上杉隆】

「
ダイヤモンド・オンライン
 
 永田町は不思議な世界だ。時として世間の常識が通用しないばかりか、その真逆のことがいくらでも罷り通る。

  たとえば、政治家が、「前向きに検討します」や「善処します」などと言う時は、まず間違いなく、何もしないという意味に受け取ったほうが良い。また、演説 などで、「国民の皆様のために」などと言った時も注意が必要だ。その真意は「自分の選挙のために」であり、実際に発言を置き換えてみれば、案外すっきりと いくものである。

 これらのものを「永田町用語」という。最近でも、その例として“暫定”と“恒久”が挙げられる。

『広辞苑』によれば、“暫定”とは、〈本式に決定せず、しばらくそれと定めること。臨時の措置〉とある。一方、“恒久”は、〈久しくかわらないこと。永久〉となっている。その通りであるならば、次の事例は一体どうやって説明すればいいのだろうか。

  1998年、日本はバブル崩壊後の株式市場の長期低迷にいまだ喘いでいた。小渕恵三首相(当時)は、野菜の蕪を持ち上げて、「カブ、上が~れ」と叫ぶ涙ぐましいパフォーマンスで景気回復を願った。果たして、小渕内閣は、中小企業への貸し渋り対策や地域振興券配布などを含んだ42兆円規模の緊急経済対策を実 施し、景気浮揚策の一環として所得減税も導入した。そして、その減税は“恒久減税”と名づけられた。

 だが、それがいつの間にか、“恒久的減税”と「的」が挿入され、昨年には、景気は回復基調にあるとして、“恒久”はわずか8年間の短い生涯を閉じたのである。

  一方で、1972年のオイルショックを受けて、2年間の暫定として、田中角栄首相(当時)が導入したガソリン税(租税特別措置法)の暫定税率は、その後 32年間にもわたって維持され続けている。1974年以降は、5年間ごとに延長が繰り返され、現在、与党からは、さらに10年の再延長を求める法案が提出 されている。

 仮に10年という延長法案が成立すれば、実に42年間、つまり、約半世紀近くにわたって“暫定”が続くことになる。

 つまり、永田町での“恒久”とは、10年ほどの期間を指し、逆に“暫定”とは、半世紀、場合によってはそれ以上の半永久的な期間を指すのである。

 こうした「欺瞞」は、永田町に特有な文化をも透かし見せてくれる。それは、政治家や官僚にとって都合のよい“増税”は、安産でしかも長寿になる場合が多いが、逆に、国民が喜ぶような“減税”などは、難産の上、短命に終わってしまうことが少なくないという独特な文化だ。

 改訂版が出されたばかりの『広辞苑』にすら果敢に挑戦してしまう永田町の政治家たち……。もはや怒りを通り越して、呆れるばかりだが、じつは現在、国会で論争に発展している道路関係の諸問題も、こうした永田町用語の「欺瞞」が起因しているのだ。

◇ 道路公団民営化は「上下分離方式」で無実化した

 筆者が、道路問題の取材を始めたのは2002年の春だった(同年『週刊朝日』誌上で8週連続の同時進行ルポを掲載)。

 前年、小泉純一郎首相(当時)は「改革断行評議会」で「聖域なき構造改革」を謳い、一般財源化を図ることを前提に道路特定財源を見直す、と宣言し たばかりだった。小泉首相のそれは、自民党政治の利権構造の“本丸”に挑む宣言に他ならない。よって、その実現性はともかく、当時は多くの永田町関係者が “改革”への期待を抱いたのは確かだ。

 設置されたばかりの道路公団民営化推進委員会では、ムダな道路は造らないという掛け声の下、委員たちからは続々と「凍結」の言葉が吐いて出た。そう、第1回会合では、総延長9342キロメートルという高速道路建設を、ゼロベースで見直しすることすら語られていたのだ。

 だが、議論は踊った。夏、7人の委員はホテルニューオータニで合宿を張ってまで討論を繰り返したが、直後に提出された中間報告では「凍結」の文字は消えていた。

 自民党道路族と旧建設省道路局の抵抗は、予想以上であった。民営化委員会は回を重ねるにつれ、9342kmどころか、「四全総」(第四次全国総合 開発計画)で決定した14000kmの建設まで議論を押し戻そうという動きが顕在化してきた。そして12月、「答申」が出された頃にはすっかり法案策定作 業を担う内閣府(実際は国交省職員)や自民党道路調査会などに、道路建設の決定権を投げ返してしまっていたのだ。

 案の定5年後(2007年)の国幹会議では、道路公団民営化の前提であった9342キロメートルすら消え、中期計画と称して、「四全総」の決定が蘇ってしまったのである。実は、この亡霊復活の背景には、別の「欺瞞」が隠されている。

 2002年秋以降、7人の委員で構成された道路公団民営化推進委員会は紛糾し、結局空中分解してしまうのだが、その分裂の主たる原因は、民営化後の道路会社の経営を「上下分離方式」とするか、あるいは「上下一体方式」とするかの論争が決裂したことにあった。

「分離」を許す猪瀬直樹委員や大宅映子委員に対して、田中一昭委員や川本裕子委員は徹底して「一体」での民営化を訴えた。仮に田中氏らの主張した 「上下一体」が採用されていれば、現在の道路建設の是非を巡る9342kmも、14000km云々という議論自体も存在しなかっただろう。なぜなら、経営 が「一体」であるならば、民営化会社には無駄な道路を作らないというインセンティヴが働き、国幹会議の結論に左右されずに、必要な道路のみを造るという民 間会社としては当然の選択が可能だったからだ。

 だが、委員会の結論を、猪瀬氏らの主唱する「分離」にしたことで、道路の保有主体と管理主体が分けられ、民営化会社は道路建設には一切タッチせ ず、オペレーションのみを行うことになってしまった。ちなみに、この議論の過程で7人のうちの5人の委員が委員会を辞任している。

◇ 道路公団改革は虚構の改革だった

 道路公団民営化での「欺瞞」はまだある。

 1969年の「新全総」では、高速道路建設に当たっては、「償還主義」が採用されていた。「償還主義」とは、道路特定財源で造られた有料道路は借金を返済した時点で、各々無料にしていくという約束のことだ。

 それでいえば、黒字である東名高速道路や名神高速はとうの昔に無料になっているという計算になる。ところが、実際はそうはなっていない。それは、1972年、田中角栄首相が、突然「プール制」を導入し、国民との約束を反故にしたからである。

「プール制」とは、全国の道路はすべてつながった一本の道であるという考えに基づくもので、各々ではなく、高速道路全体の採算制に変更するという ものであった。これによって当然ではあるが、道路を造れば造るほど、高速道路は無料にならずに、ユーザーからの利用料も入るという仕組みになった。

 こうした「欺瞞」を議論したはずの民営化推進委員会が、「虚構の改革」だと言われるのはそうした背景があるからだ。いったい道路公団改革とは一体なんだったのか?

 この問題を最初から追及している加藤秀樹・構想日本代表はこう訴える。

〈マスメディアの多くも、状況の正確な解説よりも、正義の味方を装った発言を繰り返す「役者」をヒーローにまつりあげ、大舞台での派手な立ち回りば かりを娯楽番組まがいに報道した。本業をサボって虚構を演出した(テレビはこちらが本業かもしれないが)という意味ではつくづく罪が深いと思う。
(中略)
  しかし、虚構に惑わされていると、そのツケは結局国民に回され、国力は削がれる。そろそろ私たちも目を覚まそうではないか。政治家も官僚も学者もジャーナ リストも、虚構にぶらさがる者は多いが、真剣に国の行く末を考えている人が実はもっと大勢いるのだから〉(『ウェッジ』2008年2月号)

 加藤氏の言う「虚構」を暴くには、この通常国会での道路論議こそが、本当にラストチャンスなのかもしれない。

※加藤秀樹氏による道路問題研究については「構想日本」のHPに詳しい。

」

呆れるだけじゃ済まないから、国策に関わる話は、更に頭にくるんだよね。