県立沼宮内病院など6県立病院・地域診療センターで入院ベッドがなくなる無床診療所化を柱にした県医療局の新経営計画案が、地元自治体や住民の反 発を招いている。県は全体で病床396床を削減する計画だが、医療サービスの低下を懸念する声は強い。一方で慢性的な医師不足や病院間の業務量の偏在、約 138億円の累積赤字(07年度末現在)を生み出すコスト高……と、地域医療を取り巻く環境は厳しい。一元的なサービスカットしか道は残されていないのだ ろうか。「県下にあまねく医療を」と掲げる県立病院の理念と経営のはざまで揺れる住民や現場の医師らの声を伝える。【山口圭一】
◇がん対策20年「水の泡」 検診で医療費抑制--沼宮内病院
岩手町は、町民を対象に大腸がんや胃がんの無料検診を実施、早期発見や医療費削減で成果を収める。その中核を担うのが、県立沼宮内病院だ。今回の突然の無 床化案に、厚生労働省がん対策推進協議会委員でもある町健康福祉課の仁昌寺幸子課長は「長年の取り組みが水の泡になる。国や県のがん対策にも反している」 と憤る。
計画案によると、同病院は05年度68・2%、06年度55・9%、07年度48・3%と、3年連続で病床利用率が70%を下回り、総務省の「公立病院改革ガイドライン」の基準に達しなかったとされる。そのため、計画案では現在60床ある病床が10年に無床化される。
85年の町の循環器系がん検診受診率は、県平均50・5%に対して28・1%。町はてこ入れしようと87年4月、沼宮内病院と町内の開業医で構成する検診 推進委員会を設置、89年には、がん検診の無料化を始めた。90年には全国に先駆けて大腸がんの集団検診を開始。06年度の受診率は県平均25・0%に対 し、町は70・7%と大幅に上回った。
高い1次検診受診率を生かすため、町は病院と連携。町の保健師らが、2次検査が必要な町民に精密検 診を受けるよう個別に促す。05年度には対象者のうち、精密検査を受けた割合が胃がんで90・3%と県平均83・5%を超えた。この結果、最多の03年度 は31人、07年度も11人の早期がん患者を発見した。
こうした取り組みは医療費削減にもつながった。町の03年度調査によると、患者1 人あたりの年間医療費はポリープ段階だと32万円にとどまるが、早期がんで127万円、進行がんだと278万円にも膨らむ。早期発見によって、00年5月 は2137万円だった町のがん関連医療費は、07年5月には1300万円まで減少したという。
県医療局は「がん検診は日帰りでも可能だ」と説明するが、仁昌寺課長は「早期のポリープこそ、腸壁や胃壁を取って検査するため、数日の入院が必要だ」と反論。「病床稼働率70%以下という基準だけでなく、果たしている役割を見てほしい」と訴える。
◇九戸は夜間・休日「無医村」
開業医が不在の九戸村。現在19床ある九戸地域診療センターは、計画案が実施されると来年度には無床化する。それに伴って夜間医師が不在になると、「『午 後5時』以降は無医村になる」(岩部茂村長)と危機感を示す。過疎化を食い止めようと、村は今年9月、県内で初めて中学生までの医療費を無料化し、従来の 小学生から対象を拡大したばかりだった。
同村の会社員、中村幸男さん(57)の長男夫婦と孫3人は今春、小学校の統廃合もあって滝沢村に引っ越した。中村さんはつぶやいた。「子供を育てるには心配なのだろう。この村は、暮らすのがどんどん大変になっていく」=つづく
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つづきもんらしいから、ちゃんと追いたいかな....。
つづきもんらしいから、ちゃんと追いたいかな....。
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