土曜日, 1月 19, 2008

米大統領選の最大テーマは経済に

フィナンシャル・タイムズ 2008年1月19日(土)12:07

(フィナンシャル・タイムズ 2008年1月14日初出 翻訳gooニュース) ワシントン=エドワード・ルース

今年の米大統領選のメインテーマはどうやら久しぶりに、「大事なのは経済なんだよバカモノ」になりそうだ。1992年の大統領選でクリントン陣営が掲げた (そしてそれによって勝利を獲得した)選挙テーマだ。とはいえウォール街ではもう数カ月前から、「(選挙で)大事なのは経済なんだよ」と心配されてきたの だが。

米国経済が不況に陥る危険は50%と多くの経済学者が警告する中、ここ数日来、3人の大統領候補が(民主党のバラク・オバマ上院議員とヒラリー・クリントン上院議員、共和党のルディ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長)相次いで、それぞれの景気刺激策を発表した。

これはつまり候補たちがみな、最新の世論調査結果を重視していることの現れだ。調査によると有権者がいま最も重視している政策テーマは、経済。2007年にはイラク戦争だったものが、経済に取って代わられたのだ。

1月8日のニューハンプシャー州予備選の出口調査によると、民主党支持者の38%と共和党支持者の31%が、ほかのテーマを大きく引き離して、最大の関心事は経済と答えている。

さらに目を引いたのは、共和党支持者の80%と民主党支持者の98%が、経済について「とても心配している」あるいは「やや心配している」と答えたこと だ。両党支持者が関心事として挙げた3大テーマはほかに、移民問題と医療だが、いずれもやはり経済的な要素を背景に抱えている。

「目新しいのは、今や共和党支持者たちさえもが経済の悪化をひどく恐れていることだ」 ワシントンの政治アナリスト、チャーリー・クック氏は言う。「つい最近まで、経済に警鐘を鳴らしていたのは民主党支持者だけだったのに」

米経済の悪化がどの候補に有利に働くか、憶測は危険だと世論調査の専門家たちは言う。しかし民主党候補のなかでは、クリントン候補が有利になるだろうと見 られている。たとえば、経済問題が最大の関心事と答えたニューハンプシャーの民主党支持者たちは、オバマ議員よりもクリントン議員を高く支持した。

平均世帯年収5万ドル(約600万円)未満の有権者たちが一番支持するのも、クリントン議員だ。これに対してオバマ議員は、「希望と変化」を唱え、より教 育レベルの高い有権者の支持を集めている。平均世帯年収10万ドル(約1200万円)以上の有権者は、圧倒的にオバマ議員を支持しているのだ。

「一般論として、希望や変革という選挙メッセージに有権者が好意的に反応するのは、経済が好調なとき」 インターナショナル・ストラテジー・アンド・イン ベストメントのワシントン事務所のトム・ギャラガー氏はこう言う。「私が思うに、不景気になれば、自分には実行力があると主張する候補が有利になる」

一方で、不景気になれば有利になる共和党候補は、経歴だけをとれば明らかに、ミット・ロムニー氏のはずだ。前マサチューセッツ州知事のロムニー氏はヘッジ ファンド運営で設けた2億ドル以上の個人資産をもつ、もっとも金持ちの候補だ。しかし政策テーマについてことあるごとに立場を変えてきた、風見鶏的な選挙 活動が広く批判されている。「イデオロギーではなく自分の実務能力を売り物にしてきたなら、ロムニーは今ごろ躍進しているはずだが、今までそうしてこな かった」とクック氏。

やはり共和党候補では、アリゾナ選出のジョン・マケイン上院議員もマイク・ハッカビー前アーカンソー州知事も、経済に強いという定評はない。そして局地的 な不景気にずっと見舞われているミシガン州の予備選で、この3人がぶつかるわけだ(訳注・ミシガンではロムニー氏が勝った)。しかしハッカビー氏は一般受 けする経済ポピュリズムのメッセージを繰り返し展開するようになったし、マケイン氏はこれまでもずっと利権誘導型の政治を厳しく批判してきて、2人とも支 持率を上げている。

それでもほとんどの専門家は、本選のころになればイラク戦争がテーマとして再浮上しているはずだと見越しているが、それでも最重要テーマは経済のまま本選 にいくだろう。1992年大統領選を参考にするなら、選挙では政治テーマよりも経済が優先するものだ。1992年には米失業率が6月にピークに達し、そこ から減り始めた。しかし有権者たちは11月になってもまだ景気を心配し続けて、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領に2期目を与えずにビル・クリントン氏を大統領に選んだ。

1992年の大統領選はそのほかにも、やはり経済を主要テーマに掲げて出馬したロス・ペローという第3の候補の存在によって、混乱に拍車がかかった。 2008年に米経済が不況に陥れば、今回の大統領選も同じような展開になり得る。不況によって「最大の恩恵を受けるのは、もしかしたらマイケル・ブルーム バーグ(ニューヨーク市長)かもしれない。経営者としての経験を全面に打ち出す資格が、申し分なくあるわけだし」とギャラガー氏。「一方でイラクが主要 テーマだったとしても、市長の立場では大したことは言えないし」


市場の動きのが、早かったね。