水曜日, 2月 27, 2008

「野党ボケ」した民主党の問題は小沢氏の資質にある 【山崎元のマルチスコープ】

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ダイヤモンド・オンライン

 2月24日に発表された、読売新聞の世論調査の結果が興味深い。

 この調査は、国民の政治意識に関する大規模な連続調査で、今回で4回目となる。主たるテーマは、「政治を信頼するかしないか」だ。

  調査では、「政党や政治家を信頼しない」という回答が68%に上り、「時々政権交代があったほうが良い」と答えた人が63%に上っている。なかでも注目す べきは、自民党支持者でも、政権交代を是とする回答が40%に上ったことだ。政権交代を容認する理由のトップは「腐敗が起こりにくくなる」。自民支持層に もくすぶる現政権に対する強い不満や、クリーンな政治への希求が、調査結果には顕著に現れている。

 ちなみに、政治を「信頼せず」は、世代別に見ると30代がもっとも高く、80.1%に及ぶ。この数字は、20代よりもずっと高い。ロストジェネレーションと言われる不景気で割を食った世代が、政治への不信感を根強く持っているという証だろう。

  読売新聞で上記の調査と同日に(2月16日、17日に)行われた内閣支持率調査では、支持38.7%、不支持50.8%という結果が出た。読売の調査は対 面式で、調査主体が読売新聞社なので、単なるアンケート式よりも政府の支持率は高く出る傾向にある。10%とは言わないまでも、数パーセントは他紙の調査 よりも支持率が高く出やすいのである。その読売の調査で、これだけの不支持率とは、世論的には、福田内閣は相当に追い込まれた状況にある。

◇ 道路でも年金でも鈍り続ける民主党の攻勢

 国民は、明らかに与党に対して不満を持っている。この状況は、野党第一党の民主党にとっては、非常に大きな政治的チャンスのはずだ。

  では、この与党ピンチの中で、野党が十分活躍しているかというと、答えはノーだ。このところの民主党の与党への攻撃ぶりは、メディアを通して見る限りで は、今ひとつ以下である。当初、今国会はガソリン税に焦点を絞り、民主党は暫定税率を否決することでガソリンの価格引下げに追い込む戦術を掲げていた。だ が、伊吹文明自民党幹事長のワザに簡単に屈したというべきか、つなぎ法案で腰砕けにされてしまった。

 暫定税率問題がどう決着するかはまだ決定したわけではないが、目下のところは与党と手打ちをした格好に見えており、民主党が攻勢に立っているという印象がすっかり無くなっている。これは、明らかに政治的失敗だ。

 この挫折で、まさにガソリンが切れてしまったというべきか、民主党は他の問題でも攻勢が鈍り続けている。

 年金問題は、目下、民主党が争点にすれば、自民党に間違いなく勝てるテーマだ。安倍前政権での公約では、年度末の3月までには年金記録の照合をす べて終え、宙に浮いた年金問題に決着をつけるという話になっていた。しかしそれは達成されそうにない。政府が非常に不利な状況にある中で、民主党としては ここで年金問題に世間の注意を惹きつけなければならないはずだ。しかし年金問題もギョーザの毒で印象を消されてしまったのか、現在さして話題に上らず、民 主党側からの積極的な提案も出てこない。戦術が何とも拙い。

 イージス艦「あたご」の衝突事故も、本来であれば絶好の攻撃チャンスだ。そもそも、艦の中の当時の様子がまだ報告できる状態になっていないことが 大問題だし(要は上司が状況を把握できないのか、上司自身に直接的で大きな責任があるから発表できないのか)、艦長がまだ表に出て来ないのも異様だ。もち ろん、石破防衛相に対する責任追及は大いに行われるべきだ。

◇ 日銀総裁人事でも対案を出さずに様子見

 また、日銀総裁の任命問題は、ねじれ国会の中での民主党の側からの有力な攻撃材料であったはずだった。総裁任命は国会同意人事なので、衆参両院で の承認がないと前に進まないのだから、参議院での数が生きる。しかも、武藤敏郎副総裁の就任には大いに問題がある。本来であれば民主党が強く反対し、政府 に対して対案を掲げて対決すべきなのだが、むしろ民主党内の足並みが乱れて、民主党の弱体化を招く材料に転化した感がある。

 これはどうしたことか。小沢一郎代表は武藤氏の総裁就任について、良いとも悪いとも明言しないまま、「俺に一任せよ」という態度である。だが党内 では、仙谷由人元政調会長や岡田克也元代表などから、財政金融分離の原則により、武藤氏への不支持が表明されている。さらに今回は、鳩山由紀夫幹事長から も武藤氏への疑問符がついた。鳩山幹事長は先週ラジオ番組で「武藤氏の副総裁としての5年間のパフォーマンスは必ずしも評価が高くない」と語っている。こ れは今のところあまり強調されていないが、重要なポイントだ。

 日銀の状況は、会社の人事に喩えると、現社長時代の業績が良くなかったのに、現社長を支えた副社長を漫然と後任社長に昇格させようとしているよう な様子に見える。デフレ脱却の遅れや、サブプライム問題の軽視なども含めて、金融政策のパフォーマンスは良いとは言えない。また、コンプライアンス的な観 点からは、福井俊彦現総裁は村上ファンド問題(総裁在任中の明らかな運用行為)で本来辞任していなければならない不適格者であったが、武藤氏は、彼に辞任 を勧告するような骨っぽさを見せたわけではない。

 しかし、小沢民主党代表は、自分への一任で党がまとまるのか、様子見モードに入っているように思える。一任を取り付けて「求心力」を見せたいの か、この問題への対応で党内の敵味方を判別したいのか、意図は分からないが、建設的な議論が無いままに、時間だけが過ぎていく。このままでは、時間切れを 前に総裁空席を避けるために、という理屈を味方にして、小沢氏の下で与党の提案を呑むということになりかねない。それが小沢氏のシナリオだとすればいかに も姑息だし、既に彼の党内求心力は賞味期限切れになっているということだろう。

 そして、これは、民主党の他のメンバーにもいえることだが、武藤氏の総裁就任に本気で反対するなら、今の時点で対案を出していないのは無責任だ。 政府の提案を受けてから対応を決めるという態度には、何のやる気も感じられない。結局のところ人事では官僚組織の論理を受け入れざるを得ないという諦めの 空気が、野党である民主党の中まで覆ってしまっているのだろうか。

◇ 小沢一郎という政治家はもう耐用年数切れか

 民主党の一番の問題は、やはり小沢代表の党運営であり、はっきり言うと政治家としての彼の資質だ。コミュニケーション能力が低すぎるのだ。年金に してもガソリン問題にしても、小沢氏が正面に出て話をするわけでもなければ、党内をまとめて、党として一貫したコミュニケーションが出来ている訳ではな い。不機嫌そうに後ろにいて、様子見ばかりをしている印象を受ける。

「隣の芝生は青く見える」ということもあろうが、アメリカの大統領予備選で、バラク・オバマ氏やヒラリー・クリントン氏が、コミュニケーション能 力を最大限に発揮して、お互いのビジョンを語り、相手を批判し、国民の前に身をさらしている姿と比較すると、その差はあまりに明らかだ。小沢一郎氏が、次 の総選挙で政権奪取を目指す野党のトップなのだという事実を思うと、気が遠くなるなような情けなさにおそわれる。

 厳しい言い方をすると、小沢一郎という政治家はもう耐用年数切れなのではないか。少なくとも、彼は、現代の政治家に要求される仕様を満たしていな い。昨年の辞任表明劇も合わせて考えると、コミュニケーション能力が乏しく、小心で、気に入らないと直ぐにキレる、という人物なのだから、とても国のリー ダーを担う資質はない。

 先の世論調査でも明らかなように、国民は政治の腐敗を起こさないためには政権交代も是とする気持ちなのに、それに野党が応えていない。2年前の偽メール事件の時もそうだったが、民主党は攻勢が取れてきた肝心な時に失速する癖のある困った野党だ。

 もっとも、仮に民主党が政権をとったとしても、健康状態なども考えると、小沢氏を首相にするには限界がある。政治家は引き際が肝心だ。小沢氏は、次の世代に代表職を早く引き継いで、自分は後任者をサポートする形で、野党らしく振る舞う民主党を国民に見せるべきだろう。

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金曜日, 2月 15, 2008

空港外資規制は「外為法改正」で対応するのが国際ルール 【町田徹の“眼”】

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ダイヤモンド・オンライン

 成田や羽田といった空港に対する外資規制の導入問題が、渡辺喜美内閣府特命担当大臣ら3人の閣僚の反対に遭い、「閣内不一致」騒ぎに発展した。

  筆者は3閣僚に肩入れする気など毛頭ないが、国家安全保障の観点から言うと、この外資規制には非常に大きな落とし穴が隠されている。あえて強行すれば、国 際社会で物笑いのタネになるどころか、バッシングの対象になりかねない代物なのだ。もし、冬柴国土交通大臣の主張が事実であり、本当に外資規制が安全保障 のために必要だとすれば、長年、財務省が抜本改正要求を黙殺してきた外為法の強化という手法こそ、国際社会に通用する標準方式であることが見落とされてい る。

「関係各省で事務的調整が終わったものについて、閣僚が違うことを言うのは、組織としてどうか。(伊吹文明自民党幹事長からも苦言があったので)私から注意した」――。
  町村信孝官房長官は8日、こう述べて、成田、羽田といった空港運営会社への外資規制を盛り込んだ空港整備法改正案に反対を表明し「閣内不一致」問題を起こ していた渡辺喜美金融担当相、岸田文雄規制改革担当相、大田弘子経済財政担当相の3大臣に緘口令を布いたことを明らかにした。この日に予定していた空港整 備法改正案の閣議決定を見送らざるを得なかったことが緘口令の背景だった。

 問題の外資規制は、国土交通省が「安全保障・危機管理という 点から見て最低限必要なもの」(冬柴鉄三国土交通相)と導入を目指していたものだ。しかし、渡辺担当相ら3人は「資本規制という、鎖国的・閉鎖的な手段を とるのは間違いだ。外国からの投資を促進しようと、首相を先頭にダボス会議にまで行ってきた。ダボス会議から帰ってきたらいきなり外資規制とは、日本がど ちらの方向を向いているのか疑われる」「空港会社に緊急時に国への協力を義務づけるといった手段があり得る」(いずれも渡辺大臣)などと反対、議論が暗礁 に乗り上げていた。

 つまり、閣内では「安全保障」か「投資促進」かの2者択一議論が発生し、自民・公明の両与党も巻き込み、当の与党幹部が「閣内不一致の印象を与えるのはよくない」と嘆く事態を招いていた。

 だが、こうした2者択一論は、資本取引を巡る現在の国際的な常識に反するものだ。というのは、この2つは相反するものではなくて、両立するものであり、そのための国内ルールの整備手法にも国際標準と呼ぶべき方式がすでに確立されているからである。

 その方式は、原則的に、どのような分野であれ、安全保障上のリスクがある外国からの投資については、あらかじめ横串的に網羅する法律を設けて規制することを明確にしておくというものだ。

◇ 米エクソン・フロリオ条項に相当するのは外為法だが

 その代表例を挙げるとすれば、一番に挙げるべきが、米国の「1988年包括通商法」の「エクソン・フロリオ条項」だろう。同項は、必要に応じて、 米財務省、国防総省、連邦捜査局(FBI)など7つ程度の省庁を集めた特別組織を召集し、この組織に広範な判断を委ねることによって、外国企業による米国 企業に対するM&A(企業の合併・買収)を機動的に差し止める仕組みとなっている。

 過去に日本企業の米ハイテク企業買収が難航したり断念したりを得なかったケースがいくつもある。さらに、最近でも、2005年夏に同条項が抑止力になって中国海洋石油(CNOOC)が米石油大手のユノカル買収を断念した例などは有名だ。

 米国では、このエクソン・フロリオ条項が存在し、安全保障の観点からの外資規制が行われているものの、外資導入の妨げになっているといった批判はほとんどない。

 さらに、「先進国クラブ」と呼ばれるOECD(経済協力開発機構)加盟国の間では、そうした横串のルールに関する基本的な考え方が確立されてい る。そして、「この考え方を具現化した日本版のルールとして存在するのが外為法(外国為替及び外国貿易法)」(経済産業省幹部)なのだ。

 外為法は、様々な国際的な資本取引を監視・規制する法律だ。この中で、一般の外資による日本企業への投資については、発行済み株式の10%以上を 取得しようとする場合、1ヵ月以上の余裕を持って財務省や所管官庁に届け出ることを義務付けている。財務省や所管官庁は、このM&Aの審査に最大数ヵ月程 度を費やすことができるだけでなく、安全保障の観点から必要と判断すれば、M&A計画の修正やとりやめを命ずることもできることになっている。

 ちなみに、経済産業省と財務省が現在、英国の民間投資ファンドザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド(TCI)による電力卸大手Jパワー(電源開発)の株買い増しの届け出を受けて審査しているのも、この外為法の規定が根拠である。

 TCIは、現在、Jパワー株の9.9%を保有しており、20%まで買い増したい意向という。Jパワーは、2004年に完全民営化されたものの、今 なお「旧国策会社」だ。電力大手10社に電力を供給する卸の最大手であるだけでなく、送電線網や周波数変換所など多数の基幹電力設備を保有している。さら に、青森県には、プルトニウムを使う大間原発の建設を計画中。こうしたことから、経産省は「国の安全保障の網の中にある。原子力計画や電力安定供給の観点 からも重要なケース」と関心を払っているという。

◇ 空港外資規制の本当の理由は安保よりも天下り先確保?

 こうした外為法による規制と違い、今回、国土交通省が目指した空港整備法のような特定の産業を律する「業法」で外資規制を行うという手法は、国際 社会では極めて特殊なケースとして限定されている。例外の代表選手的な存在が、WTO(世界貿易機関)の基本電気通信交渉で、自由化が進められて来た通 信・放送分野だろう。この分野では、やはり「安全保障上、必要なケース」に限定されているものの、業法による外資規制が存続を認められている。この結果、 NTT法でNTT、放送法でNHK、TBSといった放送局がそれぞれ外資規制の対象となっているのだ。

 残された問題として注目されるのが、JAL、ANAといったエアラインの外資規制を認められている航空業法だろう。一見すると、今回、焦点の空港運営会社と業態が近いからである。

 ただ、エアラインの法律では、空港運営会社まで拡大解釈できないことから、今回の空港整備法改正案が持ち出された経緯があるという。それならば、 本来、空港運営会社を特例であるべき「業法」で外資規制の対象とすることは国際的な標準方式に馴染まない。あえて、外資規制を行うならば、外為法の対象に 加えるのが筋なのだ。現在、政府内部には、より広範な有事法制を整備し、その中で対応すべきだとの議論もあると聞くが、機動的にそのような法制ができると は考えにくい。やるならば、外為法が筋だろう。

 とはいえ、今回、問題になっている空港運営会社が保有しているのは、売店、飲食店が入っている空港ビルや駐車場だけらしい。滑走路や管制といった 重要な資産・機能は国の所管で、空港運営会社は関係ないという。本当に、安全保障上の観点があるのかどうか、「単なる天下り先確保のために外資を阻んでい る」(内閣府幹部)との見方も根強いだけに、この検証は欠かせない。

 仮に検証の結果、空港運営会社を外為法の規制対象に加える必要がないという結果が出たとしても、外為法の見直しが不必要ということにはならないという問題も重要だ。

◇ 現行の外為法では被買収企業を取り戻せない

 というのは、外為法は“ザル法”状態であり、改正が必要だとの議論が長年、放置されてきたからである。

 実際、外為法は、トヨタ自動車系の照明機器会社の小糸製作所がテキサスの石油資本の買収に直面した際に効力をなさなかったばかりか、その効力への疑問から特殊会社法であるNTT法を廃止しようとする際の妨げになってきたからだ。

 昨年夏にも、粗鋼生産量で世界最大のミッタル・スチール(オランダ)が同2位のアルセロール(ルクセンブルグ)との経営統合を実現。新会社が、一 段の拡大を狙っており、同じく3位の新日鉄(日本)、4位のポスコ(韓国)、5位のJFEスチール(日本)などの吸収を検討していると伝えられたことか ら、経済産業省が「鉄鋼業は、軍事転用が容易な技術が多いだけでなく、関連企業でイージス艦など兵器そのものを製造しているところもある。現行法の尻抜け 状態を早急に解消する必要がある」(中堅幹部)と主張。ようやく、保護が必要な産業の具体名を列挙する形をとっている現行法令に、一部の素材産業を書き加 えることに漕ぎ着けたが、まだ不十分な部分が多いとの見方は根強い。

 特に、気掛かりなのは、現行の外為法には、事前届け出義務を怠り、外資が日本企業の買収を強行した際に、その投資を無効とする法的な手立てが用意 されていないことだ。現行の罰金制度では、買収された企業を取り戻すのにまったく無力で、いつもは犬猿の仲の経済産業省と総務省が珍しく「早期の抜本策が 求められる」と強い危機感を共有しているのが実情だ。所管の財務省はいつまでもサボタージュせず、重い腰をあげるべきときに直面しているのではないか。

 福田康夫内閣も、2者択一の必要がないことや、閣内不一致ではなく強力なリーダーシップが求められていることを肝に銘じるべきだろう。

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色々勉強になります。

木曜日, 2月 14, 2008

ガソリン“暫定税率”は永久に続くのか?永田町の欺瞞を許すな!【週刊・上杉隆】

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ダイヤモンド・オンライン
 
 永田町は不思議な世界だ。時として世間の常識が通用しないばかりか、その真逆のことがいくらでも罷り通る。

  たとえば、政治家が、「前向きに検討します」や「善処します」などと言う時は、まず間違いなく、何もしないという意味に受け取ったほうが良い。また、演説 などで、「国民の皆様のために」などと言った時も注意が必要だ。その真意は「自分の選挙のために」であり、実際に発言を置き換えてみれば、案外すっきりと いくものである。

 これらのものを「永田町用語」という。最近でも、その例として“暫定”と“恒久”が挙げられる。

『広辞苑』によれば、“暫定”とは、〈本式に決定せず、しばらくそれと定めること。臨時の措置〉とある。一方、“恒久”は、〈久しくかわらないこと。永久〉となっている。その通りであるならば、次の事例は一体どうやって説明すればいいのだろうか。

  1998年、日本はバブル崩壊後の株式市場の長期低迷にいまだ喘いでいた。小渕恵三首相(当時)は、野菜の蕪を持ち上げて、「カブ、上が~れ」と叫ぶ涙ぐましいパフォーマンスで景気回復を願った。果たして、小渕内閣は、中小企業への貸し渋り対策や地域振興券配布などを含んだ42兆円規模の緊急経済対策を実 施し、景気浮揚策の一環として所得減税も導入した。そして、その減税は“恒久減税”と名づけられた。

 だが、それがいつの間にか、“恒久的減税”と「的」が挿入され、昨年には、景気は回復基調にあるとして、“恒久”はわずか8年間の短い生涯を閉じたのである。

  一方で、1972年のオイルショックを受けて、2年間の暫定として、田中角栄首相(当時)が導入したガソリン税(租税特別措置法)の暫定税率は、その後 32年間にもわたって維持され続けている。1974年以降は、5年間ごとに延長が繰り返され、現在、与党からは、さらに10年の再延長を求める法案が提出 されている。

 仮に10年という延長法案が成立すれば、実に42年間、つまり、約半世紀近くにわたって“暫定”が続くことになる。

 つまり、永田町での“恒久”とは、10年ほどの期間を指し、逆に“暫定”とは、半世紀、場合によってはそれ以上の半永久的な期間を指すのである。

 こうした「欺瞞」は、永田町に特有な文化をも透かし見せてくれる。それは、政治家や官僚にとって都合のよい“増税”は、安産でしかも長寿になる場合が多いが、逆に、国民が喜ぶような“減税”などは、難産の上、短命に終わってしまうことが少なくないという独特な文化だ。

 改訂版が出されたばかりの『広辞苑』にすら果敢に挑戦してしまう永田町の政治家たち……。もはや怒りを通り越して、呆れるばかりだが、じつは現在、国会で論争に発展している道路関係の諸問題も、こうした永田町用語の「欺瞞」が起因しているのだ。

◇ 道路公団民営化は「上下分離方式」で無実化した

 筆者が、道路問題の取材を始めたのは2002年の春だった(同年『週刊朝日』誌上で8週連続の同時進行ルポを掲載)。

 前年、小泉純一郎首相(当時)は「改革断行評議会」で「聖域なき構造改革」を謳い、一般財源化を図ることを前提に道路特定財源を見直す、と宣言し たばかりだった。小泉首相のそれは、自民党政治の利権構造の“本丸”に挑む宣言に他ならない。よって、その実現性はともかく、当時は多くの永田町関係者が “改革”への期待を抱いたのは確かだ。

 設置されたばかりの道路公団民営化推進委員会では、ムダな道路は造らないという掛け声の下、委員たちからは続々と「凍結」の言葉が吐いて出た。そう、第1回会合では、総延長9342キロメートルという高速道路建設を、ゼロベースで見直しすることすら語られていたのだ。

 だが、議論は踊った。夏、7人の委員はホテルニューオータニで合宿を張ってまで討論を繰り返したが、直後に提出された中間報告では「凍結」の文字は消えていた。

 自民党道路族と旧建設省道路局の抵抗は、予想以上であった。民営化委員会は回を重ねるにつれ、9342kmどころか、「四全総」(第四次全国総合 開発計画)で決定した14000kmの建設まで議論を押し戻そうという動きが顕在化してきた。そして12月、「答申」が出された頃にはすっかり法案策定作 業を担う内閣府(実際は国交省職員)や自民党道路調査会などに、道路建設の決定権を投げ返してしまっていたのだ。

 案の定5年後(2007年)の国幹会議では、道路公団民営化の前提であった9342キロメートルすら消え、中期計画と称して、「四全総」の決定が蘇ってしまったのである。実は、この亡霊復活の背景には、別の「欺瞞」が隠されている。

 2002年秋以降、7人の委員で構成された道路公団民営化推進委員会は紛糾し、結局空中分解してしまうのだが、その分裂の主たる原因は、民営化後の道路会社の経営を「上下分離方式」とするか、あるいは「上下一体方式」とするかの論争が決裂したことにあった。

「分離」を許す猪瀬直樹委員や大宅映子委員に対して、田中一昭委員や川本裕子委員は徹底して「一体」での民営化を訴えた。仮に田中氏らの主張した 「上下一体」が採用されていれば、現在の道路建設の是非を巡る9342kmも、14000km云々という議論自体も存在しなかっただろう。なぜなら、経営 が「一体」であるならば、民営化会社には無駄な道路を作らないというインセンティヴが働き、国幹会議の結論に左右されずに、必要な道路のみを造るという民 間会社としては当然の選択が可能だったからだ。

 だが、委員会の結論を、猪瀬氏らの主唱する「分離」にしたことで、道路の保有主体と管理主体が分けられ、民営化会社は道路建設には一切タッチせ ず、オペレーションのみを行うことになってしまった。ちなみに、この議論の過程で7人のうちの5人の委員が委員会を辞任している。

◇ 道路公団改革は虚構の改革だった

 道路公団民営化での「欺瞞」はまだある。

 1969年の「新全総」では、高速道路建設に当たっては、「償還主義」が採用されていた。「償還主義」とは、道路特定財源で造られた有料道路は借金を返済した時点で、各々無料にしていくという約束のことだ。

 それでいえば、黒字である東名高速道路や名神高速はとうの昔に無料になっているという計算になる。ところが、実際はそうはなっていない。それは、1972年、田中角栄首相が、突然「プール制」を導入し、国民との約束を反故にしたからである。

「プール制」とは、全国の道路はすべてつながった一本の道であるという考えに基づくもので、各々ではなく、高速道路全体の採算制に変更するという ものであった。これによって当然ではあるが、道路を造れば造るほど、高速道路は無料にならずに、ユーザーからの利用料も入るという仕組みになった。

 こうした「欺瞞」を議論したはずの民営化推進委員会が、「虚構の改革」だと言われるのはそうした背景があるからだ。いったい道路公団改革とは一体なんだったのか?

 この問題を最初から追及している加藤秀樹・構想日本代表はこう訴える。

〈マスメディアの多くも、状況の正確な解説よりも、正義の味方を装った発言を繰り返す「役者」をヒーローにまつりあげ、大舞台での派手な立ち回りば かりを娯楽番組まがいに報道した。本業をサボって虚構を演出した(テレビはこちらが本業かもしれないが)という意味ではつくづく罪が深いと思う。
(中略)
  しかし、虚構に惑わされていると、そのツケは結局国民に回され、国力は削がれる。そろそろ私たちも目を覚まそうではないか。政治家も官僚も学者もジャーナ リストも、虚構にぶらさがる者は多いが、真剣に国の行く末を考えている人が実はもっと大勢いるのだから〉(『ウェッジ』2008年2月号)

 加藤氏の言う「虚構」を暴くには、この通常国会での道路論議こそが、本当にラストチャンスなのかもしれない。

※加藤秀樹氏による道路問題研究については「構想日本」のHPに詳しい。

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呆れるだけじゃ済まないから、国策に関わる話は、更に頭にくるんだよね。

水曜日, 2月 13, 2008

経産次官の「デイトレーダーはバカ」発言は案外重大だ【山崎元 マルチスコープ】

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ダイヤモンド・オンライン

北畑隆生経産次官が1月25日に行った講演で、デイトレーダーについて、バカで浮気で無責任だ、などと発言したことが物議を醸している。この件は、主な新聞 では2月8日の「朝日新聞」が、1面と10面で取り上げた。この記事を最初に見たときには、歌手の倖田來未さんの「35歳を過ぎると羊水が腐る」発言が大 きな問題且つ話題になったことに乗じて、官僚の失言をセンセーショナルに取り上げて話題作りを狙ったものなのかと思い、「あんまり騒ぐなよ」という気分で 記事を読んだのであったが、倖田発言とは違って、この発言は、本人がかなり深く考えた結果に合致するもので、行政にも影響を与える可能性がある内容なのだ ということが分かった。

 しかも、倖田來未さんは、発言の非を全面的に認めて謝罪訂正したが、北畑氏や上司である甘利経産相も、発言の「表現」に関する不適切性は認めていても、その背景にある認識の誤りは少しも認めていない。この点は重要だ。

 経産省事務方トップの認識として見過ごせない 朝日新聞の8日の記事(10面)から、北畑発言の要点を抜き書きしてみよう。

「堕落した株主がたくさん現れてきた」、「株主は所有者だが、経営能力がなく、いつでも株を売って離脱できる」、「デイトレーダーは朝買って夜売り、会社のことは何も考えない。所有者というのは納得感が得られない」、「危ない表現をすると、株主は経営能力がないという意味ではバカ、すぐに売れるということで浮気者。無責任、有限責任で、配当を要求する強欲な方」「スティール・パートナーズになると株主・経営者を脅すということだ」、「いい株主と悪い株主が 分かれてきた」、とデイトレーダーとスティール・パートナーズ社(両者はかなり異なるが)を激しく批判している。

 特に、デイトレーダー に関しては、「バカで浮気で無責任だから、議決権を与える必要はない」「配当で少し優遇して無議決権株を上場したらよいのではないか」と述べたという。政策としては、議決権の権利が強力な「多議決権株」、議決権のない「無議決権株」などを上場したらいいのではないか、加えて、長期の株式保有者を税制優遇したり、従業員持ち株会の持ち株に売却制限を課すと共にその議決権行使の強化を行ったりするといいのではないか、ということを個人の意見として提言したようだ。

 講演を面白くするためだったという言い訳があるようだが、発言者の短慮と無理解が浮かび上がるだけで、少しも面白くなっていない。 「脳みそが腐っている」とまでは言うまいが、発言の内容から察するに、北畑氏は官僚として「不出来」なのではないか。それはさて置くとしても、経産省の事 務方のトップがこのような認識を持っているということは、見過ごせない問題だ。

◇ 「デイトレーダーは無責任」発言には承服できない

 先ず、北畑氏は、デイトレーダーに代表される短期間の株主と長期的に株式を保有している株主との間には大きな違いがあると言いたいようだが、これは正当な区別なのだろうか。

 権利の裏側にある株主としての負担を考えると、短期間の株主であっても、その間に投資額に相当する経済価値を他の目的に使用することができないし、株価や配当の変動に関するリスクを負担している。また、長期間の株主といっても、任意の時点で保有株式を売ることは自由であり、株式を一定期間売らな いと保証しているわけではない。基本的に、これまでの保有期間の長さに関係なく、株主として負担しているものは一緒だ。

「バカで、浮気で、無責任」という北畑氏の発言の中で、前の2つに関して投資家は、「投資家はバカかも知れないさ(でも、こんな発言をする北畑氏 はもっとバカだろう)」、「確かに投資家は浮気なものかも知れないよ(しかし、環境の変化を前に全くに判断を変えないのは愚かだし、市場のためでもな い)」と、部分的であるにせよ納得することができるかも知れないが、「無責任だ」という指摘については、全く承服できない。少なくともこの点に関しては、 彼は間違っているので、認識を自己批判した上で発言を謝罪・訂正するべきではなかろうか。

 短期の投資家に対する、北畑氏の無理解と嫌悪は率直に言って異様だ。事務方のトップがこんな認識では、経産省が所管する商品取引が、日本では諸外国に比べて不活発で、残念ながら未だにイメージの悪いものであるのも無理のないことだ、と思わせる。

 また、株式が基本的に有限責任による出資であることは当然であり、これは法律に基づくもともとの了解事項であり、それ自体が悪いことではない。株 主が利益や必要があれば配当を求めるも当たり前だ。これらを批判するというのは、「私は株式が嫌いだ」と言っているに等しい。投資家が彼のことを嫌うのも また当然だろう。

◇ 株主の経営チェック機能を否定する愚

 投資家・株主と企業の「経営」の関わりをどう考えるのかという点も興味深い。確かに、株主は業務の専門性や経営に割く時間的資源も含めて会社を 「経営する能力」がない場合もあるだろう。しかし、経営する能力がある株主ないしその代理人が登場する可能性は常にあり、誰が経営者として適当かは、株式 会社の仕組み上、株主が決めることが正当だ。少なくとも、株主・投資家は、経営に関する「判断」は行うのであって、その権利に対する責任として、資金の機 会費用と投資のリスクを負っている。

 また、企業の業績が低迷したり、各種の不祥事が起こることからも分かるように、既存の経営者が常に十分な経営能力を持っている訳ではない。社会と しては、多数の株主や投資家が経営者をチェックしていることの効果を前向きに評価すべきであり、株主による経営チェック機能は、むしろもっと強化すべきだ ろう。株主が経営者をチェックすることが不適当だというなら、誰が企業を監督するのか。まさか、株式会社の仕組みを理解していない愚かで放言癖のある人物が事務方のトップになるような某官庁ではあるまい。

 記事では理由まで説明されていないので、何が言いたいのかよく分からないが、北畑氏は、スティール・パートナーズ社に対して批判的なようだ。しかし、同社はこれまでに違法行為をしているわけではないので、そのような私企業を、官僚が悪く言うというのはいかがなものか。

 好き嫌いはあってもいいが、ルールは守らなければならない。外国の投資家から見ると(日本の心ある投資家もそう思うだろうが)、「日本の上場企業 は、株式に経営権が付いていないようだし、株主としても要求もできないのか」という印象を持ってしまうだろう。こうしたことと、時にはルール外の、且つ時には事後的な、経営者に対する過剰な保護の印象は、日本の株式に対する魅力を低下させている。市場の材料として評価するなら、北畑氏の一連の発言と現在の 官職に彼が存在することは、間違いなく「売り材料」だ。

 多議決権株や無議決権株の発行・流通・上場を制度として可能にすることは、それだけで悪いということはないが、企業経営者の株主に対する立場を強 化することを目的としてそうした制度を作るということなら、企業に投資する立場から見ると、これは投資の魅力を削ぐ要因になる。たとえば、現在の日本の上 場企業の経営者の立場を今以上に強化することがいいとは全く思えないが、制度の設計如何によっては、企業の経営者同士が株式を持ち合って相互にサポートす ることで、自己保身のためにこうした株式を発行するようなことになると、企業は著しく停滞するだろうし、投資家がそう思うと、株価は下落する。

 また、各種の株式に対するアクセス権は、少なくとも上場企業である場合には、どの投資家に対しても平等であるべきだろう。

 株式の長期保有者の税制優遇、あるいは短期売買の利益に対する課税は、一つの意見として主張されることがあるが、基本的に株主の負担は投資期間の 長短に関係なく同じであることを思うと課税の区別としての正当な根拠を欠くように思われるし、少なくとも、株式市場の流動性の確保にとってマイナスの効果 をもたらす。つまり、日本の株価にとっては悪材料なのだが、北畑氏は、この点をどう考えているのだろうか。

◇ 企業経営者の保護にこれほど熱心な理由は何か

 また、従業員持株会の株式売却制限や議決権行使の強化は、具体的に何をしようとしているのか不明だが、ただでさえ経営者の人事的支配の下にある従 業員の資産を経営者の保身のために使うことが強化されかねない。現在でも従業員はインサイダー取引でなければ勤務先の株式を取得し、議決権を行使すること ができるのだから、従業員の自発的な意思以上に安定株主対策のために使うべきではない。また、他の条件を一定として、給料を上げると利益は減るのだから、 従業員と株主は利害が衝突することがしばしばある。この点を考えると、従業員持株会の議決権行使への参加は他の株主にとっていいことではない。

 それにしても、経産省の事務次官が、これほど日本企業の経営者の保護に熱心であることの理由は何なのだろう。一つの推測は、規制の一部を権限とし て握る経産省が自らの立場を守るために、投資家に脅かされている経営者を味方に付けたいのだろうということであり、もう一つには、既存経営者層への人気取 りが北畑氏の今後の天下り人生にプラスになるからなのか、ということだが、もちろん、どちらも好ましいことではない。要は、不出来な官僚が、不出来な経営者の保身の心に、深く共感して感化されてしまったということなのだろうか。

 少なくとも、内外の投資家の目には、各種の規制と経営者の保身が、日本の企業と経済の動きの悪さをもたらしていて、日本株への投資魅力を低下させていると映っている。経産省全体が、北畑氏のような認識でないことを祈りたい。

」

この次官のその後が知りたい

木曜日, 2月 07, 2008

もはや重要ではない日米関係、誰が大統領でも影響はない

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ダイヤモンド・オンライン

 米大統領の前半戦の〝天王山〟である「スーパーチューズデー」の開票が進んでいる。本稿はその真最中に執筆している(日本時間6日午後6時)。

 共和党ではジョン・マケインが多くの州で勝利を収めながらも、ミット・ロムニーが辛うじてそれに次いでいる。マケインの「指名獲得」とまではいかないものの、獲得代議員数ではダブルスコア以上の差をつけている。

 一方、民主党はヒラリー・クリントン、バラク・オバマともに譲らず、大激戦の様相を呈している。AP通信(東部時間6日午前4時)によれば、獲得 代議員数はクリントン「725人」に対して、オバマが「625人」と接戦を繰り広げている。おそらくは、さらに数週間、この2人の民主党候補の戦いは続くだろう。

 いずれにせよ、11月の大統領本選を経て、マケイン、クリントン、オバマの3人のうちのひとりが、ホワイトハウスへの切符を手に入れることは間違いなさそうだ。

◇ 民主党が勝つと日本に不利と説く的外れ

 大統領選挙は、米国でのこととはいえ、「同盟国」である日本にとっても他人事ではいられない。永田町の為政者たちもこの選挙の行方を大いに注目している。政治家のみならず霞が関の官僚やメディアも同様だ。

 当然ながら、彼らの多くの関心事は、2009年に就任する米国大統領が「誰」になるのかという点だ。ところが、実はそれ以上に、大統領候補者たちが、日本にどのような人脈を持ち、どのような対日政策を採用しようとしているのかということにより注視している。

 ところが、この件に関して、テレビや活字媒体でコメントしている「専門家」や「評論家」たちの意見はあまりに心もとない。と言うか、大抵が的外れで、無責任ですらある。

 テレビでは、米国政治に詳しいとされるコメンテーターが「民主党候補が勝ったら日本バッシングが始まる」というような意味不明な解説をしていた り、同じくNHK出身のジャーナリストが「クリントンもオバマも、日本を知るスタッフをまったく擁していない」などという頓珍漢なコメントを週刊誌に寄せ ていたりしている。

 こうした無責任な「分析」は、放置しておけばよいだろう。所詮、自然淘汰されるか、そっと修正されるのが関の山だ。特段ムキになる必要もないし、真に受けること自体、時間の無駄だ。

 とはいえ、次期米大統領がどのような対日政策を講じる可能性があるのかを、現時点で知ることは日米関係における外交戦略上においても重要であることに疑いはない。

 とくに外交を担う政治家や外交官が、この種の情報をいち早く把握しておこうと焦っているのではないか。おそらく、それぞれのチャンネルを使っての情報収集は行われているだろうが、先の「専門家」や「評論家」の分析を聞いていると幾分不安に陥る。

 では、私たちは、何を元に判断を下せばいいのだろうか。

◇ マケインの対日政策はブッシュ路線を継承か

 幸いにも、筆者の手元には素晴しい「教材」がある。東京財団の研究による「2008年米国大統領選挙主要候補者の選対本部・政策アドバイザー人名録」という冊子がそれだ。

 この時期に、ここまで詳細な「情報」を作成していたことに驚きを禁じえない。まったく、その内容には敬服してしまう、というより驚愕してしまう。作成者はきっと、相当な〈ワシントンマニア〉に違いない(笑)。

 冊子によれば、久保文明東京大学教授と足立正彦住友商事総合研究所シニア・アナリストの研究によって成ったものだという。

 次期大統領候補らの情報に関して、現在の日本ではこの情報に及ぶものはまずないだろう。発行は昨年の12月だが、スーパーチューズデーが行われて いる現在でも「情報」は少しも古びていない。この2人の研究のおかげで、米大統領候補たちが築くであろう将来の日米関係はある程度展望できる。

 敬意を表してここに紹介しようと思う(ちなみに2人とも筆者とは知人ではない)。

 さらに詳しい内容は、東京財団のHPで公開しているのでそちらを参照していただきたい。

 マケインの外交・国家安全保障アドバイザーには、日本と良好な関係を保持してきたブッシュ親子のスタッフがそのまま移行しているようだ。

 コリン・パウエル(国務長官)、リチャード・アーミテージ(国務副長官)、そして日本通で日本語の達者なマイケル・グリーン(国家安全保障会議東 アジア担当上級部長)などが顔を揃える。つまり、マケインが大統領になった場合、現ブッシュ政権のそれとあまり変わらない対日政策が構築されることになる だろう。

 とりわけ注目すべきはB・スコウクロフトの存在だ。フォード大統領、ブッシュ父大統領の国家安全保障担当大統領補佐官で、C・ライスの教育係、イ ラク戦争に反対していた共和党穏健派の代表格である。彼の存在が象徴的だが、外交政策に関しては、「マケイン政権」ならば、ややリベラルに振れる可能性が 高い。

◇ オバマ陣営には意外や“アジア通”が多い

 問題は、伝統的に日本に厳しいとされる民主党が政権を取った場合だ。

 クリントン陣営の外交スタッフには、夫ビル・クリントン大統領時代のスタッフでもあるカート・キャンベル(国務次官補代理)など、知日派のアドバ イザーもいることはいる。だが、どちらかというとM・オルブライト(国務長官)やウィリアム・ペリー(国防長官)など朝鮮半島専門家が多い。

 「クリントン政権」ならば、米国の対東アジア戦略が大きく転換する可能性がある。とくに6者協議については対北朝鮮宥和派のオルブライトの存在が何らかの「変化」をもたらすかもしれない。

 では、オバマ陣営はどうだろうか。意外なことに、選対の外交スタッフの中にもっとも〝アジア通〟の多いのがこのオバマ陣営である。

 クリントン陣営との類似点があるが、当選したら、イラク戦争への反対などさらにリベラルな陣を敷くだろう。

 東アジア専門家のジェフリー・ベーダー(NSCアジア問題担当部長)、「1998東アジア戦略報告」を作成したデレク・ミッチェル(国防長官特別 補佐官)、日本の防衛研究所にいたマイケル・シファー(国家安全保障問題担当上級顧問)、そして、ボーイング・ジャパン前社長で、22年間日本に住み、日 本人の妻を持つロバート・オァー(在日米国商工会議所副会頭)がいる。

 このようなアドバイザーが存在するためか、実際にオバマの日本に関する知識は驚くほど正確だという。

◇ ワシントンでは誰も日本を気にしていない

 さて、肝心の日米関係はどう推移するのだろうか。

 クリントンとオバマの所属政党は民主党である。過去、民主党政権の間には、日米関係が悪化する傾向にあった。今回も危険な状況に陥ることはあるのだろうか。

 実はその点については、筆者は、大した心配には及ばないと考える。なぜなら、今回の大統領キャンペーンでも明らかなように、もはや米国の考える外交のゲームプランにおいて、日本は重要なプレイヤーではないからだ。実際、どの候補も、日本との関係については特別に言及していない。

 今回の大統領選では、外交に関しては、イラク、パレスチナを中心とする中東、そして経済的なパートナーとしての欧州と中国ばかりに話題が集中して いる。日本はと言えば、辛うじて対中関係の中で触れられただけにすぎない。つまり、ワシントンでは誰も日本を気にしていないのである。

 神経過敏な日本のメディアが大騒ぎしているためか、今回の大統領選でも、日本はアジアにおいて米国の唯一のパートナーであるかのような報道が一部で流されている。だが、それは現実とはあまりにかけ離れている一方的な「対米片想い」に過ぎない。

 確かに、日米同盟は存在しているが、米国の世界戦略上、日本はかつてのような最重要国からはすでに脱落している。米国にとってのアジアのカウンターパートは中国であり、その次はインドだ。もはや、日本は東アジアの戦略上の便利な「同盟国」としかみられていない。

 確かに、米大統領選の結果は、日本にとっては重要だ。だが、米国からすれば日米関係は、誰が勝利を収めようと、特段の「変化」はないのである。それが現実であり、現在の日本の置かれた国際的な立場なのである。

 無責任なコメンテーターや専門家の「分析」に惑わされないよう、冷静に米大統領選を注視してみようではないか。

」

けど、分からん以上は、踊らされるのが民衆なんじゃないの?

金曜日, 2月 01, 2008

【町田徹コラム】武藤氏以外に適任者はいるか?日銀新総裁に求められる資質

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ダイヤモンド・オンライン

 一段と鮮明になる米景気の後退と、原油価格の高騰をきっかけに日本に忍び寄るスタグフレーション(景気後退下でのインフレの進行)の影――。この難局の舵取りの一翼を担うことになるのが、3月19日に任期を終える福井俊彦・日銀総裁の後継者だ。

  政府・自民党や経済界、民間エコノミストが幅広く支持する大本命は、現在、副総裁ポストにある武藤敏郎氏である。ところが、参議院で多数を握る民主党は、 武藤氏が元財務事務次官であることを理由に同氏の擁立に根強く反発しているという。注目を集める次期日銀総裁に求められる資質とはいったい何なのか、ある いは、武藤氏よりも適任と言える人物が存在するのだろうか、検証してみよう。

◇ すべての条件を満たす人材を探すのは至難

 日銀新総裁に就くための必要条件はなんだろうか。本稿の執筆のため、日頃から驚くべきファクツや明晰なロジックを教示してくれる、筆者のとっておきのソースたちに意見を聞いたので、まず、その結果をご紹介しよう。

「何よりも経済通として著名で、国際的に通用すること。もちろん、経営者でもよいが、できれば、エコノミストの方が望ましい。G7(先進7カ国蔵相・中央 銀行会議)などの国際金融会議が頻繁に開かれ、海外出張が多くなるので、頑健な身体を持っていることもとても重要だ」(有名エコノミスト)

「今は、利上げなどで普段より遥かに困難な金融政策の選択が求められる可能性が大きい。そのためには、周囲の反対を押さえ込んで、実行できるだけの政治力、説得力を持った人が必要になってくる」(野党実力者)

「最近で言えば、なぜ、サブプライムローン危機が起きたのか。原油価格の高騰のメカニズムは…。そうした国際的な資金・資本移動の実態をいち早く把握・理解できる能力と、そうした新たな現象に対して、果敢に必要な手を打てる能力が不可欠でしょう」(証券ディラー)

「市場と上手に対話できる人。そういう意味では、唐突な印象を与えない安定感も重要だ。それから日銀という巨大組織のポテンシャルをうまく引き出す大組織の長という側面も見逃せない」(銀行系証券アナリスト)

「欧米のように奨励金制度が整い30歳近くまで学校に残ることが当たり前の国々とは環境が違うので、酷な条件と言われるかもしれないが、できれば経済学の博士号を持っていることが望ましい」(大学院教授)

「プライベートなお金の問題に関して、身奇麗なこと。福井総裁の場合、村上ファンドの村上世彰氏らとの関係が取り沙汰され、政策的な足かせになったキライがある。ああいうことは2度と繰り返してほしくない」(米系投資銀行幹部)

 日銀総裁に求められる資質、ハードルがいかに高いか、おわかりいただけたことと思う。実は、これらの条件をすべて満たす人物を探し出すというのは、大変なことである。

◇ 候補として名が挙がる人物は多いが

 例えば、次期日銀総裁候補で大本命とされる武藤氏でさえ、「経済学の博士号」は保持していない。博士号など必要なのかと思われる読者は多いだろう が、歴代の米FRB(連邦準備制度理事会)議長をみると、現職のベン・バーナンキ氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得しているし、その 前任者アラン・グリーンスパン氏もニューヨーク大学の博士号保持者だ。複雑怪奇な国際資本移動や経済の変化を把握し、その状況をどう判断し、どう対応する か。あるいは、その施策を、市場と対話しながら、どのように、うまく浸透させていくか。米国では、博士号や修士号といった学位の保持を、必要な資質の証明 書と捉える風潮が依然として強い。

 だが、今回の日銀総裁選びについて、学位の保持という条件を最優先してしまうと、候補は、東大教授の植田和男氏や伊藤元重氏らに限定されてしま う。もちろん、彼らはいずれも学者として輝かしい経歴を残している人物だが、G7のような国際金融会議での知名度や、政治とのパイプとなると心もとない。 また、植田氏は日銀政策委員の経験があるとはいえ、すでに日銀を離れて3年近くが過ぎようとしている。

 一方、官僚出身者を嫌う人たちが推すことの多い竹中平蔵氏も有力な候補者の一人だろう。小泉内閣での経済政策の司令塔をつとめた実績があり、国際的な知名度も非常に高いからだ。しかし、その政治手法に対して、与野党の間で、引き続き根強いアレルギーが残っているらしい。

 逆に、大蔵省の財務官経験があり、かつて「通貨マフィア」と呼ばれた榊原英資氏の場合、官僚出身ながら、以前、民主党のネクストキャビネットの閣 僚名簿に名前を連ねた経験があり、その縁もあって、民主党若手の支持が多いのが特色だ。ところが、それが災いして、自民・公明両与党からは強い反発がある という。現実問題として考えると、こうした党派色の強い人物が、衆議院を自公、参議院を民主が握るねじれ国会において、日銀総裁就任の承認を得ることは難 しい状況となっている。

 民間出身者はどうだろうか。あまり日銀総裁候補として取り沙汰されることはないが、博士号を持ち、国際的に通用する経済通といった条件を満たす人 物といえば、野村ホールディングス取締役会長の氏家純一氏が挙げられる。氏家氏は、マネタリストたちの牙城として有名だった米シカゴ大学の経済学博士号を 持つドクターであるうえ、野村証券という国内ナンバーワン証券会社の経営者として海外でも有名である。

 ただ、氏家氏は、かつての証券不祥事を受けてトップに就いたという経緯のせいか、自ら永田町や霞が関における人脈構築を避けてきたように見える。その方面のパイプが細いとされるだけでなく、ごく最近まで財界活動でさえ腰が重かった。

 また、純粋の民間企業出身の日銀総裁というのは、これまで極めて稀有な存在と言える。最近で言うと、第21代日銀総裁として、1964年から5年 間在任した、三菱銀行(現三菱UFJフィナンシャル・グループ)出身の宇佐美洵氏以来のことなのだ。ちなみに、現在の福井総裁の前任者で、第28代日銀総 裁だった速水優氏は、日商岩井(現双日)から日銀入りし「民間から登用」と話題を呼んだが、これは、そもそも理事までつとめた経歴を持つ日銀マンが転出 し、再び返り咲いたのが実態だった。そういう意味では、純粋の民間出身者には日銀総裁に就くというハードルが高いのかもしれない。

◇ 経歴・資質を考えるとやはり武藤氏が最有力か

 このように見てくると、博士号こそ保持しないものの、武藤氏の経歴・資質は他の追随を許さない。まず、過去5年間、日銀副総裁としてG7などの国 際会議に何度も出席してきたことで、国際金融会議の場での顔を築いている。その一方、財務官僚時代からの政治家とのパイプの太さにも定評がある。

 何より、現在の経済情勢に強い危機感を持っている点で評価が高い。周囲に聞くと、米政府がサブプライムローン問題処理のための金融機関への資本注 入になかなか踏み切れないことや、原油価格の高騰に歯止めがかからないこと、これがスタグフレーションの元凶になりつつあることに強い危機感を持っている という。

 このところ、市場関係者の間では、日銀に対して、米FRBに追随し金融を緩和するよう求める声が多い。私見だが、この局面で優先すべきは、スタグ フレーション退治のための早期の大幅利上げであり、緩和はその後の施策ではないだろうか。本来、昨春やっておくべきだった利上げが実現していないことが、 円キャリートレードや原油への投機を呼んだ経緯は軽視すべきでないと思われる。さらに言えば、新日銀総裁の最初の政策決定会合を迎える4月に、 1.0~1.25%程度の大幅利上げを迫られる局面が出てきてもおかしくない、と筆者は考えている。

 そうした難しい局面に直面した際に、米通貨当局に毅然と注文を付けたり、政治を説得し国内の利上げを断行できたりする人物として、武藤氏が最有力候補と言わざるを得ないだろう。

◇ 3月までに決まらない失態だけは与野党ともに回避すべし

 与野党には、「官僚だから」「財務省出身なんだから、利上げによって国債の利払い費が膨張するのを嫌がる財務省の立場を尊重するに違いない」と いった、根拠の薄い論理で武藤氏の総裁昇格に反対する向きが多い。が、ここしばらく、政府系金融機関や特殊会社のトップ人事で、強引な官僚外しを優先し て、とても適任と思えない民間人を採用、結果として、それぞれの組織がぎくしゃくしている例こそ、直視して反省すべきだろう。

 本来ならば、次期日銀総裁は、2月前半に東京で開催されるG7にあわせて、お披露目できるようにしておくべきだった。任期満了に伴う退任が1ヵ月 後に迫った福井総裁が、そうした場でリーダーシップを発揮するのは難しいからだ。これまでに後継総裁を決めることができなかった政府の対応の遅さ・マズさ は、現下の世界的な株式市場の混乱と景気後退の克服に関して、東京G7を舞台に、日本が指導力を発揮する好機を失わせてしまった。

 さらに、政争にかまけて、3月19日までに、正式に新日銀総裁を決められないようならば、福田康夫首相はもちろん、民主党の小沢一郎氏も引責辞任すべき失態を犯すことになると肝に銘ずべきである。

」

福井選んだんと同じ理屈で選ばれるのだけは、やめて欲しいね。

木曜日, 1月 31, 2008

ヒラリーも無視できないユーチューブは米大統領選の“真の勝利者” 【週刊・上杉隆】

「
ダイヤモンド・オンライン

 28日、ブッシュ大統領の最後の一般教書演説が行われた。現職米大統領の重要なスピーチにもかかわらず、全米の関心はあまり高くないようだ。メ ディアの視点は、概して大統領キャンペーンに向かっている。大統領選挙報道と比して、ブッシュ氏のあまりに見事なレームダッグ状態に、半ば驚きを禁じえな い。

 ここ数週間、筆者の自宅のテレビのチャンネルはCNNに固定されたままだ。これほど米国のニュースを見続けているのは「ニューヨークタイムズ」で 働いていた以来のことではないか。幸いなことに当時と違って、ブッシュ氏の顔がテレビ画面を占領することは多くはない。あらゆる価値観をぶつけ合う今回の 大統領レースは、他の政治報道はもちろん、どんなテレビドラマよりも白熱しているように感じる。全米のテレビ局にとっても、大統領選挙の多様性が増したこ とは、高視聴率をもたらす好材料となっているだろう。

◇ 政治の世界で完全に市民権を得たユーチューブ

 今週から来週にかけて、米大統領レースは前半の大きなヤマ場を迎える。全米22州で予備選等が行われるスーパーチューズデーを前に、それぞれ30 日に共和党、31日に民主党の討論会が開催される。CNNを初め全米のテレビ局は、スター記者や有名キャスターを投入して、4年に一度の大イベントに花を 添える。

 これからしばらくの間は、NFLのスーパーボール中継には及ばないまでも、全米の何千万人がこの政治ショーに釘付けになるだろう。そしてそれはテレビだけに限らない。

 前回の選挙では想像だにできなかったひとつのメディアが台頭し、選挙報道と選挙そのものに大いなる影響を及ぼし始めている。

 その新参メディア、ユーチューブは、いまや政治に欠かせないツールとなった。

 今回の大統領選での討論のほとんどはユーチューブで視聴可能だ。この無料動画公開サイトは、あっという間に政治の世界に入り込んだ。登場当初は、著作権等の関係で目の敵にされていたユーチューブだが、いまや、米国ではすっかり市民権を得ている。

 昨年11月、CNNは、そのユーチューブとの共催で大統領討論会を開いた。一般市民からの投稿動画によって、直接大統領候補に質問を投げるという新しい試みは、メディアの選挙報道のスタイル変更を強烈に印象付けた。

 この動きを無視できないとみた各陣営も同様に動く。ユーチューブ内の独自チャンネルにある「ユーチューズ」に自らの演説をエントリーし、ネットユーザーに直接訴えかける戦術を取り始めたのだ。

 まもなく始まるスーパーチューズデーの模様もユーチューブによって全世界に伝えられるだろう。民主党について言えば、全米22州のうち、イリノイ 州とジョージア州以外は、事前の世論調査でオバマ氏が負けている(1月30日現在)。だがその直前にあたる29日、党内で大きな動きがあった。

◇ オバマ支持を表明したケネディ一家の影響力

 民主党のエドワード・ケネディ上院議員(JFKの実弟)、パトリック・ケネディ下院議員(同じく甥)、キャロライン・ケネディ氏(JFKの長女)の3人の「ケネディ」が、オバマ候補への支持を打ち出したのだ。

 いまなお、民主党におけるケネディ・ファミリーの「神話」は無視できない。およそ半世紀前の伝説的な米大統領は、死してなお、生ける「候補」を走らせる。

 とりわけ、これまで一定の候補を支持することを控えていたエドワード・ケネディ氏が、自らの意思を明確にしたことは、民主党の大統領指名レースに少なからぬ影響を与えると見られている。

 これこそ、クリントン陣営のもっとも恐れていたことだ。ケネディ氏は、クリントン夫妻のネガティブキャンペーンを痛烈に批判し、民主党内の候補者レースに、個人攻撃を持ち込んだことに強い不快感を示したのだ。

 じつは、米政界で伝説的ともいえるケネディ一家と、クリントン夫妻は親しい友人同士でもあった。だが、ケネディ氏はかつてのファーストレディを将来の大統領候補と認めない選択を下した。

「変化の兆しが感じられる。オバマ候補はあのキング牧師の言葉を完全に理解している。彼には改革の情熱を感じる。それをやり遂げる能力がある。兄(ジョン)と同じ共通の目標を掲げて、米国を変化に導くのは彼をおいて他にいない」

 29日、ケネディはアメリカン大学の講演でこう語り、隣に座るオバマを褒め称えた。奇しくもそこは1963年、暗殺直前のジョン・F・ケネディ元大統領がスピーチをした場所でもある。45年後、兄と同じ演壇に立った弟は、世論調査で苦戦するオバマ氏への支持を訴えた。

 ケネディの支持を取り付けたことは、民主党のエスタブリッシュメント層、及びヒスパニック系の投票行動に影響を与える可能性がある。ヒスパニック 系からの圧倒的な人気を誇るのはクリントン前大統領だが、ケネディ氏もまた同じくヒスパニック系からの信頼が厚い。不利と見られていたニューヨーク州、カ リフォルニア州での世論の動きがみえなくなったとCNNに出演した複数の政治アナリストがそう分析している。ヒラリー・クリントン氏にとっては脅威になっ た。

 サウスカロライナ州の予備選挙でのクリントン氏の思わぬ大敗は、オバマ氏に勢いづかせたとされるが、ケネディ氏の演説によってさらなるダメージを 受けたようだ。CNNの調査では、民主党員の19%が、ケネディの演説に影響を受けたと答えている。天王山のスーパーチューズデーを控えて、クリントン陣 営にとってはまったくもって嬉しくないニュースである。

 サウスカロライナ州の予備選直前には、リベラル層に大きな影響を持つ「ニューヨークタイムズ」紙が、クリントン支持を打ち出したばかりだった。だが、オバマ氏の地滑り的勝利に歯止めをかけるには至らなかった。

◇ ユーチューブに登場したオバマ・ガールが話題に

 振り返れば、キャンペーンのキーとなるポイントで、オバマ氏には常に強力な「援軍」が現れている。今週は「ケネディ・ファミリー」だが、最初の「援軍」こそ今回の大統領選の特徴を如実に表す人物でもあった。

 ユーチューブに登場したセクシーな女性、オバマ・ガールは、"I Got a Crush...On Obama"(「オバマに首ったけ」)という歌に合わせて、水着姿で悩ましく踊るオバマ・マニアだ。「援軍」とは、オバマ氏に恋して、彼への支持を訴える 若き女性の投稿動画のことだ。
(http://jp.youtube.com/watch?v=wKsoXHYICqU)

 この動画はユーチューブでブレイクし、大統領キャンペーンの前半の話題を独占した。

 オバマ・ガールの登場に喜んだのは、パソコンの前に座って鼻の下を伸ばした男たちばかりではない。ユーチューブの政治ディレクターであるスティーブ・グローブも、大いにほくそ笑んだに違いない。

 彼は、ボストングローブ紙とABCテレビの記者でもあったが、ユーチューブ黎明期の頃、すでにその政治的役割を予言し、大統領選挙への関与を期待 していた。まさしくオバマ・ガールが、その期待に応えたのだ。彼女はその後、3大ネットのバラエティ番組などに呼ばれ、オバマ氏へのラブコールを投げかけ ている。ユーチューブ発の政治スターの誕生であった。

◇ 共和党候補はユーチューブでも人気薄

 筆者はここまで、CNNをはじめとした米国のテレビ局は大統領選挙ばかりを報じているように書いてきたが、必ずしもそれは正確な表現ではない。正 確に記せば、民主党の大統領指名争いばかり報じている。さらに精密な表現でもってすれば、ヒラリー・クリントン氏とバラク・オバマ氏という2人の候補者の 争いばかりを報じている。民主党の指名争いの3位につけているジョン・エドワーズ氏の出番はあまりない。

 共和党についても同様だ。マケイン氏とロムニー氏が指名を争っているが、わずか2ヵ月前には次期大統領の「大本命」であったジュリアーニ氏の影は、いまや信じ難いほど薄い。

 フロリダ州、ニューヨーク州などの大票田での逆転勝利にかけるジュリアーニ氏だが、米国民の関心は、「ブロークンウィンドウ理論」を駆使して、ニューヨークに安全を取り戻し、9・11テロ直後の対応を含め、「危機管理」の象徴ともいえる彼に支持が戻る気配はない。

 米国民の関心は、わずか数ヵ月の間に、イラク戦争、テロなどの「危機管理」から、サブプライムローンなどの内政および経済問題に移行してしまったのだ。

 ユーチューブでの共和党候補のヒット数は伸び悩んでいる。この新しいメディアでの人気は、そのまま大統領選挙の特徴を反映している。グローブの意図した通り、もはや政治はユーチューブを無視できない状況にある。

 この動きは米国に特有のものではない。英国でも、首相官邸がブラウン首相の演説動画を載せ、英王室も「ロイヤル・チャンネル」を開設し、エリザベス女王やチャーチル皇太子の映像を紹介し始めている。
(http://jp.youtube.com/user/TheRoyalChannel)

 日本でも福田首相が、「自民党チャンネル」の中で自らの政策を訴え始めた。
(http://jp.youtube.com/watch?v=IAUT0498Acs)

 これらの動きをみて、2008年の政治シーンで、ひとつだけ確かなことがいえるだろう。それは米大統領選挙の勝者が誰になろうと、新しい政治の主役のひとりにはユーチューブが確定しているということだ。

」

土曜日, 1月 19, 2008

米大統領選の最大テーマは経済に

「
フィナンシャル・タイムズ 2008年1月19日(土)12:07

(フィナンシャル・タイムズ 2008年1月14日初出 翻訳gooニュース) ワシントン=エドワード・ルース

今年の米大統領選のメインテーマはどうやら久しぶりに、「大事なのは経済なんだよバカモノ」になりそうだ。1992年の大統領選でクリントン陣営が掲げた (そしてそれによって勝利を獲得した)選挙テーマだ。とはいえウォール街ではもう数カ月前から、「(選挙で)大事なのは経済なんだよ」と心配されてきたの だが。

米国経済が不況に陥る危険は50%と多くの経済学者が警告する中、ここ数日来、3人の大統領候補が(民主党のバラク・オバマ上院議員とヒラリー・クリントン上院議員、共和党のルディ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長)相次いで、それぞれの景気刺激策を発表した。

これはつまり候補たちがみな、最新の世論調査結果を重視していることの現れだ。調査によると有権者がいま最も重視している政策テーマは、経済。2007年にはイラク戦争だったものが、経済に取って代わられたのだ。

1月8日のニューハンプシャー州予備選の出口調査によると、民主党支持者の38%と共和党支持者の31%が、ほかのテーマを大きく引き離して、最大の関心事は経済と答えている。

さらに目を引いたのは、共和党支持者の80%と民主党支持者の98%が、経済について「とても心配している」あるいは「やや心配している」と答えたこと だ。両党支持者が関心事として挙げた3大テーマはほかに、移民問題と医療だが、いずれもやはり経済的な要素を背景に抱えている。

「目新しいのは、今や共和党支持者たちさえもが経済の悪化をひどく恐れていることだ」 ワシントンの政治アナリスト、チャーリー・クック氏は言う。「つい最近まで、経済に警鐘を鳴らしていたのは民主党支持者だけだったのに」

米経済の悪化がどの候補に有利に働くか、憶測は危険だと世論調査の専門家たちは言う。しかし民主党候補のなかでは、クリントン候補が有利になるだろうと見 られている。たとえば、経済問題が最大の関心事と答えたニューハンプシャーの民主党支持者たちは、オバマ議員よりもクリントン議員を高く支持した。

平均世帯年収5万ドル(約600万円)未満の有権者たちが一番支持するのも、クリントン議員だ。これに対してオバマ議員は、「希望と変化」を唱え、より教 育レベルの高い有権者の支持を集めている。平均世帯年収10万ドル(約1200万円)以上の有権者は、圧倒的にオバマ議員を支持しているのだ。

「一般論として、希望や変革という選挙メッセージに有権者が好意的に反応するのは、経済が好調なとき」 インターナショナル・ストラテジー・アンド・イン ベストメントのワシントン事務所のトム・ギャラガー氏はこう言う。「私が思うに、不景気になれば、自分には実行力があると主張する候補が有利になる」

一方で、不景気になれば有利になる共和党候補は、経歴だけをとれば明らかに、ミット・ロムニー氏のはずだ。前マサチューセッツ州知事のロムニー氏はヘッジ ファンド運営で設けた2億ドル以上の個人資産をもつ、もっとも金持ちの候補だ。しかし政策テーマについてことあるごとに立場を変えてきた、風見鶏的な選挙 活動が広く批判されている。「イデオロギーではなく自分の実務能力を売り物にしてきたなら、ロムニーは今ごろ躍進しているはずだが、今までそうしてこな かった」とクック氏。

やはり共和党候補では、アリゾナ選出のジョン・マケイン上院議員もマイク・ハッカビー前アーカンソー州知事も、経済に強いという定評はない。そして局地的 な不景気にずっと見舞われているミシガン州の予備選で、この3人がぶつかるわけだ(訳注・ミシガンではロムニー氏が勝った)。しかしハッカビー氏は一般受 けする経済ポピュリズムのメッセージを繰り返し展開するようになったし、マケイン氏はこれまでもずっと利権誘導型の政治を厳しく批判してきて、2人とも支 持率を上げている。

それでもほとんどの専門家は、本選のころになればイラク戦争がテーマとして再浮上しているはずだと見越しているが、それでも最重要テーマは経済のまま本選 にいくだろう。1992年大統領選を参考にするなら、選挙では政治テーマよりも経済が優先するものだ。1992年には米失業率が6月にピークに達し、そこ から減り始めた。しかし有権者たちは11月になってもまだ景気を心配し続けて、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領に2期目を与えずにビル・クリントン氏を大統領に選んだ。

1992年の大統領選はそのほかにも、やはり経済を主要テーマに掲げて出馬したロス・ペローという第3の候補の存在によって、混乱に拍車がかかった。 2008年に米経済が不況に陥れば、今回の大統領選も同じような展開になり得る。不況によって「最大の恩恵を受けるのは、もしかしたらマイケル・ブルーム バーグ(ニューヨーク市長)かもしれない。経営者としての経験を全面に打ち出す資格が、申し分なくあるわけだし」とギャラガー氏。「一方でイラクが主要 テーマだったとしても、市長の立場では大したことは言えないし」

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市場の動きのが、早かったね。

金曜日, 1月 18, 2008

官僚の埋蔵金隠匿を容認する福田政権の杜撰な予算編成

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ダイヤモンド・オンライン

 昨年来の株式相場の急落が一向に収まらず、景況感が厳しく冷え込む中で、18日、春の通常国会が召集され、年末にまとまった政府原案を軸にした予 算審議が始まることになった。ここで問題なのは、政府・与党が、この政府原案で、巨額の“埋蔵金”、つまり特別会計に秘匿されている剰余金の存在を有耶無耶にしたまま、一段と景気の足を引っ張る予算を押し通そうとしていることである。いったい、どこまで“官製不況”を増幅するつもりなのか。福田康夫内閣に 速やかな再考を求めたい。

 まず、霞が関の官僚たちが全容を明かそうとせず、福田首相が行政の長としての使命を果さずに、その“隠蔽”を黙認している埋蔵金の実体を推測して みたい。前回のこのコラムでも触れたデータだが、手掛かりとなるのは、2005年4月の経済財政諮問会議(当時の議長は小泉純一郎元首相)に提出された 「各特別会計の改革案」である。この改革案には、主要な31の特別会計の資産・負債状況がどうなるか、2005年度、2009年度、2014年度の3時点 について「現状維持ケース」と「改革ケース」に分けて6つの試算が明記されている。

◇ 特別会計の事業終了時には埋蔵金68兆円が見込まれる

 この中で、すでに完了した2005年度(現状維持ケース)について、資産から負債を引いた差額(剰余金)に着目。これを官僚たちが過去に溜め込ん できた埋蔵金と考えると、その金額が最も大きいのは、財務省所管の「財政融資資金特別会計」で、その剰余金額は実に26兆7291億円に達している。次い で、同じく財務省所管の「外国為替資金特別会計」に6兆2804億円、農林水産省の「国有林野事業特別会計」に5兆7120億円、厚生労働省所管の「労働 保険特別会計」に2兆5634億円、国土交通省所管の「空港整備特別会計」に2兆1400億円の剰余金が存在するという。これら5つの特別会計の合計だけ ですでに43兆4249億円の埋蔵金が溜まっている計算だ。

 そして、それぞれの特別会計で終了時点は異なるが、将来、事業を終了する際に、それぞれの特別会計が巨額の資産・負債差額を生むと見込まれてい る。この5つの特別会計でみると、その差額は、「財政融資資金特別会計」が2037年度に53兆4045億円、「外国為替資金特別会計」が2005年度に 4兆2803億円、「国有林野事業特別会計」が2006年度に4兆4961億円、「労働保険特別会計」が2014年度に4兆1523億円、「空港整備特別 会計」が2012年度に2兆3077億円といった具合である。これらを単純合計すると、実に68兆6409億円の埋蔵金が発生すると見込まれている計算だ。

◇ 政府原案の埋蔵金取崩額はたった10兆円足らず

 さて、そこで最も問題なのは、こうした43兆円とか68兆円といった規模の埋蔵金の蓄積や発生が2005年4月の段階で見込まれていたにもかかわらず、その実体の把握・公表がまったく行われないまま、今回も昨年末の政府原案が作成されてしまったことである。

 もちろん2005年度末段階の剰余金は、それぞれの特別会計が抱える様々なリスクを勘案すれば、直ちに全額を一般会計に戻してよいものとは言えま い。しかし、これほど巨額の剰余金をそっくりそのまま残しておく必要があるはずもない。むしろ、一般会計に比べて監視の眼が行き届かない特別会計に、これ ほどの剰余金があるとすれば、壮大な無駄遣いの温床となっても不思議はない。

 ちなみに、今通常国会で審議される2008年度予算の一般会計の歳入歳出規模は、83兆0613億円。第2の予算である特別会計で、43兆円とか68兆円といった埋蔵金が蓄積・発生しているならば、これを一般会計に戻すだけで、どれほど財政再建が進むかわからない。

 実は、今回の政府原案では、あの巨額の剰余金を抱える「財政投融資特別会計」から9兆8000億円の準備金を取り崩し、国債の償還に充当して国債 発行残高を圧縮することになっている。しかし、その金額はこの特別会計が2005年度末にかかえていたはずの剰余金(26兆7291億円)の4割にも満た ない。果たして、これで取崩額として妥当なのか。なぜ、他の特別会計からは一般会計への繰り入れをしないのか、まったくアカウンタビリティ(説明責任)が 果されていない。

◇ 埋蔵金を使えば消費税増税も不要

 補足しておくと、新規国債の発行額だが、過去3年間についてみると、2005年度に2兆2000億円、2006年度に4兆4000億円、そして 2007年度に4兆6000億円の削減を実現してきた。ところが、2008年度予算では、その削減額がわずか1000億円に縮小してしまった。

 さらに言えば、政府・与党は、今夏にも総選挙を終わらせたうえで、来年度に消費税を引き上げる構えを見せてきた。具体的には、政府は2009年度 に、基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げる方針を決定済みだ。そして、その財源として有力なのが消費税の税率引き上げである。政府は、現行5%の 消費税率を1%程度引き上げて、必要な財源の2兆3000億円あまりを補う腹とされている。だが、溜め込まれた巨額の埋蔵金を取り崩せるのならば、こうし た増税は必要が無いことになる。

 また、埋蔵金を有効活用することによって余裕が出てくるとすれば、企業の国際競争力に直結する課題とされながら、財源不足から先送りされてきた法 人税の引き下げ余地も出てくる。この問題では、日本経団連の御手洗冨士夫会長がかねて「現在の40%(程度の法人税実効税率)を30%に引き下げるべき だ」と要求してきた。実際に、ドイツや英国など欧州諸国で現在、法人税の28~29%程度への引き下げ競争も起きており、大きな懸案とされていた。が、や はり、歳入不足に陥ることが懸念されて、手付かずだったのである。

 ここで埋蔵金問題に対する姿勢が甘いという点で、政府だけでなく、 野党・民主党にも苦言を呈しておきたい。同党は16日の党大会で、今国会を「ガソリン値下げ国会」と名付けて、近く期限を迎えるガソリン税の上乗せ暫定税 率の延長を阻止することに全力をあげる構えを見せている。1リットルあたり155円前後に上昇してきたレギュラーガソリンを25円程度引き下げる効果があ るからだ。だが、道路特定財源全体としてみれば、この暫定税率の延長阻止は、国・地方をあわせて2兆6000億円程度の減税措置に過ぎない。

 ガソリン値下げ要求は、政権交代を目指す小沢一郎代表の肝煎りの戦略と言い、筆者は、そのことをかかげること自体にあえて異を唱える気はない。しかし、規模・効果から見て、もっと重要なのは埋蔵金論議であり、これを避けてよいとも思えない。

◇ 支持率下落を食い止めるには埋蔵金は避けて通れない課題

 昨年、日経平均株価が11%下落するなど、世界の主要市場で唯一2桁マイナスの“独り負け”市場となった東京株式市場。この東京市場では、今年に 入ってからも、日経平均株価がわずか8日間で昨年末より1800円以上も下げる急落が続いている。長年、低成長を放置してきた日本政府に対する市場の不信 感は非常に強いと言わざるを得ない。

 その一方、懸案の補給支援特措法が可決・成立したにもかかわらず、年初からの各種の世論調査における福田内閣の支持率が下がり、逆に、不支持率が 上がる傾向がどんどん強まっている。この傾向にも、通常国会に向けて、福田政権の経済運営手腕への不信感を強める大衆意識が見て取れるのが実情だ。

 まず、有耶無耶になりつつある埋蔵金論議にメスを入れ、個人消費、企業の設備投資、輸出と並ぶ4大経済主体の1つである政府部門の予算を正常化することが経済運営で避けて通れない大きな課題となっている。

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なめられっぱなし....

木曜日, 1月 17, 2008

ねじれ異常国会閉会で思う、福田長期政権の予感 【週刊・上杉隆】

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ダイヤモンド・オンライン

 今週(1月15日)、第165回国会が閉会した。

 振り返れば、なんと、まぁ、騒々しい臨時国会であったことだろうか。福田首相自身も、一昨日(火曜日)の記者会見で、その異常性について言及している。冒頭から、騒動続きの国会であったことは確かだ。

 昨年9月12日、取材を通じてある程度の予測はついていたものの、安倍前首相のあの突然の辞任には、筆者も驚きを禁じえなかった。『官邸崩壊』は免れないとは思っていたもの、新テロ特措法の成立を宣言した所信表明演説の直後の辞任など、いったい誰が想像できただろうか。

 すでに、遠い過去の話のようになっているが、じつは、あの前首相の「辞任劇」は、今回の臨時国会の中で起きた出来事だ。忘れそうになるのは、それほど、この国会がその後もドタバタ続きだったからであろう。

 臨時国会の終了によって、福田政権はとりあえず一つ目の関門を抜けたようだ。今後の政局を分析する上でも、この「未常識の世界」(中川秀直元幹事長)は重要だ。最初にこの越年国会を軽く振り返ってみる。

◇ 新テロ特措法のための国会

 辞任直後の自民党総裁選では、本命の麻生太郎候補が、「麻生クーデター」によって消えた。実際は、8派閥の談合による福田支持が麻生支持を上回っただけなのだが、陳腐な「陰謀論」が政治闘争に花を添えた。

 福田政権の誕生は、自民党の延命措置であったが、いざ国会が再会すると、やはり7月の参院選敗北の後遺症が大きく響く。

 参議院で野党が過半数を占めるという「ねじれ現象」によって、審議は事実上ストップした。福田政権は、11月までの法案通過がゼロという異常事態を余儀なくされる。

 その状況を打破するため、「福田=小沢」による党首会談が開かれた。しかし、唐突な「大連立」構想が持ち上がったため、与野党の関係はかえって膠 着化した。会談自体が否定されたうえに、小沢代表の辞任表明などの「茶番」もあり、「大連立」構想が陽の目をみることはなかった。

 窮した福田内閣は、再々延長による「越年国会」を決断、結局、憲法59条に基づく衆議院の3分の2による再議決を経て、懸案の新テロ特措法を成立させたのだ。

 このようにこの臨時国会は、まさしく新テロ特措法のための国会だったといっても過言ではないだろう。だが、もちろんそればかりではなく、他にも成果はあった。

◇ 小泉・安倍とは異質の「自ら旗を挙げない」政治手法

「薬害C型肝炎救済法」は、計26本通過した法律の中でも特記すべきものだ。12月25日に「議員立法」での成立を指示してから、わずか2週間での法制化は、福田首相が世論の動向を意識したからだといわれる。

 実際、他の通過法案も、たぶんに世論の動向に影響を受けた痕跡がうかがえる。

 たとえば、「振り込め詐欺救済法案」では、高齢者など裁判に訴える余裕のない被害者を速やかに救済するため、預金などを補償させる仕組みを創った。もちろん、多発するこの種の事件を反映して成立させた法案だ。

「改正温泉法」、「改正銃刀法」も、それぞれ、東京・渋谷の温泉施設での爆発事故、長崎・佐世保などでの銃乱射事件を意識して、成立を急いだ。

 さらに、国会議員の政治団体への原則1円以上の領収証公開を義務付けた「改正政治資金規正法」や、永住帰国した中国残留邦人への基礎年金の満額支給などを決めた「改正中国残留邦人支援法」は、薬害肝炎と同じく、世論に押されて成立したものだ。

 このように、前政権のKYぶりを「他山の石」としたのか、福田政権は、あくまで世論の動向を見極めながら、低姿勢の政権運営を選択しているように思われる。

 いわば、小泉=安倍政権が、「自ら旗を立てて、参集した賛同者とともに政治を行なう手法」であるとするならば、福田首相は「周囲の賛同者にそれぞれ旗を揚げさせて、その中から最善のものを選んで政権運営を行う手法」といった違いだろうか。

 こうして傾向は、福田首相の目指すものを見極めるうえで取材の格好の指針となる。

◇ マスコミは内閣改造断念と報じたが…

 たとえば、昨年末の訪中以来、各メディアが報じていた「年明けの内閣改造」も、福田首相のそうした政治手法を考えれば、そもそもが「誤報」だった可能性が高い。

 福田首相は、中国での内政懇(外遊中の首相が同行記者団に内政について懇談するもの)で、「内閣改造については白紙で、年明けにするかしないか、考える」としか語っていない。

 臨時国会閉会直後の17日には自民党大会が控え、18日には通常国会が始まる。さらに、本予算や日切れ法案(租税特別措置法改正案など)を抱えて 政治日程に余裕はない。そうした状況で、内閣改造などありえるだろうか。状況を十分見極めてからでしか決断しない福田首相が、支持率をさらに悪化させる可 能性のある内閣改造という賭けに出ることはあるのだろうか。

 筆者はきわめて懐疑的であった。じつは、訪中前、福田は閣僚の一人にこう語っている。

「内閣改造をすると、またしてもマスコミが『事務所費用だ』『身体検査だ』と書きます。そうすると、政権は無用な混乱をきたします。ここは、身綺麗な皆さんに、是非とも夏のサミットまで辛抱していただきたい」

 こうして筆者は年末に、「内閣改造はサミット後」という記事を『週刊文春』に寄せた。果たして、年明けの内閣改造はなかった。たまたま当たった結果を誇っているわけではない。福田首相の性格を考えれば、この時期の改造を見送るのは当然の帰結であったのだ。

 だが、各メディアは「福田首相 内閣改造を断念」と報じた。そもそも考えていないことを「断念」とされるのだから、首相もたまったものではないだ ろう。だからこそ、年頭の記者会見で、福田首相は「勝手にマスコミが(内閣改造に意欲と)書いただけです」とわざわざ苦言を呈したのだ。

「少なくとも、内閣改造や総選挙ということを、福田総理が考えたということはないと思います」

 昨日、福田首相の最側近で、毎日のように携帯電話で連絡を取り合っている衛藤征士郎衆議院議員も、筆者にこう述べた。

 じつは、内閣改造についてのメディアの「誤報」の例をあえて述べたのには理由がある。

 なぜなら、いま各マスコミはまたしても、今年中の「解散・総選挙は避けられない」といった報道を盛んに流しているからだ。

 本当にそうだろうか。福田首相の性格と、臨時国会での政権運営の方針を見ずして、そう語り、再び同じ過ちを繰り返そうとしている気がしてならない。

 あす(金曜日)から始まる通常国会の最大の関心事は、解散・総選挙の是非と「日切れ法案」等の成立の可否となっている。

 ねじれ国会によって、道路特定財源の暫定税率維持のための租税特別措置法改正は、年度内の日切れまでの成立は不可能だというのが大方のメディアの見方だ。その上で、追い詰められた福田首相は、解散を余儀なくされるといったストーリーを作っている。

 だが、筆者は、自ら旗を掲げない福田首相が、果断な決断を要する解散総選挙に踏み込むとはどうしても思えない。

◇ 福田首相は長期政権を視野に入れている?

 伊吹文明幹事長は、火曜日の記者会見で、通常国会の早い段階で予算関連法案を、本予算と同時に衆議院に提出する方針を明言している。ということ は、再び憲法59条を使って60日ルールに基づく3分の2議決による年度内成立が可能となるということだ。本予算は言うまでもなく、衆議院に先議権があ り、30日ルールが適用される。そしてこの難局を乗り切れば、当面、福田政権への大きな障害は消える。

 その場合、7月の洞爺湖サミットを控える福田首相が、衆議院の解散に打って出る可能性は極めて低いだろう。父・福田赳夫首相は東京サミットを決め たものの、「第2次角福戦争」に敗れて東京サミットにOBとしてしか出席できなかった。外交好きの福田首相が、国際会議の議長を目前で手放したくないとい う理由の他にも、こうした福田家の因縁が政治決断を左右させるかもしれない。

 付け加えるならば、通常国会の終盤の5月末には、第4回アフリカ開発会議が横浜で開かれる。火曜日の記者会見で、福田首相はその会議の成功にも並々ならぬ意欲を示している。

 このように、臨時国会を丁寧に振り返り、政権の政治手法を検証すれば、福田首相の慎重な方針が、通常国会で突然変わることはないと思われる。

 前出の衛藤議員は、約2年前に福田首相が彼に述べた次の言葉を教えてくれた。

「首相は、4年間できないような人ならば、ならないほうがいいでしょう。1年間全力投球なんていう人はだめですね。政策は予算を1回組めば済むも のではなく、3回、4回と予算を組んで初めて実行できるものです。首相になったら、予算を通し、きちんと執行されるかも監視しなければならない。それに付 随するさまざまな法律も通さなければならない。そうすれば、4年なんてあっという間です」

 メディアの報道とは違って、案外、福田首相は、すでに長期政権を視野に入れているのかもしれない。

」

残念ながら....