水曜日, 12月 31, 2008

麻生政権


福島民報 あぶくま抄(12月20日)
 「民間で(環境対策を)銭にしちゃおう、しのぎにしようというのがすごい」。麻生太郎首相が14日に北九州市を視察した際の発言である。銭はともかく「しのぎ」を理解できた県民はどれほどいただろう。
 一般の辞書では分からない。しのぎは暴力団の隠語で「稼ぎ、経済活動、もうけ」を意味する(米川明彦編「集団語辞典」)。皇室につながりもある首相の生まれ・育ちは折り紙付きのはずだ。愛読書の漫画からでも覚えたのか。美しい日本語からはほど遠い。
 名作映画「マイ・フェア・レディ」は、ロンドン下町に住む花売り娘が淑女に変身する物語だ。華麗な衣装に身を包んだ主人公が話しぶりから、「お里」が露 見する場面もあった。欧米では、階級などで使う言葉が異なる。若き日の麻生首相も米国留学中に祖父・吉田茂元首相に俗っぽい会話をとがめられ、研修先を英 国に変えさせられたという。  幸い日本では、身分などによる言葉の格差は少ない。ただ「公の場で使うべきでない」言い回しがあるのも確かだ。国の最高指導者として、無法者の言葉を使うのはいただけない。「バカヤロー」の一言で衆院解散に追い込まれた先例だってある。


北海道新聞 卓上四季
麻生さんへ(12月18日)
麻生首相に申し上げます。失言にはあまり驚かなくなりましたが、これはいけません。先日、北九州市でリサイクルの施設を視察しましたね。その折の発 言が「民間で(環境対策を)銭にしちゃおう、しのぎにしようというのがすごい」というものでした▼しのぎと言われても、一般の人には耳慣れません。やくざ の世界の俗語なのですから。その意味は収入とか、資金を得る手段。むろん賭博や麻薬など非合法なものが含まれます▼あなたの地元・九州の筑豊には、侠客 (きょうかく)めいた気性の人が多くいたとか。石炭王の家に生まれ、外祖父は首相という特別な境遇だったため、かえって周りに悪ぶるくせがついたのかもし れません。「生まれはいいが育ちは悪い」と自らを語っているようですが今度の発言には首をかしげます▼ついでに言えば、サービス精神、あるいは「受け」を 狙う気持ちが強いのでしょうか。定額給付金について「一億円あっても、さもしく一万二千円欲しいという人もいるかもしれない」と述べました▼この文脈で使 う「さもしい」も、どぎつい言葉です。お金持ちの一部をさげすむ表現で実は庶民に迎合し、給付金への批判をそらしているように思えます▼あなたの話し方 は、べらんめえとは違います。下町の言葉は、少々乱暴でも粋なもの。普通の言葉遣いはできませんか。くるくると変わりさえしなければよいのです。

社会保障費の抑制はもう無理! 後期高齢者医療制度を考える


 【47コラム】 2008年4月に始まった後期高齢者医療制度。悪評のなか9月の自民党総裁選の最中に麻生さんと舛添さんが廃止を 口にしたくせに、お得意の発言の「ぶれ」を繰り返し、ついに年末まで腰の入った手直し案を出さずじまいだった。自民党は09年春を目標に党見直し案の骨格 をまとめると言い出している。4月衆院解散を想定しマニフェスト(政権公約)に盛り込むためだそうで、ここでもやはり選挙しか眼中にないらしい。困ったも のだ。
 そもそもある年齢以上の人たちだけ切り離した独立の社会保険制度は世界にも例がない。そして、この制度に怒ったのは日本の高齢者たちだけではない。肝心の医師たちがきわめて冷ややかだった。
 75歳以上を「別枠」にしたのは、年齢で線引きして国の社会保障費を抑制するのが狙いだった。抑制策をあくまで守るのか、それともこの際思い切っ て抑制のタガを外すべきなのか。一番良いのは老若一元的な医療保険の実現なのだが、それが実現するまでは、当面、「別枠」制度を白紙に戻し、税金をもっと 投入するしかないのである。現に09年度予算編成で麻生政権は抑制のタガを外すことに踏み切った。埋蔵金(国のヘソクリ?!)などを使う。小泉政権が06年に打ち出した「毎年自然増を2200億円抑制する」政府目標が骨抜きにされた。
 何人かの知人の医師たちに聞いてみたところ、医療保険の「一元化」論は昔からある。老若を一つの枠に、というだけでなく、いろんな職種も一つの枠に、という一元化の構想だ。しかし現役世代のサラリーマンが加入する企業単位の健保組合の連合会と経団連がぜんぜん乗ってこない。政府管掌健保、共済組合なども及び腰だ。だから「本当は一元化がいいんだけど、こういう利益団体が壁を作っていて実現はまず無理。だから現実的には公費負担を増やすしかない」と、どの医師も口をそろえた。
 政府が押し通そうとしてきた高齢者「別枠」制度も、一応現役世代の「支援」は受ける。75歳以上の医療費の4割を現役世代が負担する。そして5割 は公費。つまり「一元化」は無理だが、部分的な「拠出」で「支援」する。それでも残り1割を75歳以上の人たち自身に保険料として自己負担させる。75歳 以上の医療費が上がれば75歳以上の人たちが払う保険料も上がる。自己責任論である。少しでも保険料上昇を避けたければ、医者にかかる費用を抑制しなさ い、つまり風邪くらいで医者の世話になるな…と年寄りを脅迫するみたいな仕組みだ。ここに相当の無理があった。
 「別枠」制度が医師たちに悪評だったのは、「かかりつけ医」制だ。これが高齢者医療の質を低下させる、として 制度受け入れ拒否を決めてしまった医師会が全国にかなりある。茨城、青森、山形、佐賀、岡山、鳥取、広島、山口、福島、宮崎、栃木、秋田、徳島・・。これ らの県の、一部地域の医師会が拒否ないし消極対応の意思表示をしている。医師たちが二の足を踏むのは、新制度だと「かかりつけ医」の報酬が原則として患者 1人当たり「月6000円」(定額制、患者負担は600-1200円)で打ち切られるからだ。この金額では入念な医療ができない恐れが十分にある。「月に6000円では簡単な検査と診察をするだけで足が出る」と医師たちはいう。患者にしてみれば、「かかりつけ医」にみてもらうだけならいくら診療してもらっても定額で済むともいえるが、ちゃんとした検査や治療をしてもらえない可能性がある。
 6000円でなく2万円だったら引き受ける医師が多くなるかもしれない。以前なら厚生労働省も制度を新しくするときは決まって医師にインセンティ ブを与えて制度を円滑にスタートさせたそうだ。それができないほど社会保障費抑制の政策が限度を超えてしまっていたのだろう。貧すれば鈍すだ。
 低所得者層にとっての厳しさ、年金から天引きする心無さ、保険証未着、対象外の人から間違って天引き、算定額の誤り・・・こうした問題だけなら、 政府・与党のいう「運用上の改善」でなんとかなる。しかし「かかりつけ医」制ひとつとっても制度自体が長続きするとは思えない。(4月6日、9月29日、 11月19日、12月22日更新 憲)

課題その1、顛末追うべし!

【激動政局2008 崩れる権力の楼閣】


産経新聞2008年12月31日(月)08:05
 ■「話せば分かる」
 衆参ねじれの緊張が一気にはじけるかに見えた。
 1月29日夜、自民、公明両党は揮発油税の暫定税率期限切れを防ぐためのブリッジ法案を国会に提出した。法案が1月中に衆院通過すれば、民主党が 掲げる4月からの「ガソリン値下げ」は水泡に帰す。民主党は、30日の本会議開会を阻もうとピケを張り、衆院議運委員長の笹川堯らを議運理事会室に監禁。 ピケ破りにきた自民若手とつかみ合いとなり、怒号が響き渡った。笹川らはひそかに窓から屋根づたいに隣室に逃れたが、与野党のにらみ合いは続いた。
 ところが、翌30日に事態は急変する。衆参議長が斡旋(あっせん)に乗り出し、与野党幹事長が暫定税率を担保する歳入関連法案に関し「年度内に一定の結論を得る」とする合意文を交わしたのだ。

 ◆議長斡旋をほご
 与党はブリッジ法案を引っ込め、与野党に「雪解け」ムードが広がった。2月上旬、自民党幹事長の伊吹文明は東京・神田の小料理店に国対幹部を招き、慰労会を開いた。
 「いやー、うまくいった。すべて計画通りだ。ブリッジ法案は議長にお出まし願うための友釣り用のアユだったんだ」
 満面の笑みで語る伊吹を横目に、国対委員長の大島理森は苦虫をかみつぶしていた。「果たして民主党執行部に常識や良識が通用するか…」
 大島の嫌な予感は的中した。民主党は2月末の予算案の衆院強行採決を理由に議長斡旋をほごにしたのだ。
 首相、福田康夫は3月27日、緊急記者会見を開き、道路特定財源の一般財源化を表明した。「4月パニック」を回避するための大幅譲歩だった。
 「混乱を回避し、国民生活を守るという首相の責任を全うするために何としても野党のみなさんとの話し合いの機会を作らなければいけない」
 福田は切々と協力を呼びかけたが、民主党代表の小沢一郎はにべもなかった。
 「政府・自民党の言う通りにいかないと国民生活が混乱するという論理は、半世紀以上続いた長期権力のおごりであり錯覚だ」
 4月1日未明、ガソリンの暫定税率(1リットル当たり約25円)は期限切れとなり、全国で値下がりした。民主党は勝利の酒に酔った。

 ◆日銀人事も一蹴
 もう1つ、福田を悩ませ続けた懸案は3月19日に任期切れとなる日銀総裁、福井俊彦の後継人事だ。日銀総裁が空席になれば、日本の国際信用力は一気に低 下する。国会同意人事には、衆院の優越規定がないため、衆参両院の同意が必要。福田がブリッジ法案に難色を示し、強硬論を説く大島らに「話し合いを続けて ほしい」とクギを刺したのも日銀人事が念頭にあり、参院で過半数を占める野党の機嫌を損なうわけにはいかなかったからだ。
 3月7日、福田は日銀副総裁で元財務次官の武藤敏郎を総裁に、京大教授の白川方明と東大教授の伊藤隆敏を副総裁に充てる人事案を提示した。だが、小沢の指令で、参院民主党は白川以外の人事を一蹴(いっしゅう)した。
 福田は慌てた。小沢とは事前に電話で連絡を取り、武藤の起用に「内諾」の感触を得ていたからだ。
 確かに2月中旬まで小沢は揺れていた。2月15日、小沢は元日銀理事で元衆院議員の鈴木淑夫を党本部に呼び、「政権担当能力を示すには武藤でもよいと思うが、党内の反発は強い。参ったな…」と苦悩を打ち明けたほどだ。
 だが、2月19日のイージス艦「あたご」と漁船との衝突事故で、国会はにわかに騒がしくなっていた。2月29日には与党は予算案を衆院で強行採決、民主 党は再び徹底抗戦モードに切り替わった。鈴木から「総裁が欠員になっても副総裁が職務代行できる。慌てなくてもよいのではないか」との手紙を受け取ってい たこともあり、小沢はすでに吹っ切れていたのだ。
 福田は3月18日、元大蔵事務次官で国際協力銀行総裁の田波耕治を総裁候補とする人事案を出すが、参院は19日に否決。4月9日に白川の総裁昇格が決まるまで戦後初の日銀総裁空席という異常事態が続いた。

 ◆連立構想ご破算
 「話せば分かる」
 1月15日の記者会見で、こう言い切った福田の民主党への淡い期待は見事に裏切られた。
 福田の脳裏には平成19年10月30日と11月2日の2度にわたる小沢との党首会談があった。自民、民主両党の大連立構想を持ちかけてきたのは小沢であ り、民主党内の内紛でご破算になったとはいえ、いつか再び小沢と真摯(しんし)に向き合える日が来ると信じていたのだろう。
 4月9日、福田にとって2度目の党首討論(国家基本政策委員会合同審査会)が開かれた。1月9日の初の党首討論では、福田は「まったく同感です」「ごもっともな話です」と何度も小沢に同調し、ラブコールを送ったが、この日は違っていた。
 「100日ぶりの討論ですが、お答えする前にぜひひとつお尋ねしたい」
 こう切り出した福田は日銀人事や歳入関連法案などに対する民主党の対応への怒りをぶちまけた。
 「昨年、お会いしたときは『一緒になってやらなきゃいかん』という気持ちだったと思うが、その気持ちを忘れてもらっては困る。(野党にも)政治に対する 責任はあるのだから誰と話せば信用できるのかぜひ教えていただきたい。本当に苦労しているんですよ。かわいそうなくらい苦労しているんですよ…」
 これが福田の小沢との決別宣言だった。
 だが、国会混乱に対する批判は政府・与党に向けられ、内閣支持率は急落していった。4月27日の衆院山口2区補選でも自民党候補が惨敗。歳入関連法案が憲法59条の「みなし否決」規定により衆院再議決で成立したのは4月30日だった。

 ■極秘分析メモ 強気くじけた
 「国民生活を考えれば政治的な駆け引きで政治空白を生じることがあってはならない。この際新しい布陣で政策実現を図らなければならないと判断し、本日辞任を決意しました」
 9月1日午後9時半。東京・西麻布のクラブの液晶テレビに首相、福田康夫の姿が大きく映し出された。
 「これは大変なことになったな…」。顔を見合わせたのは、元首相の安倍晋三、元自民党政調会長の中川昭一、前経産相の甘利明。後の麻生政権誕生の立役者となる面々だった。
 この夜は選対副委員長の菅義偉も駆けつけ、幹事長の麻生太郎を囲む「NASAの会」を開くはずだったが、先に到着した3人は嫌な予感は感じていた。午後8時すぎ、麻生が「申し訳ないが会合に遅れそうだ。なんとか顔だけは出したいんだが…」と沈んだ声色で電話をかけてきたからだ。
 麻生にとっても福田の辞任は青天の霹靂(へきれき)だった。1日午後6時前、首相官邸に呼ばれた麻生は福田から唐突に辞意を告げられた。
 「この難局で続けていくのは難しいので辞めようと思う。後はあなたの人気で華々しく総裁選をやり民主党を打ち負かしてほしい」
 遅れて部屋に入った官房長官、町村信孝は必死に慰留したが、福田はさばさばした表情で振り切り、元首相の森喜朗らに電話で辞意を伝えた。ただ、公明党代表の太田昭宏には会見直前まで連絡しなかった。7月以降、福田政権を揺さぶり続けた公明党への意趣返しのようだった。
 福田にとって内閣改造後の1カ月間は次期政権に最も有利となる「引き際」を探る日々だった。福田は会見の最後で「『人ごとのようだ』とおっしゃるが、私 は自分を客観的に見ることができる。あなたとは違うんです」と言い放ちひんしゅくを買ったが、これは地位に恋々としない自らの美学を踏みにじられた悔しさ から出た言葉だった。

 ■総裁選
 福田退陣を受けた自民党総裁選は9月10日に告示され、麻生、元官房長官の与謝野馨、元防衛相の小池百合子、元政調会長の石原伸晃、元防衛相の石破茂の5人の争いとなった。
 福田は総裁選を通じて自民党の支持率を一気に回復させ、新政権発足直後に解散するシナリオに望みをかけたが、思惑通りに事態は進まなかった。
 安倍、福田と2代続いた早期退陣に対して、世論からの「政権放り出し」との批判は厳しく、総裁選が「茶番」に映ったからだ。序盤戦で麻生勝利が固まって しまったことも総裁選が盛り上がらなかった一因だ。9月15日には米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)を機に金融恐慌が世界を襲い、「お祭り 騒ぎをやっている場合ではない」と風当たりは強まった。
 22日、新総裁に選出された麻生はこう宣言した。
 「私に与えられた天命とは次なる選挙で断固民主党と戦うことだ。国民が抱える数々の不安に応え、国家国民を守る安全保障問題を堂々と掲げ、実行に移す力はわが党以外ない」
 24日、麻生は第92代首相に指名されたが、各種世論調査の内閣支持率は5割前後と伸び悩み、福田から受け継いだ解散シナリオは大きく狂い始めた。

 ■情勢拮抗
 組閣、所信表明演説と一連のセレモニーを終えた麻生は分厚い冊子を険しい顔つきで凝視した。9月22~27日に実施した自民党の極秘世論調査の詳報だった。
 自民党は小選挙区146、比例代表69の計215議席。民主党は小選挙区141、比例代表73で計214議席と拮抗(きっこう)。公明党が現状31議席を維持すれば、与党がなんとか過半数を維持できる数値だった。
 だが、別添の「調査分析メモ」はショッキングな内容だった。
 相手候補に5ポイント以上差を付けた「当選有力議席数」は、自民党が小選挙区84、比例代表57~63の計141~147議席。民主党は小選挙区 121、比例代表72~79の計193~200議席。5ポイントは少しの風で吹き飛ぶ差だ。米大統領選のあおりで「チェンジ旋風」が吹けば自民党は大敗し かねない。
 麻生はやむなく代表質問最終日の10月3日解散のシナリオを捨てた。次に麻生が狙ったのは、第1次補正予算を成立させ、第2次補正予算のメニューを示し た直後の解散だった。麻生は10月10日夜、自民党幹事長の細田博之を都内のホテルにひそかに呼び出し、11月18日公示、30日投開票に向けた準備を指 示した。
 だが、株価と連動するように支持率は下落の一途をたどっていった。「このまま総選挙に突入するとまずい」。そう考えた菅は猛烈な巻き返しを図った。
 10月16日夜、菅は中川昭一、甘利とともに都内のホテルで麻生を説得した。麻生は「おれはデータなんか信じない。勝負してみないと分からないじゃない か」と強気だったが、菅は「やっとの思いで政権を取ったのに何もやらずに政権を手放すんですか。自殺行為だ」と粘った。2時間後、麻生は「う~ん、悩む な…」と漏らし、この日を境に解散先送りに傾いた。

 ■不信感
 解散が遠のくと、政権のほころびが目立ち始めた。「目玉」のはずの定額給付金では、所得制限をめぐり政府・与党は迷走。麻生の失言や連夜のバー通いもバッシングされた。民主党は再び牙をむき、元幹事長の中川秀直、元行革担当相の渡辺喜美ら反麻生勢力の動きは活発化した。
 自公連立もきしみだした。
 12月15日、自民党選対委員長の古賀誠は都内のホテルに各派事務総長を集め、こう告げた。
 「自民党は本来の支持層をまだ回復していない。比例代表への意識が希薄なんじゃないか。『選挙区も自民、比例も自民』でなければ自民党はますます弱体化する。連立は得るモノあれば、失うモノもある」
 選挙責任者が自公の選挙協力の見直しを示唆したことに公明党はおののいたが、実は伏線があった。
 12月12日、麻生は記者会見で「財政責任のあり方を示すことが責任政党の原点であり矜持(きょうじ)だ」と述べ、平成23年の消費税増税を表明。公明党は猛反発し、ある幹部は「選挙時期も決められない人が、消費税の引き上げ時期を言えるのか」と言い放った。
 これに自民党は「ここまで公明党にコケにされてよいのか」と憤慨した。福田退陣に追い込まれた恨みもある。公明党がゴリ押しした定額給付金への不満も渦巻く。そんな公明不信の延長線にあるのが古賀発言だった。今後、自公の亀裂はさらに広がる公算が大きい。
 「一部に『選挙だ』『連立だ』『政界再編だ』という議論があるが、そんなことを言っている場合ではないし、あり得ない。私は国民生活防衛のためなら、どんな批判も恐れず何でもやり抜く覚悟だ」
 21年度予算案を閣議決定した12月24日、麻生は記者会見でこう述べたが、来年1月5日召集の通常国会で民主党が「最終決戦」を挑んでくることは間違 いない。政界が濃い霧に包まれる中、自民党政権最後の首相にもなりかねない麻生。その姿は江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜と重なり合うとも言われる中、崩れ ゆく権力の楼閣をどう立て直そうとしているのか。
 =敬称略、肩書は当時(この企画は石橋文登が担当しました)

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不正経理、さらに4億5000万円…20自治体で発覚


読売新聞 2008年12月31日(水)03:05
 自治体の不正経理問題で、会計検査院が11月に愛知県など12道府県の不正を公表して以降、他の自治体でも不正が次々に明らかになっている。
 検査院の追加調査や各自治体の自主調査で判明したもので、読売新聞でまとめたところ、不正経理は新たに20自治体で計約4億5000万円に上っ た。中には、地震復興事業の事務費を悪用して「預け」と呼ばれる裏金を作ったり、裏金で南部せんべいを購入したりしたケースも見つかっており、検査院は今 後も、12道府県以外のすべての都府県や政令市の調査に着手する方針だ。
 新たに不正が明らかになったのは、奈良、熊本、香川、新潟、神奈川、埼玉、三重、滋賀、秋田の各県と大阪府の10府県。市町村では、盛岡市を含む岩手県内の9市町村と静岡市で発覚した。

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この年の瀬に、腹の立つ話だ。

不正経理防止法案、罰則は懲役3年以下…与党のみで提出へ
読売新聞 2008年12月30日(火)09:32
 与党が検討している公務員の不正な会計処理に罰則を設ける「不正経理防止法案」(仮称)で、調整が残っていた違法行為に対する罰則は、「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」とすることが29日、分かった。
 与党は民主党との共同提案は難しいと判断し、次期通常国会には与党の議員立法で提出し、その後、国会審議などを通じて接点を探る考えだ。
 法案は与党の「会計検査院に関するプロジェクトチーム(PT)」がまとめた。罰則の対象を、予算や補助金などの目的外流用や業者にプールする「預 け」と呼ばれる手法などで裏金作りにかかわった国や地方の公務員と規定。支出先に虚偽の請求書や領収書を要求した行為でも罰則を適用するとした。罰則は懲 役5年以下の案もあったが、「重すぎる」との異論に配慮し、「3年以下」で決着した。

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モラルハザードの一年、せめてこの程度の法案くらい、さっさと決めて、罰則規程しろ!っての!!

自民の「兵糧攻め」に絶える民主


読売新聞 2008年12月31日(水)09:04
 民主党が次期衆院選に備え、経費節減に努めている。選挙の時期が見通せない中、党大会やPR用のCMの経費を抑え、「兵糧」を蓄えている。
 民主党は1月18日、東京・芝公園の「メルパルク東京」で党大会を開く。自民党大会と同じ日だが、楽団演奏などの派手な演出はしないことにした。 議題も、予算や決算などを決める最低限の内容にとどめる。現職の国会議員は出席させるが、次期衆院選に立候補する新人や元議員は「選挙に備えて活動に専念 すべきだ」として参加を求めない。
 会場も以前の郵便貯金会館で、「費用は有名ホテルなどの4分の1から5分の1程度で済む」という。党幹部は「今秋の小沢代表の選出時に党大会も開いたから、大がかりにする必要がない」と説明する。
 年末年始に全国で放送する衆院選向けCMも、簡素な内容にした。小沢代表の全国行脚の様子を写した写真と「国民が、安心して生活できること」「政 治の使命」などの文字を流しているが、写真はほとんどが9月に放送したCMの“使い回し”だ。「制作費はほとんどかかっていない」という。
 民主党がこうして節約に励むのも、企業献金や政治資金パーティーで多額の政治資金を集める自民党に比べれば、もともと政党交付金以外に大きな収入源がないためだ。当選回数が少ない議員が多いため、個別の「集金力」も強くはない。 与党には、麻生首相が 民主党は、衆院選立候補予定者のうち新人・元議員には月額70万円の日常活動費を支給しているが、公認が決まれば500万円を一括支給し、活動費 は止めることにしている。ところが、今回は公認決定後、選挙までの期間が長引きそうなため、新人候補らから悲鳴が上がり、党は年末年始の活動費となる「も ち代」200万円を初めて支給した。
 ベテラン議員は「自分の選挙資金は自分で稼ぐのが基本だ。昔はそうしてきた」と苦言を呈するが、若手からは「選挙事務所設営時などの初期費用で使い切ってしまい、選挙が先送りされると苦しい」と嘆く声も漏れている。


「選挙費用」について(教えて!goo)

選挙ナビ-選挙に役立つ情報サイト


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悲惨な話だ....。

2009年の世界経済 回復に必要な3つの優先事項


フィナンシャル・タイムズ 2008年12月30日(火)13:00
(フィナンシャル・タイムズ 2008年12月28日初出 翻訳gooニュース) ヴォルフガング・ミュンヒャウ
 2009年の経済を予測するのは、簡単でもあるし難しくもある。米国や欧州やアジアのほとんどにとって、ひどい年になるだろうと予測するのは簡単なこと だ。先進工業国は各国連動してひどい景気後退に陥るだろう。世界的な国内総生産(GDP)もおそらく1930年代以来初めて、縮小するだろう。これを避け たくても、私たちにできることはあまりない。
 来年の経済予測で難しいのは、政策決定者たちがどこまで実行できるかどうかだ。不況がいよいよ恐慌にまで悪化するのを回避し、2010年からの持続可能な 回復のための基礎づくりができるのかどうか、予測するのは難しい。これについて私がほぼ確信をもって予測できるのはただ、各国政府の対策がとても重要性を 増すだろうということのみだ。
 今の経済をどんどん悪化させているマイナスの力は、「デレバレッジ(レバレッジ解消)」。それは分かっている。借金過多の家計や資金不足の銀行が、賃借対 照表(バランスシート)を調整しているのだ。借金過多の家計の場合は、貯蓄することで。資金不足の銀行の場合は、貸し出しを抑制することで。このプロセス がほぼ完了するまで、持続的な経済回復などあり得ようもない。
 その段階に至るまでにはまだかなりかかる。たとえば私の計算では、長期的な価格推移に立ち返り、住宅価格/家賃比率がもっと持続可能な水準に回復するに は、米国住宅市場の実勢価格が最高値から最安値まで40~50%の幅でぐるりと一巡する必要がある。私たちはこのプロセスの真ん中あたりまでやってきた。 幸いなことに、ほとんどの名目調整は2009年末か2010年初頭までには終わるだろう。
 しかし金融セクターについて私はもっと悲観的だ。金融セクターもやはりレバレッジを減らしてはいるが、さらに大量の公的資金の注入がなければ、持続可能な ポジションを素早く回復することはできないだろう。しかしそのためには、大々的かつ根本的な再構築が必要となり、それには時間もかかる。
 こうやってざっくりまとめた概観をもとに結論すると、2009年に優先するべき政策課題は3つある。各国の中央銀行はデフレを回避しなくてはならない―― というのが、一つ目の優先事項だ。中央銀行は今この時こそ、物価安定を目指さなくてはならない。物価安定とここで言うのは、欧州的な意味合いでだ。つま り、年率2~3%という小幅ではあるが確実にプラスなインフレ基調を確保しなくてはならないという意味だ。実施されている諸政策の規模や威力を思えば、各 国の中央銀行はこれを達成するだろうと思う。
 しかし私が心配なのは米国で、米国はかなり後になってからインフレ率を上げようとするのではないだろうか。そうすれば米国の財政赤字の実質水準は減るけれ ども、為替レートや資金フローなどの面でとてつもない歪みが生じ、ひいては新たな国際金融・経済危機を引き起こしてしまう
 ふたつ目の優先事項は、金融セクターを縮小することだ。金融部門が無秩序に破たんなどしたら、それは壊滅的な状況となるが、だからといって今の過剰な規模 で金融部門がこのまま持続することは、望ましくもなければ可能でもない。たとえば、債務不履行のリスクを保証する金融商品「クレジット・デフォルト・ス ワップ(CDS)」の市場はどうだ。国際金融の安定に対するとてつもないリスクをはらみながら、市場参加者が金儲けできるという以外に何の経済的な意義も ない、50兆~60兆ドル規模の無規制なカジノではないか。私は原理原則として、経済的な意義のあるなしに基づいて金融活動を規制しても構わないと思って いる。経済的な観点でいうと、CDSは保証としての機能を果たしているので、だったら保証として扱い規制すればいい(そうしたらもちろん、CDSは機能し なくなるのだが)。
 さらに言えば、当局は金融業界をあまり事細かに規制しようとしない方がいい。そんなことをしても、規制当局が負けるに決まっている。ガチガチに決められた 規制ルールの適用を回避するために、既存の金融手段を使ったり新しいのを作ったりすることにかけて、金融セクターは実に長けている。それよりも注力すべき なのは、「倒産するには大きすぎる」などという銀行を分割すること。あるいは、一国の金融部門の規模を、その国のGDP規模に見合ったものに縮小すること だ。特に、国の経済規模の何倍にもふくれあがった銀行部門の債務高を国が保証するなど、止めるべきだ。
 今起きているのは世界的な危機で、危機の余波も様々な形で世界中のあちこちで派生する。だからこそ、対策は世界レベルで調整しなくてはならない。これが3つ目の、そしておそらく最重要な優先事項だ。
 バラク・オバマ次期米大統領の経済チームから聞きたいのは、刺激策の総額が7000億ドルになるのか8500億ドルになるのかという狭量な議論でもなけれ ば、それをどういう事業に使うかと言う議論でもない。私がそれよりも知りたいのは、アメリカの新政権が、共同戦略にどうやって欧州や中国を取り込むつもり なのかということだ。
 一方で各国政府は、インフラ整備や教育にこれまで以上に資金をつぎ込むような真似はしないほうがいい。そうすれば何かの解決につながると期待してのことかもしれないが、そこで解決される問題は、私たちが今すぐ直ちに解決しなくてはならない問題とは違う。
 それに今のところ、本当の意味での政策協調が見えていない。これは諸外国との協調がなければ検討もしなかっただろう政策を、実施するという意味での政策協 調だ。少なくとも欧州では現在、政策協調プロセスは逆のベクトルで動く。つまり各国政府がそれぞれ単独に、自分が何をやりたいか決めた後、欧州連合 (EU)のレベルに持っていって「政策協調」という外見を整えるのだ。
 経済が大破局を迎えるという、ありえそうなシナリオを組み立てるのは難しいことではない。これから並べる展開のいくつかを選んで組み合わせれば、現代史のあらゆる記録を塗り替えるひどい恐慌に見舞われるかもしれない――。
 ・世界的な保護主義の台頭
 ・各国が競い合って通貨を切り下げ
 ・ポンド危機
 ・中国の政情不安につながる社会不安
 ・ここぞというタイミングで起きるテロ攻撃
 ・ユーロ圏の指導者たちがいつまでも協調を拒否し続ける
 ・ユーロ圏の大国で支払い不履行が起きる
 ・新興市場の急落
 ・各国の金融政策がいつまでたっても協調されない
 ・CDS市場が破たん
 このほか言うまでもなく、巨大な国際的金融機関が債務不履行に陥ったり、ヘッジファンド業界が壊滅したりしたら、それはもちろん見逃せない事態となる。
 あるいはこうして破局を迎えるのではない、別の道もある。つまり、2009年不況の拡大をなんとか押さえ込んで、その間に派手さはないが着実で持続可能な回復の基礎をひたすら敷いていくことだ。それこそが、最良の展開だ。
 しかしそのためにはまず、国際経済とはそれを構成する各パーツの単純な総和ではない、それ以上のものなのだと認識する必要がある。ということは各国の政策 決定者はもっと賢くなり、協力し合い、そして既成概念にとらわれない自由で新しい発想をする必要がある。しかし政策決定者というのは元来、そういう風には 動かないもの。そこが問題なのだ。


よくわからん....。

世相


福井新聞「越山若水」 2008年12月25日
 「第一志望落ちた会社に派遣され(派遣社員)」。今年のサラリーマン川柳(第一生命保険)の入選作である。ところが1年もたたないのに、今ではとても笑 えない▼100年に一度の金融危機が日本経済を直撃している。トヨタやソニーなどの世界企業が業績悪化を理由に次々と派遣切りを宣言。年の瀬に仕事も住居 も失う人が急増している▼派遣やパートなど非正規社員は、日本の労働者の3分の1以上を占めている。急速な景気悪化で先行きも見えない中、今後真っ先に整 理対象にされるのもこうした人だろう▼きのう麻生太郎首相が自ら、来年度政府予算案と本年度第2次補正予算案を発表した。さすがに雇用安定や失業対策には 重点を置き、首相は「国民生活を守る」と見えを切った▼特効薬になればいいがどうも不安が残る。麻生首相は先週末ハローワークを視察。求職に来た若者に 「何をやりたいか決めないと就職は難しい」と“説教”したという▼確かに正論だが昨今の事情は「何でもやります」と願い出ても仕事が見つからないほど深刻 である。庶民感覚には少々疎い首相だが、ピントがずれている▼2004年に改正された労働者派遣法は、大量の非正規社員と格差を生み出した。小泉純一郎元 首相が製造業の要請を受けてのことだ。未曾有の雇用危機を回避する責任は、政府与党にも経済界にもあるはずだ。


河北新報「河北春秋」 2008年12月25日 木曜日
 世界恐慌に揺れた1929年、小津安二郎監督がメガホンを取った無声映画がある。「大学は出たけれど」。70分の作品だが、今は11分ほどのプリントし か残されていない▼昭和金融恐慌の余波もあり、当時の大学生の就職率は約30%。学士様に吹き付ける風は冷たかったが、小津はなぜか喜劇に仕立てた
  ▼新調の背広を着て会社の面接に現れた主人公に、役員は「欠員がない。受付の仕事ならあるけれど」と、つれない返事。主人公は「わたしは大学を卒業したん です」と憤然と言い放ち、引き返してしまう▼下宿に戻ったら、息子が就職したことを信じて疑わない母親と婚約者が田舎から上京してきたから、さあ大変。う そがばれ、婚約者との関係にも当然ひびが…
 ▼大学生の就職内定取り消しが相次ぐ2008年を小津ならどう描いただろう。「受付の仕事は 嫌」と、わがままを言う学生など今どき少なかろうから喜劇にはなるまい。100万円の「解決金」で若者の未来をくじいたデベロッパーには、告発のカメラを 向けたか▼麻生首相が内定を取り消した企業名の公表を検討すると表明した。その言や、よし。ところで映画の主人公は再度会社を訪問、受付から始める決心を 伝え、めでたく採用される。ハッピーエンドを引き寄せるには、経営者の度量も要る。


[新潟日報「日報抄」 12月22日(月)]
 「ホッピー系労組」。そんな言葉が若者、特に非正社員の間で使われているという。ホッピーはビールそっくりの味わいで、焼酎を割って飲む。関東の居酒屋などで人気があり、懐に優しい庶民の味方だ
▼でも、意地悪な見方をすると「ビールもどき」になる。これを飲みつつ、仕事の愚痴をこぼすサラリーマンの姿が目に浮かぶ。そのイメージが「闘いを忘れた労組もどき」に重なる。「ホッピー系」はいまの労働組合に対する苦みの利いた皮肉である
▼作家雨宮処凛(あまみやかりん)さんの造語らしい。不安定な生活を強いられるフリーターたちを「プレカリアート」と表現し、「生きさせろ」と訴える。格差社会の矛盾が噴出した今年、時代を射抜く雨宮さんの言葉は、「反貧困」運動の共感を広げた
▼労組の全国組織率が18・1%で三十三年続けて低下したという。ただ数字に表れない変化もある。誰でも加入できる独立系のコミュニティーユニオンが各地で結成され、「派遣切り」などに抗議し奮闘している
▼雨宮さんは同世代の若者について、優しさを見せると引きずり落とされるという「競争原理」に洗脳されてきたとする。だから「団結や連帯という言葉は、(若者に)ほっとする安心感を与える新鮮な言葉なんです」(「世界」十月号)。労組の再生に希望を託す
▼年の瀬を空前の雇用不安が覆い尽くす。たとえ非組合員でも不当な解雇を進める企業には、一泡吹かせる。大組織が多い「ホッピー系労組」は汚名返上の機会だ。きょう二十二日は労働組合法の制定記念日。

さてさて....