水曜日, 9月 26, 2007

変わらなければ日本は取り残されると福田氏は

フィナンシャル・タイムズ

(フィナンシャル・タイムズ 2007年9月24日初出 翻訳gooニュース) FT東京支局長デビッド・ピリング

福田康夫氏が自民党総裁選に出馬し、自民党を苦境から救いだす希望の星として浮上したとき、福田氏は出馬について「貧乏くじかもしれないよ」と記者にコメ ントしていた。確かに福田氏が率いることになったのは、参議院の支配を失った自民党だ。日本では、自由主義的な市場改革の動きに取り残されたとされる地域 や人たちが大勢いて、その人たちが夏の選挙で、自民党に手痛いしっぺ返しをしたばかりなのだ。

過去5年にわたる経済成長がいずれは国民一人ひとりの生活向上につながると、そういう希望を自民党が有権者に与えることができなければ、自民党は次の総選 挙で本当に政権を失いかねない。まさにそうした危機的状況にあると多くの政治評論家は見ている。そして、衆院選は遅くても2009年には開かなくてはなら ないのだ。

第2次世界大戦以降で最長期にわたる持続的な経済成長の最中にあっても、多くの日本人はその恩恵を実感できずにいる。給料はほとんど上がらないのに、いく つかの市町村では失業率が全国平均を大きく上回ったまま動かない。小泉政権で導入された地方交付税の見直しなどによって、いくつかの地方自治体は財政破綻 の危機に直面。なかでも北海道の夕張市はすでに破綻してしまった。

こうした一連のことが重なって自民党は今、1993年に一時的かつ一度だけ政権を失って以来の、最悪の事態にさらされている。にもかかわらず福田氏も、そ して対立候補として総裁選に出馬した麻生太郎氏も、有権者に対して大きなネックとなっているこの小泉改革を、後戻りさせようとは決して主張しなかったの だ。

福田氏は麻生氏と同様、社会格差の是正に取り組み、自由市場の行き過ぎを抑制する必要があると主張した。しかし今の政策の基本路線について後戻りはないと、この点について福田氏は明快だった。

総裁選の最中にたびたび開かれた討論会で福田氏は、「改革を推進しなければならない」と言った。さらに福田氏はこうも言った。

「世界は変わっている。改革をしないと、日本は国際社会から取り残される」

小泉改革以前に戻ろうと掲げる総裁候補を自民党が出さなかったことからしても、反・改革の動きに本当の意味での政治的な勢いはないのだというのが分かる。

改革の動きは小泉改革とは呼ばれるが、小泉氏が一人で始めたものではない。そしてこの改革の動きにはいくつかのポイントとなる課題がある。(1)財政健全 化 (2)公共事業や税収移転の形で人口の少ない農村部に与えてきた補助金を減らす (3)可能な限り、民間部門の役割を拡大する——とういものだ。

福田氏は9月半ばに日本外国特派員協会で、「日本社会は転換期にある。高齢化が進み、社会構造が変わりつつある。労働生産性を上げて、一連の課題に対応していかなければならない」と話している。

リーマンブラザーズ証券のエコノミスト白石洋氏はこれに対して、たとえ政治家がそう望んだとしても、国の財布を緩めるのは難しいだろうと話す。

「財務省の厳しい縛りの下では、財政政策が大きく変わるのは難しい。(今や日本のGDPの1.5倍に達する)公的債務の規模を思えば、ばらまき政治に戻るのは、かなり考えにくい」

2011年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標については、そのまま堅持するだろうと多くのアナリストは見ている。

福田首相は確かに、国民が生活する上での困難・困窮を和らげるため、いくつかの施策を掲げている。たとえば、高齢者の医療費自己負担を1割に凍結する案を 検討するとしている。小泉政権で決まった現行案では、来年4月から70-74歳の医療費の窓口負担は現在の1割から2割に引き上げられることになってい る。

さらに小泉政権下では、国から地方へ税源を移譲し、地方自治体が独自に税収を増やすことで、独自で自主的な行政サービスをまかなうべきだという税制改革が進められたが、福田氏の下ではこれも、より穏やかで漸進的な変化に変えようと議論されている。

とは言うものの財務省も、そして小泉政権の内閣官房長官として小泉改革の諸政策に関係の深い福田氏も、1990年代に顕著だったばらまき財政に立ち返るわけもないだろう。

当時は、ともかくひたすら財政支出を重ねることで停滞するデフレ経済を回復させようというのが、政府の方針だった。それに対して現時点では、自民党が政権 を維持できる程度に、有権者の支持を集められる程度に、要所要所で支出を少しばかり調整しようというのが、政府のねらいだ。しかしそのために使える財源は 今後も、厳しく制約されたままだろう。



日本の内閣総理大臣って、世襲制だったっけ?