木曜日, 1月 10, 2008

官邸官僚の前に潰えた独立行政法人改革のお粗末

ダイヤモンド・オンライン

 2007年12月に閣議決定された独立行政法人(独法)の整理合理化計画。現在102ある独法は86まで減るものの、その実態は、すべて同じ所管省庁内での統合にすぎない。福田内閣の一大テーマであった独法改革は骨抜きにされ、単なる数合わせに終わった。

 渡辺喜美行政改革担当相のひとり相撲となった「独立行政法人改革」は、年の瀬も迫った12月24日の整理合理化計画の閣議決定でようやく幕を引い た。結果は、官僚側の大勝利といってよい。マスコミの援護射撃のみを頼りにした渡辺行革相だったが、官邸を動かす内閣官房の「官邸官僚」の前になすすべは なかった。

 福田康夫内閣にとって今回の独法改革は、安倍晋三前内閣のいわば“置き土産”である。農林水産省所管の独法、緑資源機構の談合事件摘発、同事件へ の関与を疑われた松岡利勝農水相(当時、以下同)の自殺という安倍政権を直撃した激震のなかで、安倍首相は緑資源機構の廃止を決定。同時に独法全体の「ゼ ロベースからの抜本見直し」を佐田玄一郎行革担当相に命じたが、その佐田氏も架空の事務所費計上問題で辞任、後任に起用した渡辺氏に委ねたのである。

 渡辺行革相は、行革担当相就任直後から新人材バンク(官民人材交流センター)設立をめぐり霞が関の中央省庁と“戦闘状態”に入ったが、安倍首相、塩崎恭久官房長官などの「安倍チーム」のバックアップでなんとか乗り切った。

 しかし、このときの渡辺行革相に対する霞が関の抵抗は前例がないほど執拗だった。財務省が新人材バンク案に反対する冊子を公然と配布しただけでな く、経済産業省は行革担当相の事務局である内閣官房・行革推進本部事務局に出向していた審議官を異動させ、後任を出すのを拒否。また、財務、経産両省は行 革担当大臣室に出向させていた事務官を引き揚げるということまでしている。

 小泉純一郎内閣では、「官邸」に睨み殺しにされた霞が関だったが、安倍内閣ではほぼ完全に息を吹き返したのである。

◇ 渡辺行革相は蚊帳の外 官邸主導で改革骨抜き

 2007年7月の参院選での自民党惨敗から1ヵ月後、安倍首相の突然の辞意表明で政権は崩壊し、代わった福田内閣でも渡辺氏は行革担当相として留任。そして新人材バンクの次の一大テーマとして打ち上げたのが「独法整理」である。

 しかし、霞が関の全府省は行政改革推進本部のリスト提出の求めに、8月、9月の2度とも「廃止すべき法人はない」とゼロ回答で応じた。これに対し 渡辺行革相は、2004年に行革推進本部内に設置され、独法改革を検討してきた「行政減量・効率化有識者会議」(座長は茂木友三郎・キッコーマン会長)の 「報告書」提出を機に一気に反転攻勢に出ようとした。

 報告書には国土交通省所管の都市再生機構、住宅金融支援機構、経産省所管の日本貿易保険など「11法人の廃止・民営化」が明記されていた。また国 民生活センター(内閣府)、国立女性教育会館(文部科学省)など7法人の統合・移管や、統計センター(総務省)、国立病院機構(厚生労働省)の非公務員化 なども盛り込まれていた。

 2007年11月27日、渡辺行革相はこれら11法人の名を明記した関係資料を用意し、記者会見で「報告書」をぶち上げる算段を固めていた。とこ ろが茂木座長の会見寸前になって、資料は回収されてしまった。差し替えられた資料からは11法人の名が削除されていたのだった。渡辺、茂木両氏は記者会見 の前に町村信孝官房長官、その後、福田首相の執務室を訪れ「報告書」を説明している。官邸筋は、町村官房長官の段階で法人名公表にストップがかかったと見ており、福田首相もそれに同意したと考えてよい。

 記者会見に臨んだ茂木座長は、「この段階で特定の法人名を出さないほうがいいという政府の判断だ」と説明した。これは「独法改革」が渡辺、茂木両 氏から取り上げられ、官邸主導で行なう方向が動かしがたいものになったことを認める発言でもある。この段階ですでに勝敗は決していたのである。

 その後、渡辺行革相と関係省庁の大臣との交渉が相次ぎマスコミも連日のように派手に取り上げたが、それは「抜本改革はしない」という官邸が決めたシナリオの下での茶番劇だった。

 閣議決定された整理合理化計画の最終調整を実際に行なったのは、町村官房長官(旧通商産業省出身)、二橋正弘官房副長官(元自治事務次官)が取り 仕切る官僚の牙城・内閣官房である。小泉、安倍内閣時代の官邸主導、政治主導が、福田内閣では「官邸官僚」主導となったことを如実に示している。

◇ 単なる数合わせで実態に変化はなし

 そもそも独法は、2001年の中央省庁再編で、事務・事業にかかわる「現業部門」を分離し、透明で効率的な運営をするということで57法人が新設された。

 だが、小泉内閣の「特殊法人改革」でその性格は著しく変質した。小泉首相は石油公団、道路公団など各省の大黒柱ともいうべき大型特殊法人の「解 体」を行なったが、それら特殊法人の旧来の業務のほとんどが独法として生き残った。つまり、看板がかけ替えられたにすぎない。「独法は行政改革のゴミ 箱」(総務省幹部)とするボヤキが出るのも当然で、現在、その数は102法人、2007年度には約3兆5000億円の国費が投入され、約13万人の職員がいる。

 今回、閣議決定した整理合理化計画では、廃止・民営化や統合によって削減が決まったのは16法人、国費の投入も約1500億円縮減できるとしている。

 しかし、それらはあくまでも官僚お得意の“数合わせ”にすぎない。最終局面で福田首相は、“改革の本丸”とされた国交省所管の都市再生機構が行な う賃貸住宅事業の民営化と、住宅金融支援機構の組織見直しについて2~3年後に結論を出すと裁断したが、これは問題の先送りで、空手形に終わるだろう。経 産省所管の日本貿易保険も、政府全額出資の特殊会社化されるが、政府が持ち株放出を行なわないことが前提条件になっており、実態は変わらない。

 結局、今回の「独法改革」で実現した大型法人の廃止は、安倍内閣で決定ずみの緑資源機構だけだ。しかも、その緑資源機構にしても、水源林造成は農 水省所管の独法、森林総合研究所に吸収されて生き残る。まさに“モグラたたき”と同じで、たたかれて一時的に姿を消したようでも、衣装を変えて再び頭をも たげてくるのである。そして官僚たちは再び独法に対する批判が強くなると見れば、次なる新たな衣装(組織形態)を考え出すことだろう。

 経産省で「改革派」とされた有力OBは古巣への絶望を隠さない。

「優秀な官僚は見切りをつけて辞め、“でも・しか官僚”が国費を食い尽くすという最悪の状態だ」

(ジャーナリスト 生田忠秀)



ここまでなめられても、なお、自公政治にしがみつく心理って、一般的じゃないと思う。
民主党に代わって、何が変わるんだ?って、少なくとも、官僚との癒着にメスをってなら、これまで接点のなかった人間に対応させた方がイイに決まってるじゃん。

情報を握る者に「富」が集中する中国


「一党独裁」と「市場経済」の矛盾
ダイヤモンド・オンライン

 新年明けましておめでとうございます。私は、年末年始を東京で過ごしました。東京の元旦の青空は、本当に鮮やかな青でした。中国で長い間生活している私にとっては、中国では先ずお目にかかれない晴れ晴れとした青空でしたので、特に印象深いものでした。

 東京という日本の首都におけるこの青空は、経済と環境の両立への努力の結果として、積極的に評価していいのでしょう。この面では、日本は一歩も二歩も中国の先を行っているのだと思います。

 一方、経済の活力はあるけれど、混沌として、いつでもスモッグに覆われている中国。発展の段階、その特性の違う両国、新年はどんな展開、交わりをみせるのでしょうか。

◇ 共産党が情報を独占しながら市場経済化を進めることの歪み

 さて、本題にはいりますが、その中国の発展にとって諸刃の剣となっているのが、共産党の一党独裁です。独裁による強権に基づき、自らの方向性をダ イナミックに推進できるというプラスの側面があります。一方、マイナス面は、いうまでもなく、官僚の腐敗、社会の調整弁機能の弱さ、そして一党独裁と市場 経済とが結びついた経済の歪みがあります。

 この内、「一党独裁と市場経済とが結びついた経済の歪み」は、我々ビジネスマンにとって非常に重要な視点であると思います。ここで「一党独裁と市 場経済」を考える前に、そもそも、80年に改革開放が叫ばれるようになるまでの中国において存在した社会主義計画経済というものを見直してみると、この問 題が分かりやすくなります。

 社会主義計画経済とは、共産党が情報を独占することが肝になります。共産党が絶対神であるがごとく、まずは、共産党と共産党員が情報を独占する。 そして、市場の裁量ではなく、共産党員の恣意で全ての財が分配されるというのが計画経済なのです。何を言いたいかというと、現在の社会主義市場経済の「社 会主義」の意味は、すなわち「情報の独占」ということです。情報の独占は、引き続き共産党が維持し、一方で市場経済を導入していることです。

 本来、市場経済の前提は、先ず情報の公開があり、公開された情報を各プレーヤーが享受したうえで、競争し、社会全体が発展するということであると 思います。従って、社会主義市場経済は、同時に情報の独占が存在するという意味で大いなる歪みがあるわけです。中国のその歪みが、いたるところに噴出して いるのが、現在の中国ということです。

 中国共産党も、当然この問題を認識していると思いますし、どんどん情報の透明化をしようと体制を整えております。ただし、私が見ている限り、まだ まだ肝心な情報というのは共産党が握っていますし、それを入手できるのは、やはり周辺の共産党員であったり、その親族であったり。やっと公開されるころに は、ある程度既成事実になっているようなことがまだまだ多いと思います。

◇ 情報操作、市場操作は当たり前富める者がますます富む構造

 そんな状況のなかで、一方で市場があり、裏で最初に情報を得られる人が市場を操作したら、これは絶対勝てますよね。今、世界の商品相場で波乱要因は中国だと言われていますけど、それは需要が膨大という意味で当然だと思います。

 ただ、一方で、中国では、商品相場で何億ドルと運用する個人がいます。これは私の推測ですが、彼らはそれだけ資金を持っているから、共産党から内部情報を得られていることは想像に難くないと思います。彼らは、これから当面勝ち続けると思います。

 なぜかというと、中国の来年の需要がどうだとか、農作物の作付けがどうだとか、そんな情報は、多分、世界のだれよりも先に共産党から聞いている可 能性があるからです。ですから、中国に個人のスタープレーヤーがいるということは、そういう背景があるのではないかと推測されます。

 上は1つの極端な例ですが、さまざまな局面で情報の偏在が一部の富に結びついているというのが今の中国の現実です。誰かが先に豊かになるという、 先富論からすればいいのかもしれませんが、程度が過ぎると社会全体の発展の阻害要因となることは誰もが知っています。もちろん、日本でも米国でも、本当に 価値のある情報というのは、少数の人が握っているものかもしれません。ただし、この傾向が激しいのが今の中国と考えていただければいいと思います。

 結果、こうした情報を得られる人、企業は、当然、独占的な利益が得られますから、その力に乗って、世界戦略にも乗り出そうとしている。一方、そう いった情報に接することができない人は、やはり高度成長のメリットに浴することができなくて格差になってしまう。これが行き過ぎたので、そういう意味も含 めて情報の透明化を図らなければならない。情報の透明化というのは法制の運用面での安定化でもありますから、そういうことを一生懸命やろうとしているの が、今の胡錦濤さんの一連の動きであるというふうに見ていただければいいと思います。

◇ 西側並みの情報公開が可能になる日はいつか

 情報の透明化において、1つのターニングポイントは、2002年から2003年にがけて発生した、例のSARS問題だと思います。中国当局が、情 報を隠蔽したがために問題が大きくなってしまって、結局、衛生部長が解任されました。これは、おそらく、共産中国建国以来、役人が情報を公開しなかったこ とによって処分された初めての事例ではないかと思います。

 それまでは、情報を公開することによって処罰されてきました。それが、初めて情報を公開しないことによって処分をされたという意味で、あの SARS事件というのは、中国の情報公開元年じゃないかというふうに思います。そうすると情報公開元年からまだやっと5年あまりで、まだまだ緒についたと いうことかと思いますが、中国でビジネスする者としては、この勢いがこれからも少しずつ進んでいってもらえればと思います。

 では、どういうふうに進むかというと、これも私が体験的に感じているのですけど、やはり、いい情報というのは、人の周りから少しずつ出てゆくも の。共産党員の同僚だったり、その家族だったり。また、共産党の高官、次は国有企業があります。家族もビジネスをやっていますし、国営企業も当然その情報 を利用して儲けようとする。そして、情報が少しずつ伝わっていって、周辺の人からどんどん豊かになってくる。

 そして、情報がいつ西側並みに公開されるかというのは、おそらく、中国全体の富裕層がもう少し増えた段階。要するに、権力者の周りの人たちがおなかいっぱいにならないと、多分、情報の共有化、透明性というものは進まないのではないかと感じております。

 さらにその時は同時に、民主化を進めるうえでの機が熟した時期といえるかもしれません。そして、一党独裁が徐々になくなってくるのだと思います。 ただ、その時は、中国も安定成長に入り、リスクは減りますが、人民元も、人件費も高くなり、外資にとっても中国の位置付けが変わってくるというのが将来の 姿であると思います。



現代中国は掴み切れない....。