金曜日, 4月 18, 2008

労働力底上げになるか、ジョブ・カード制度がスタート


ダイヤモンド・オンライン 2008年4月17日(木)14:40
 「ジョブ・カード制度」というものをご存知だろうか。ジョプ・カードとは職業訓練の履歴などが記載されているカードで、交付により自身の職業能力が公的証明されるものである。
 日本では「新卒採用」という言葉が示すとおり、学校を卒業と同時に就職した会社でキャリアを形成していくのが一般的だ。「新卒採用」されずに非正社員でいると、能力、知識を向上させる機会に恵まれず、キャリアアップできない悪循環に入るケースもある。
 そこで出てきたのが「ジョブ・カード制度」。
  公的に認められた「ジョブ・プログラム」を受けることで、終了証にあたる職業能力証明書が取得できる。ジョブ・カードに終了証のほか、職務経歴、取得資格 などを記載し、求職活動に活用する仕組みになっている。対象はフリーター、子育て終了後の母親、母子家庭の主婦など、なかでもアルバイトやパートなどでの 勤務歴が長く、企業の職業訓練を受ける機会に恵まれなかった人達に向けた制度だといえる。
 そもそもは、政府の成長力底上げ戦略の一つで、「能力発揮社会の実現」がスローガンとして掲げられている。計画では、ジョブ・カード交付目標数を3年間で50万人、5年間で100万人程度としている。
  ジョブ・プログラムは官民一体となって進めていくところに特徴がある。企業側が受け入れ体制を整えなければ、ジョブ・プログラム制度は充分に機能しない。 2008年3月、先行プロジェクトとしてキヤノンがジョブ・プログラムを開始。現在、17名が技能、技術、事務職とそれぞれの職種に分かれ、職業訓練プロ グラムを受けている。期間中は毎月15万5000円もの賃金が支払われる。
 特筆すべきは、プログラム内容の充実だ。プログラム利用者は 配属された職場で仕事をこなすだけではない。座学によるコンピータの学習なども取り入れ、さらには正社員同様、メンターもついているという。ジョブ・カー ドが単なる紙ではなく、真の能力証明となるよう取り組んでいる姿勢が窺える。
 「少子高齢化が進む中、どのようにして労働力を確保していくかということは当社だけではなく、産業界全体の問題だと思っています。ジョブ・プログラムのような取り組みをしていくことで、労働力の底上げに貢献できれば、ということで始めました」(キヤノン広報)
 キヤノン以外では松下電器とそのグループ企業が4月から開始している。厚生労働省によると、「現在、実施しているのは2社のみです。が、企業からの問い合わせはあります」ということだ。
 まだ端緒についたばかりのジョブ・カード制度。賛同する企業数やジョブ・カードの認知度など、さまざまな要素によって成否が分かれる。3年間で50万人という目標は達成なるか。今後を見守っていきたい。
(江口 陽子)
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