金曜日, 3月 21, 2008

求む、日銀総裁

フィナンシャル・タイムズ

(フィナンシャル・タイムズ 2008年3月19日初出 翻訳gooニュース)

国際的な金融危機というささやかな問題に対応する必要があるのだから、日本銀行の総裁探しは急務だと思われるかもしれない。しかし野党・民主党が『この人 は強大な財務省に近すぎる』とみなす候補に次々と反対するのは、正しいことだ。市場は脆弱だし、妥協可能な候補を早急に見つける必要があるが、しかし理想 の候補は「マクロエコノミスト」として優れた実績をもつアウトサイダーであるべきだ。

日本の福田康夫首相は、同じことをただ繰り返しても違う結果が出ると考えているようだ。野党が、東大法学部卒で財務省(旧大蔵省)キャリア出身の武藤敏郎 前副総裁に否決した後、福田総理はやはり東大法学部卒で財務省(旧大蔵省)キャリア出身の田波耕治国際協力銀行総裁を候補提示した。そして民主党はやは り、田波氏も否決したのだ。

武藤氏をどういう政治的理由から候補に提示したのかは、不可解だ。野党は参議院をコントロールしているのだから、わざわざ野党にケンカをふっかけにいくの はリスクが高い。どうしても対決するなら、国民の支持が広く得られている問題についてのみ挑戦するべきだ。にもかかわらず、わざわざケンカを仕掛けていっ て、負けて、そしてまた同じケンカをふっかけるというのは、荒唐無稽だ。ただでさえ弱い福田政権は、これでますます弱体化したように見える。

福田氏の選択はほかでもない、お役所的な伝統に従うという理屈に動かされていたようだ。一定の役職レベルで財務省を退官する官僚は、日本銀行などの組織で ポストを得るのがこれまでの常だったからだ。確かに、中央銀行向けの人材は財務省で見つけやすいだろうし、その逆もまた真理だろう。しかし、財務官僚を半 ば公式に日銀へ天下りさせるという仕組みは、金融政策の独立性を損なってしまう。

このため、もっと強力な日銀総裁が必要だと民主党が力説するのは正しいことだ。それに、民主党が適任だと名前を挙げる、黒田東彦・アジア開発銀行 (ADB)総裁や、(武藤・田波両氏よりはやや若い)渡辺博史前財務官にしても、「非・主流派」というほどではない。総裁空席の穴を急ぎ埋めなくてはなら ないという緊急性を思えば、どちらの候補もあり得るだろう。

しかしもっとラディカルな選択だって、あり得る。中央銀行を取り仕切るという仕事は、ほかにはない独特のものだ。パーフェクトな候補とは、素晴らしいマク ロエコノミストであって、市場心理を読み取れる心理学者で、公の場できちんと話せる手堅いパブリック・スピーカー。かつ国際的な外交官で、優れた最高経営 責任者(CEO)の資質も欲しい。外交官やCEOとしての能力をもつエコノミストを見つけるのは難しいが、一方で、スタッフの言いなりになるのではなくス タッフを問いただすことができるだけの深い経済の経験をもつ官僚を見つけるのも大変なことだ。オーソドックスなものの見方に挑戦できるだけの総裁が得られ れば、日銀にとって大きなメリットとなる。

総裁不在でも、あまり支障はないという意見もあるだろう。総裁がいなくても日銀は機能するし、近く金利を変える可能性も低いし、そもそも多くの重要な政策 決定は財務省が行っているのだから。しかし毎日のように新しい経済危機が出来する今、市場の信頼性はもろく、日本経済の展望も陰りつつある今、トップ不在 は間違ったメッセージを発してしまう。政府と民主党は急ぎ、総裁候補で合意すべきだ。その過程で、日本のなれ合い的な公職人事システムが一新されるのな ら、それはなお良し、だ。



結果庶民レベルでものを言うと、具体的に国民が困らんのなら、どーでもイイって話に、落ちていってしまう悲しさはあるなぁ....。

金曜日, 3月 14, 2008

コーヒー店戦争に火をつけたマック低価格路線の勝算

ダイヤモンド・オンライン

280円のスターバックス「本日のコーヒー」(左)と、100円のマクドナルド「プレミアムローストコーヒー」(右)。低価格で本格的なプレミアムローストコーヒーに対して、コーヒー専門ショップはこれからどのように対抗していくのだろうか。
 2008年2月15日、マクドナルドは100円で提供していたオリジナルのブレンドコーヒーをリニューアル。「プレミアムローストコーヒー」として全国展開を開始した。

  このプレミアムローストコーヒーが巷で大人気だ。価格はSサイズで100円、Mサイズで190円と低価格ながらも、コーヒー豆には高級品種のアラビカ種の みを使用。また、全店に新規開発したコーヒーマシンを導入。全国のマクドナルドで同じ味のコーヒーが愉しめるようになった。

 リニューア ルに際して、カップのデザインが変更されたが、それだけではなくカップのふたの部分も改良されている。飲み口を開閉式にし、下唇があたる部分に凹凸をつけ ている。これにより、飲んでいるときにコーヒーが飲み口から垂れてしまうことを防止しているのだ。ほんの些細なことだが、細かい心遣いにも「プレミアム」 な印象を受ける。

 日本に先駆けて発売したアメリカでは、コーヒー専門ショップのスターバックスが全米のほぼ全店を一時閉鎖し研修を開くといった事態に発展。このプレミアムローストコーヒーに対して、かなりの危機感を抱いているようだ。因みに、日本ではこのような事態にはなっていない。

 筆者の周りの人たちに評判を訊いてみたところ、「スターバックスのほうがコーヒーとしてはちゃんとしているが、100円であの味なら飲んでもいい」という意見が多い。

 ただし、コーヒー好きと自称する人たちのなかには、「プレミアムローストコーヒーは100円としてはがんばっているが、コーヒーとしてはスターバックスやタリーズコーヒーにはかなわない」という意見も少なからずある。

そこで筆者は、マクドナルド、スターバックス、タリーズコーヒー、ドトールのコーヒーを飲み比べてみた――。率直な感想は「プレミアムローストコーヒー恐るべし」だ。

◇ 価格差では圧倒的優位のマクドナルド

 まず価格だが、「本日のコーヒー」はスターバックスが280円、タリーズコーヒーが290円、ドトールは最近値上げがありブレンドコーヒーは 200円だ。プレミアムローストコーヒーは前述のとおり100円。個人的な意見でいえば、価格帯がやや拮抗しているドトールに比べると、プレミアムロース トコーヒーのほうが飲みやすい。

 スターバックスとタリーズコーヒーに関しては、価格が約3倍も違うだけあって、その差は歴然。コーヒーとしての深みがまったく違う。

 しかし、ヘビーなコーヒー好きでなければ、約3倍の価格の差に価値を見い出せるかどうかは甚だ疑問。朝の忙しいときや食後に「とりあえずコー ヒー」が飲みたいという、ライトなコーヒー好きにとっては、手軽に飲めるプレミアムローストコーヒーのほうに魅力を感じる人も多いだろう。

 マクドナルドの狙いは、まさにそこにあるように思える。朝およびランチタイムは、ビジネスマンにとって忙しい時間帯だ。ゆっくりコーヒーを飲んで いる余裕はない人も多い。100円であれば、支払いも簡単な上、量がやや少なめな点も、忙しい人にとっては好都合。まさに「ファストフード」のコーヒーな のだ。

◇ 経営戦略の中に組み込まれた低価格路線の選択

 もうひとつ、マクドナルドがスターバックスをはじめとしたコーヒーショップと異なる点がある。それは「スナックタイム」の導入だ。

 これは、午後2時から午後11時まで、100円メニューとドリンクSサイズの組み合わせを150円という価格で提供するというタイムサービス。ハ ンバーガーとコーヒー、アップルパイとコーヒーといった組み合わせが、たった150円で愉しめるのだから、子連れの主婦や打ち合わせのビジネスマンなどに 人気があるのも頷ける。

 このように、マクドナルドは戦略的に低価格路線を展開することで、プレミアムローストコーヒーの認知度をアップ。通常「プレミアム」と名付けられ た商品は、ほかの商品よりも「値段は高いが高品質」という差別化を行ってきた。しかしマクドナルドは「プレミアムなのに低価格」という逆転の発想を採用。 これが一般消費者のハートを掴んだと推測できる。

 本格的なコーヒーを提供するコーヒーショップ市場に、100円コーヒーというコンセプトで殴り込みをかけてきたマクドナルド。この勢力拡大は予想 以上に早い。これに対抗するためには、マクドナルド以上にインパクトのある商品投入が急務。「おいしい」だけでは、もはやコーヒーショップはマクドナルド に勝てない状況にあるといってもよい。

 原油価格の高騰などにより、さまざまな商品が値上げされている昨今、コーヒーショップも値上げ傾向にある。しかし、マクドナルドだけを見れば、企業努力により低価格を維持したまま品質を上げることも不可能ではないということになる。

 このプレミアムローストコーヒーの登場は、単純にコーヒーがおいしくなったということだけではなく、「値上げ」以外の何かでこの価格高騰の時代を 乗り切ろうという、マクドナルドの企業姿勢をも感じさせられる商品。突如巻き起こったコーヒー戦争に、スターバックスをはじめとしたコーヒーショップ連合軍は、どのような次の一手を打ってくるのか? ――興味津々だ。

(三浦 一紀)


やっぱりデフレ不況って終わってないんだよね。

基礎年金「全額税方式」の前に、厚生年金の見直しこそ不可欠だ

ダイヤモンド・オンライン

世界に類のない高齢化が進行する我が国において、年金制度への国民の不信感・不安感は計り知れない。年金制度の在り方の 論議の中で、このところ急速に浮上しているのが「全額税方式」だ。今回から2回にわたって、この「全額税方式」に潜む問題点について駒村康平・慶應義塾大 学経済学部教授に聞く。

 年金制度への不信感は深く、広く蔓延している。2004年年金改正も、国民の不安を取り除くことは全くできなかった。では、日本の年金制度はどうあるべきなのか? 

 このところ浮上してきたのが、基礎年金(注1)を全額税負担にしようという「全額税方式」である。日本経済新聞の年金制度改革研究会が「基礎 年金を社会保険方式から税方式に移行、財源すべてを消費税で賄うこととすべき」(注2)とこれを提唱し、麻生太郎・自由民主党前幹事長も「消費税を 10%にして基礎年金を全額税負担にしよう」(中央公論3月号、注3)と訴える。

 この全額税方式は本当に、不信感を取り払う切り札となりうるのか? 内外の社会保障政策に詳しく、『年金はどうなる』(岩波書店)の著書もある駒村康平・慶應義塾大学経済学部教授に聞いた。氏の答えは「明らかにノー」である。

――このところ、「基礎年金を全額税方式とすべし」との提言が相次いでいます。

駒村:税方式が国民に魅力的に映るのとすれば、たぶん2つポイントがある。1つは現在の年金システムが「空洞化 し、すでに破綻しているのではないか」という疑念が浸透している点。もう1つは「これからの高齢化社会の負担増には、消費税で対応するのが望ましい」とい う見方がある程度、浸透している点にあると思う。

 まず、年金の空洞化について。麻生氏は中央公論の論文で「年金不信で国民年金保険料の納付率は6割程度にとどまっている。国民皆年金という謳い文句は、もはや死語だ」としている。

 確かに国民年金(第1号被保険者)の納付率は67.1%(2007年度)にとどまり、免除されている人の分(17.7%)を差し引くと、5割を切る。

 しかし、1~3号まである基礎年金(国民年金)のうち、払っていないのは1号の話。2号や3号はほとんど皆が払っている。サラリーマンのグループ は、ちゃんと払っている。公的年金の全加入者7000万人を分母として考えれば、未納者というのは、どんなに多く見積もって計算しても10%前後となる。 厚生労働省の定義にそって厳密に言えば5%だ。

 要は全体としてみれば9対1なのである。9割は払っていて、1割が払っていない状態を「破綻」と言うべきなのか。1割の人を助けるために、9割を犠牲にすべきなのか。まず、この点に異議を唱えたい。

――全額税方式が支持される第2のポイントは、消費税でした。

 消費税を、高齢化社会に対応する財源として位置づけるのは当然のことだろう。他の税を増税するよりはいい。給与課税のように、企業行動や個人の働 き方に影響を及ぼすようなこともない。日本の消費税率は他先進国に比べ極端に低いし、消費税をいずれ上げるという流れは必要だろうと思う。

 ただし、である。消費税財源を充てる優先順位の第1が「年金」で本当にいいのか、と問いたい。

――高齢化社会への本格突入で介護、医療にももっとお金がかかるようになる。社会保障全体に目を向ける必要があります。

 消費税を社会保障目的税と位置づけて、介護、医療、低所得者向けの対策、少子化対策などに分けて投入し、今壊れかけている社会保障制度の支えとするのはいい。優先すべきはこちらであって、基礎年金ではない。

 考えてみてほしい。全額税方式で、高齢者全員に満額の月額6万6000円を支給するということは、弁護士や開業医であろうと大企業OBであろうと税金を投入する、ということになる。

 生活が苦しい高齢者はいいだろう。だが、裕福な高齢者をも含めて、一律でお金をばらまく必要はないのではないか。そのぶん、医療や介護をカットしていいのか。ここが最大の問題だ。お金は限られている。消費税でもって基礎年金だけを守る必要はない。

後編では、既に基礎年金の「全額税方式」を導入している国での各国の年金制度と実際の制度運用の状況も、日本の年金制度 を検討するうえで重要なポイントとは何かにスポットをあてる。年金制度の議論を重ねる上で、基礎年金の制度改革の前に、まずは今後の厚生年金制度のあり方 こそ議論されることが望ましいと駒村康平・慶應義塾大学経済学部教授は語る。

――どうやって、全額税方式の新年金に移行していくかという問題もあります。

駒村:日経の研究会報告は「移行前に保険料を払っていた人には、支払期間に相当する受給権を旧制度に基づき確保」とし、麻生氏も「これまで支払った人の分はそれを記録し、それに応じた金額をプラスアルファ分として支給することで(公平性を)クリアすべき」としている。

 では、その上乗せぶんのお金をどこから持ってくるのか。そのお金がどこを叩いてもないから困っているのである。

 そもそも、基礎年金を社会保険方式から税方式に移行する際、消費税で賄うべき必要額は約19兆円とされているが、それは正しくない。よく勘違いさ れるけれども、19兆円というのは、今の基礎年金の平均値に受給者数をかけて出てきた金額。あくまで今の制度を維持するために必要な金額ということだ。

 満額支給の6万6000円を、65歳以上の人に無条件で払うとすると、実は23兆円くらいかかる。未納があって満額貰っていない人の分など、4兆 円もギャップがある。スタートラインのところで問題がある。これに現在の保険方式によってまかなわれていた障害基礎年金、遺族基礎年金のための財源も必要 である。アップする消費税は7%となる。

――上乗せして払うとなれば、さらにお金が必要になります。

駒村:40年間払った人に上乗せして払うとなれば、さらに十何兆円と必要になる。「サラリーマンの年金である厚生年金に150兆円の積立金がある。それを使えばいい」という考え方もあるが、この積立金は、高齢化がピークを迎える2040~50年に備えて取ってあるものだ。

 もし、基礎年金を救済するために厚生年金の積立金を使おうものなら、それこそ厚生年金が破綻してしまう。それはいくら何でも、許されないだろう。はなから厚生年金をぶち壊し、民営化したいのかと勘ぐりたくなる。

 現実的に考えると――税方式になったとしても、今まで払わなかった人は貰えない。払った人は税財源の年金がもらえる。となると、現在の基礎年金が 入れ替わるだけだから、とりあえず19兆円ですむ。ただし、今問題の無年金高齢者は救済出来ないことになる。それどころか、消費税負担増でさらに酷い目に 遭う――ということになる。基礎年金の全額税方式というのは、要はありえない話なのである。

――そもそも、全額税方式を採用している国はほとんどないですね。

駒村:高齢期と若年期の最低所得保証をやろう、という方向にヨーロッパのほとんどの国がなっている。これなら大いに賛成だ。

 世界の年金制度を見渡しても、1階部分で税方式の基礎年金を個人単位で支給し、さらに2階部分に厚生年金を乗せている国など、もうどこにもない。

 スウェーデンなどは、かつてこういった制度だったが、1999年に最低保証年金(編集部注4参照)に切り換えた。「みなさん年金保険に入ってくだ さい。しかし、それで足りない人は税で助けますよ」という制度にした。税財源を全員にばらまくのではなく、必要なところにピンポイントで投入するようにし ないと、制度を維持できないからだ。

 現在、世界の主な国の中で全額税方式の基礎年金を出しているところと言えば、ニュージーランド、オーストラリア、カナダなどがある。しかし、 ニュージーランドやオーストラリアには2階建て部分の年金はない。加えて、高所得の高齢者は税方式の年金を返しなさい、ということになっている。カナダに は報酬比例年金はあるけれども、日本に比べて遥かに小さい。しかも、高所得、高年金の人は年金を返しなさいとなっている。

 高齢化社会の中で無茶なばらまきをやっている国は、世界のどこにもない。それを敢えてやるというならば、他の社会保障をカットすると宣言するに等しい

――年金制度改革が必要なのはもちろんです。現実可能な議論を進めていくためには、何を土台とすべきでしょうか。

駒村:年金制度について議論されるのは、もちろん、結構なことだ。だが、基礎年金の全額税方式はシンプルで、わかりやすい代わりに、夢物語となってしまっている。

 まずは、基礎年金ではなく、ほとんどの人をカバーしている厚生年金について、考えるべきだと思う。厚生年金を残すか、いかにして維持するかを議論し、その後に穴が開いてしまっている基礎年金をどうするかを考える。そういう手順を踏んでいけば、実りのある議論になる。

(1)他の先進国と同じように、年金制度を最低保証年金に切り換えるべきではないか、(2)高齢化社会において税財源を投入する優先順位をどうするか、の2つがポイントになると思う。

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣)

●編集部注

注1)
日本の公的年金制度は、2階建てで構成されている。その1階部分が基礎年金(国民年金)だ。自営業者(第1号被保 険者)、民間サラリーマン(第2号被保険者)、サラリーマンの配偶者(第3号被保険者)に共通する年金で、平均年金月額は5万8000円(満額支給の場合 は6万6000円、2006年度末)である。2階部分は厚生年金や公務員の共済年金。現役時代の報酬によって受取額が変わる報酬比例年金で、平均年金月額 は16万9000円である。

注2)
日本経済新聞社の年金制度改革研究会は1月、年金制度改革に関する報告をまとめた。少子高齢化の加速、保険料未納問題の深刻化によって制度維持が困難になりつつある状態を立て直すため、税方式への移行を求めた。その骨子は下記のとおりである。

・基礎年金の財源を保険料から全額消費税に置き換え
・税率の上げ幅は5%前後。置き換えで全体の負担に増減は生じない
・月額給付は満額で6万6000円
・国内居住10年程度を支給要件に
・移行期間は旧制度に基づく保険料負担を給付に反映
・年金課税を強め高所得者への給付抑制
・3.7兆円の企業負担軽減分は非正規労働者の厚生年金への加入拡大に

注3)
麻生太郎衆議院議員・自由民主党前幹事長は月刊中央公論3月号に「消費税を10%にして基礎年金を全額税負担にしよう~これが安心を 取り戻す麻生プランだ!」を寄稿。「国民に安心を与えるのが政治の責任。抜本改革しか、国民の信頼を取り戻す術はない」とし、(1)杜撰な加入記 録、(2)破綻している年金財政という2つの問題を解消するために、基礎年金の運営を全額税方式に改め、税負担の財源には消費税を増税して充当すべきだと 提案する。その骨子は下記のとおり。
・消費税を段階的に10%とし、約13兆円の財源ができる
・国民年金の保険料負担(月1万4000円程度)はなくなる
・サラリーマンは基礎年金保険料を支払わなくて済むようになる
・将来の無年金の解消も可能になる
・これまで保険料を支払ってきた人の分は記録し、それに応じた金額を プラスアルファ分として支給、公平性を担保する

注4)
スウェーデンは1999年に年金制度の大改革をおこない、1階部分・税財源による定額給付、2階部分・所得比例年 金となっていた公的年金を、所得比例年金のみの1階建てとし、一定年金以下の人には最低保証年金を用意した。負担と給付の関係を明確とするため、「個人勘 定」(支払った保険料の総額を個人単位の口座で管理する)とし、支払った金額に経済成長率にリンクした「見なし利回り」をつけ、個人の年金資産として蓄積 されていくこととした。年金全体の資産と負債のバランスが崩れると、見なし利回りが自動的に下げられ、債務の成長が鈍化する自動調整機能の仕組みも導入さ れた。



ちゃんと読んどかんと....。

木曜日, 3月 13, 2008

他人事で無責任な福田首相が“日本売り”を加速させる 【週刊・上杉隆】

ダイヤモンド・オンライン

 3月6日朝、いつものように首相官邸からメールマガジンが配信された。

 小泉時代に始まったこの試みは、メディア戦術上、ある程度の成功を収めている。2代の首相を経て、読者数は減少しているものの、直接国民にかけるという当初の目的は十分に達成している。

 しかし、時にその機能が逆効果になることもある。3月6日配信のメルマガこそ、まさしくその類であろう。

〈果実を分かち合う。福田康夫です〉

 こうした出だしで始まる当該回のメルマガは、次のように続く。

〈3 月を迎え春の訪れが感じられるようになりましたが、このところ食料品などの値上げのニュースが目立ちます。みそやしょうゆ、乳製品など、いずれも毎日の食 卓に欠かせないものばかりです。昨年来、パンや食用油から、ティッシュペーパーといったものまで、実にさまざまな食料品や日用品の値段があがっています。 スナック菓子の中には、袋の内容量が減ったものもあります(中略)。

 物価が上がっても、皆さんの給与がそれ以上に増えれば、問題はありません。しかしながら、働いている皆さんの給与の平均は、ここ9年間連続で横ばい、もしくは減少を続けており、家計の負担は重くなるばかりです〉

 ここまでは異論はない。国民生活の現実に即した記述である。この内容に関する限り、国家のリーダーとしての福田首相の認識に、安心感さえ覚える。

 しかし、これ以降が拙かった。首相として、驚くべき「方針」が綴られている。最初に読んだ時は自らの目を疑い、悪い冗談かとさえ思ったほどだ。

〈日 本経済全体を見ると、ここ数年、好調な輸出などに助けられて、成長を続けています。企業部門では、不良債権などバブルの後遺症もようやく解消し、実際は、 大企業を中心として、バブル期をも上回る、これまでで最高の利益を上げるまでになっています。これらは、さまざまな構造改革の成果であり、そうした改革の 痛みに耐えてがんばった国民皆さんの努力の賜物にほかなりません。

 私は、今こそ、こうした改革の果実が、給与として、国民に、家計に還元されるべきときがやってきていると思います。

 今まさに、「春闘」の季節。給与のあり方などについて労使の話し合いが行われています。

 企業にとっても、給与を増やすことによって消費が増えれば、経済全体が拡大し、より大きな利益を上げることにもつながります。企業と家計は車の両輪。こうした給与引き上げの必要性は、経済界も同じように考えておられるはずです。政府も、経済界のトップに要請しています〉

 日本は一体いつから、社会主義国家になったのだろう。どういった権限で、政府が民間企業の経営に「命令」を出せるのか。福田首相は何か大きな勘違いをしているのではないだろうか。

 確かに、景気が低迷し、消費が伸びない理由には、原油高などによる物価の高騰がある。福田首相が指摘する給与所得の伸び悩みがあるのもその通りだ。

 だが、その民間の対策について、内閣総理大臣が口を挟むのはどうか。あまりに僭越ではないか。

 そもそも、消費の購買欲を喚起したいのならば、政府が減税政策を打ち出し、事実上の「給与引き上げ」を行えばいいだけの話である。「果実を分かち 合う」のならば、政府が率先して、富を分配すればいい。国がやるべきことを棚上げしておいて、民間にそのしわ寄せを押し付ける「方針」など、政府の責任放 棄以外の何ものでもない。

◇ いつも他人事で無責任な福田首相

 思い返せば、福田首相はいつも他人事で、無責任だ。

 たとえば、「ギョーザ事件」発生直後のぶら下がり会見では次のように発言している。

「関係省庁が原因をよく調べた上で対応すると思いますよ。(略)まぁ、輸入食品といえども、十分注意するようにと言うしかないでしょ」

  また、イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故発生直後、記者から問われた感想を問われた福田首相はこう反応している。

「おー、そうだってね。大変だ」

 それにしても、なんという他人事だろう。国民の生命、健康を預かる内閣総理大臣のコメントとしてはあまりにひど過ぎる。ある意味、今回の「春闘賃上げ発言」も、首相にしてみれば、ごく自然な感覚なのかもしれない。

 だが、こうした無責任な発言こそが、結果として、日本経済を縮小させていることに、福田首相はそろそろ気づくべきではないだろうか。

◇ 福田首相こそ景気低迷の元凶だ

 世界同時株安の際も、日本政府の方針を問われた福田首相は「様子を見て判断します」と語り、世界を唖然とさせた。そうした無責任な発言により、海外投資家が逃げ、日本売りは加速し、株式市場の低迷を余儀なくされているのだ。まさしく『エコノミスト』の特集(JAPAIN: The world's second-biggest economy is still in a funk? and politics is the problem)の通り、それは畢竟、政治の責任なのである。

 ストラテジストの中には、4月にも株価が1万円割れを起こす、と警告している者もいる。

「果実を分かち合う」といいながら、自ら分配を拒否しているのは政府自身だ。そして、恥ずかしげもなく、そのメルマガで、無責任な「方針」を打ち出す福田首相こそ、景気低迷の元凶なのだ。