木曜日, 1月 10, 2008

情報を握る者に「富」が集中する中国


「一党独裁」と「市場経済」の矛盾
ダイヤモンド・オンライン

 新年明けましておめでとうございます。私は、年末年始を東京で過ごしました。東京の元旦の青空は、本当に鮮やかな青でした。中国で長い間生活している私にとっては、中国では先ずお目にかかれない晴れ晴れとした青空でしたので、特に印象深いものでした。

 東京という日本の首都におけるこの青空は、経済と環境の両立への努力の結果として、積極的に評価していいのでしょう。この面では、日本は一歩も二歩も中国の先を行っているのだと思います。

 一方、経済の活力はあるけれど、混沌として、いつでもスモッグに覆われている中国。発展の段階、その特性の違う両国、新年はどんな展開、交わりをみせるのでしょうか。

◇ 共産党が情報を独占しながら市場経済化を進めることの歪み

 さて、本題にはいりますが、その中国の発展にとって諸刃の剣となっているのが、共産党の一党独裁です。独裁による強権に基づき、自らの方向性をダ イナミックに推進できるというプラスの側面があります。一方、マイナス面は、いうまでもなく、官僚の腐敗、社会の調整弁機能の弱さ、そして一党独裁と市場 経済とが結びついた経済の歪みがあります。

 この内、「一党独裁と市場経済とが結びついた経済の歪み」は、我々ビジネスマンにとって非常に重要な視点であると思います。ここで「一党独裁と市 場経済」を考える前に、そもそも、80年に改革開放が叫ばれるようになるまでの中国において存在した社会主義計画経済というものを見直してみると、この問 題が分かりやすくなります。

 社会主義計画経済とは、共産党が情報を独占することが肝になります。共産党が絶対神であるがごとく、まずは、共産党と共産党員が情報を独占する。 そして、市場の裁量ではなく、共産党員の恣意で全ての財が分配されるというのが計画経済なのです。何を言いたいかというと、現在の社会主義市場経済の「社 会主義」の意味は、すなわち「情報の独占」ということです。情報の独占は、引き続き共産党が維持し、一方で市場経済を導入していることです。

 本来、市場経済の前提は、先ず情報の公開があり、公開された情報を各プレーヤーが享受したうえで、競争し、社会全体が発展するということであると 思います。従って、社会主義市場経済は、同時に情報の独占が存在するという意味で大いなる歪みがあるわけです。中国のその歪みが、いたるところに噴出して いるのが、現在の中国ということです。

 中国共産党も、当然この問題を認識していると思いますし、どんどん情報の透明化をしようと体制を整えております。ただし、私が見ている限り、まだ まだ肝心な情報というのは共産党が握っていますし、それを入手できるのは、やはり周辺の共産党員であったり、その親族であったり。やっと公開されるころに は、ある程度既成事実になっているようなことがまだまだ多いと思います。

◇ 情報操作、市場操作は当たり前富める者がますます富む構造

 そんな状況のなかで、一方で市場があり、裏で最初に情報を得られる人が市場を操作したら、これは絶対勝てますよね。今、世界の商品相場で波乱要因は中国だと言われていますけど、それは需要が膨大という意味で当然だと思います。

 ただ、一方で、中国では、商品相場で何億ドルと運用する個人がいます。これは私の推測ですが、彼らはそれだけ資金を持っているから、共産党から内部情報を得られていることは想像に難くないと思います。彼らは、これから当面勝ち続けると思います。

 なぜかというと、中国の来年の需要がどうだとか、農作物の作付けがどうだとか、そんな情報は、多分、世界のだれよりも先に共産党から聞いている可 能性があるからです。ですから、中国に個人のスタープレーヤーがいるということは、そういう背景があるのではないかと推測されます。

 上は1つの極端な例ですが、さまざまな局面で情報の偏在が一部の富に結びついているというのが今の中国の現実です。誰かが先に豊かになるという、 先富論からすればいいのかもしれませんが、程度が過ぎると社会全体の発展の阻害要因となることは誰もが知っています。もちろん、日本でも米国でも、本当に 価値のある情報というのは、少数の人が握っているものかもしれません。ただし、この傾向が激しいのが今の中国と考えていただければいいと思います。

 結果、こうした情報を得られる人、企業は、当然、独占的な利益が得られますから、その力に乗って、世界戦略にも乗り出そうとしている。一方、そう いった情報に接することができない人は、やはり高度成長のメリットに浴することができなくて格差になってしまう。これが行き過ぎたので、そういう意味も含 めて情報の透明化を図らなければならない。情報の透明化というのは法制の運用面での安定化でもありますから、そういうことを一生懸命やろうとしているの が、今の胡錦濤さんの一連の動きであるというふうに見ていただければいいと思います。

◇ 西側並みの情報公開が可能になる日はいつか

 情報の透明化において、1つのターニングポイントは、2002年から2003年にがけて発生した、例のSARS問題だと思います。中国当局が、情 報を隠蔽したがために問題が大きくなってしまって、結局、衛生部長が解任されました。これは、おそらく、共産中国建国以来、役人が情報を公開しなかったこ とによって処分された初めての事例ではないかと思います。

 それまでは、情報を公開することによって処罰されてきました。それが、初めて情報を公開しないことによって処分をされたという意味で、あの SARS事件というのは、中国の情報公開元年じゃないかというふうに思います。そうすると情報公開元年からまだやっと5年あまりで、まだまだ緒についたと いうことかと思いますが、中国でビジネスする者としては、この勢いがこれからも少しずつ進んでいってもらえればと思います。

 では、どういうふうに進むかというと、これも私が体験的に感じているのですけど、やはり、いい情報というのは、人の周りから少しずつ出てゆくも の。共産党員の同僚だったり、その家族だったり。また、共産党の高官、次は国有企業があります。家族もビジネスをやっていますし、国営企業も当然その情報 を利用して儲けようとする。そして、情報が少しずつ伝わっていって、周辺の人からどんどん豊かになってくる。

 そして、情報がいつ西側並みに公開されるかというのは、おそらく、中国全体の富裕層がもう少し増えた段階。要するに、権力者の周りの人たちがおなかいっぱいにならないと、多分、情報の共有化、透明性というものは進まないのではないかと感じております。

 さらにその時は同時に、民主化を進めるうえでの機が熟した時期といえるかもしれません。そして、一党独裁が徐々になくなってくるのだと思います。 ただ、その時は、中国も安定成長に入り、リスクは減りますが、人民元も、人件費も高くなり、外資にとっても中国の位置付けが変わってくるというのが将来の 姿であると思います。



現代中国は掴み切れない....。

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