木曜日, 1月 31, 2008

ヒラリーも無視できないユーチューブは米大統領選の“真の勝利者” 【週刊・上杉隆】

ダイヤモンド・オンライン

 28日、ブッシュ大統領の最後の一般教書演説が行われた。現職米大統領の重要なスピーチにもかかわらず、全米の関心はあまり高くないようだ。メ ディアの視点は、概して大統領キャンペーンに向かっている。大統領選挙報道と比して、ブッシュ氏のあまりに見事なレームダッグ状態に、半ば驚きを禁じえな い。

 ここ数週間、筆者の自宅のテレビのチャンネルはCNNに固定されたままだ。これほど米国のニュースを見続けているのは「ニューヨークタイムズ」で 働いていた以来のことではないか。幸いなことに当時と違って、ブッシュ氏の顔がテレビ画面を占領することは多くはない。あらゆる価値観をぶつけ合う今回の 大統領レースは、他の政治報道はもちろん、どんなテレビドラマよりも白熱しているように感じる。全米のテレビ局にとっても、大統領選挙の多様性が増したこ とは、高視聴率をもたらす好材料となっているだろう。

◇ 政治の世界で完全に市民権を得たユーチューブ

 今週から来週にかけて、米大統領レースは前半の大きなヤマ場を迎える。全米22州で予備選等が行われるスーパーチューズデーを前に、それぞれ30 日に共和党、31日に民主党の討論会が開催される。CNNを初め全米のテレビ局は、スター記者や有名キャスターを投入して、4年に一度の大イベントに花を 添える。

 これからしばらくの間は、NFLのスーパーボール中継には及ばないまでも、全米の何千万人がこの政治ショーに釘付けになるだろう。そしてそれはテレビだけに限らない。

 前回の選挙では想像だにできなかったひとつのメディアが台頭し、選挙報道と選挙そのものに大いなる影響を及ぼし始めている。

 その新参メディア、ユーチューブは、いまや政治に欠かせないツールとなった。

 今回の大統領選での討論のほとんどはユーチューブで視聴可能だ。この無料動画公開サイトは、あっという間に政治の世界に入り込んだ。登場当初は、著作権等の関係で目の敵にされていたユーチューブだが、いまや、米国ではすっかり市民権を得ている。

 昨年11月、CNNは、そのユーチューブとの共催で大統領討論会を開いた。一般市民からの投稿動画によって、直接大統領候補に質問を投げるという新しい試みは、メディアの選挙報道のスタイル変更を強烈に印象付けた。

 この動きを無視できないとみた各陣営も同様に動く。ユーチューブ内の独自チャンネルにある「ユーチューズ」に自らの演説をエントリーし、ネットユーザーに直接訴えかける戦術を取り始めたのだ。

 まもなく始まるスーパーチューズデーの模様もユーチューブによって全世界に伝えられるだろう。民主党について言えば、全米22州のうち、イリノイ 州とジョージア州以外は、事前の世論調査でオバマ氏が負けている(1月30日現在)。だがその直前にあたる29日、党内で大きな動きがあった。

◇ オバマ支持を表明したケネディ一家の影響力

 民主党のエドワード・ケネディ上院議員(JFKの実弟)、パトリック・ケネディ下院議員(同じく甥)、キャロライン・ケネディ氏(JFKの長女)の3人の「ケネディ」が、オバマ候補への支持を打ち出したのだ。

 いまなお、民主党におけるケネディ・ファミリーの「神話」は無視できない。およそ半世紀前の伝説的な米大統領は、死してなお、生ける「候補」を走らせる。

 とりわけ、これまで一定の候補を支持することを控えていたエドワード・ケネディ氏が、自らの意思を明確にしたことは、民主党の大統領指名レースに少なからぬ影響を与えると見られている。

 これこそ、クリントン陣営のもっとも恐れていたことだ。ケネディ氏は、クリントン夫妻のネガティブキャンペーンを痛烈に批判し、民主党内の候補者レースに、個人攻撃を持ち込んだことに強い不快感を示したのだ。

 じつは、米政界で伝説的ともいえるケネディ一家と、クリントン夫妻は親しい友人同士でもあった。だが、ケネディ氏はかつてのファーストレディを将来の大統領候補と認めない選択を下した。

「変化の兆しが感じられる。オバマ候補はあのキング牧師の言葉を完全に理解している。彼には改革の情熱を感じる。それをやり遂げる能力がある。兄(ジョン)と同じ共通の目標を掲げて、米国を変化に導くのは彼をおいて他にいない」

 29日、ケネディはアメリカン大学の講演でこう語り、隣に座るオバマを褒め称えた。奇しくもそこは1963年、暗殺直前のジョン・F・ケネディ元大統領がスピーチをした場所でもある。45年後、兄と同じ演壇に立った弟は、世論調査で苦戦するオバマ氏への支持を訴えた。

 ケネディの支持を取り付けたことは、民主党のエスタブリッシュメント層、及びヒスパニック系の投票行動に影響を与える可能性がある。ヒスパニック 系からの圧倒的な人気を誇るのはクリントン前大統領だが、ケネディ氏もまた同じくヒスパニック系からの信頼が厚い。不利と見られていたニューヨーク州、カ リフォルニア州での世論の動きがみえなくなったとCNNに出演した複数の政治アナリストがそう分析している。ヒラリー・クリントン氏にとっては脅威になっ た。

 サウスカロライナ州の予備選挙でのクリントン氏の思わぬ大敗は、オバマ氏に勢いづかせたとされるが、ケネディ氏の演説によってさらなるダメージを 受けたようだ。CNNの調査では、民主党員の19%が、ケネディの演説に影響を受けたと答えている。天王山のスーパーチューズデーを控えて、クリントン陣 営にとってはまったくもって嬉しくないニュースである。

 サウスカロライナ州の予備選直前には、リベラル層に大きな影響を持つ「ニューヨークタイムズ」紙が、クリントン支持を打ち出したばかりだった。だが、オバマ氏の地滑り的勝利に歯止めをかけるには至らなかった。

◇ ユーチューブに登場したオバマ・ガールが話題に

 振り返れば、キャンペーンのキーとなるポイントで、オバマ氏には常に強力な「援軍」が現れている。今週は「ケネディ・ファミリー」だが、最初の「援軍」こそ今回の大統領選の特徴を如実に表す人物でもあった。

 ユーチューブに登場したセクシーな女性、オバマ・ガールは、"I Got a Crush...On Obama"(「オバマに首ったけ」)という歌に合わせて、水着姿で悩ましく踊るオバマ・マニアだ。「援軍」とは、オバマ氏に恋して、彼への支持を訴える 若き女性の投稿動画のことだ。
http://jp.youtube.com/watch?v=wKsoXHYICqU

 この動画はユーチューブでブレイクし、大統領キャンペーンの前半の話題を独占した。

 オバマ・ガールの登場に喜んだのは、パソコンの前に座って鼻の下を伸ばした男たちばかりではない。ユーチューブの政治ディレクターであるスティーブ・グローブも、大いにほくそ笑んだに違いない。

 彼は、ボストングローブ紙とABCテレビの記者でもあったが、ユーチューブ黎明期の頃、すでにその政治的役割を予言し、大統領選挙への関与を期待 していた。まさしくオバマ・ガールが、その期待に応えたのだ。彼女はその後、3大ネットのバラエティ番組などに呼ばれ、オバマ氏へのラブコールを投げかけ ている。ユーチューブ発の政治スターの誕生であった。

◇ 共和党候補はユーチューブでも人気薄

 筆者はここまで、CNNをはじめとした米国のテレビ局は大統領選挙ばかりを報じているように書いてきたが、必ずしもそれは正確な表現ではない。正 確に記せば、民主党の大統領指名争いばかり報じている。さらに精密な表現でもってすれば、ヒラリー・クリントン氏とバラク・オバマ氏という2人の候補者の 争いばかりを報じている。民主党の指名争いの3位につけているジョン・エドワーズ氏の出番はあまりない。

 共和党についても同様だ。マケイン氏とロムニー氏が指名を争っているが、わずか2ヵ月前には次期大統領の「大本命」であったジュリアーニ氏の影は、いまや信じ難いほど薄い。

 フロリダ州、ニューヨーク州などの大票田での逆転勝利にかけるジュリアーニ氏だが、米国民の関心は、「ブロークンウィンドウ理論」を駆使して、ニューヨークに安全を取り戻し、9・11テロ直後の対応を含め、「危機管理」の象徴ともいえる彼に支持が戻る気配はない。

 米国民の関心は、わずか数ヵ月の間に、イラク戦争、テロなどの「危機管理」から、サブプライムローンなどの内政および経済問題に移行してしまったのだ。

 ユーチューブでの共和党候補のヒット数は伸び悩んでいる。この新しいメディアでの人気は、そのまま大統領選挙の特徴を反映している。グローブの意図した通り、もはや政治はユーチューブを無視できない状況にある。

 この動きは米国に特有のものではない。英国でも、首相官邸がブラウン首相の演説動画を載せ、英王室も「ロイヤル・チャンネル」を開設し、エリザベス女王やチャーチル皇太子の映像を紹介し始めている。
http://jp.youtube.com/user/TheRoyalChannel

 日本でも福田首相が、「自民党チャンネル」の中で自らの政策を訴え始めた。
http://jp.youtube.com/watch?v=IAUT0498Acs

 これらの動きをみて、2008年の政治シーンで、ひとつだけ確かなことがいえるだろう。それは米大統領選挙の勝者が誰になろうと、新しい政治の主役のひとりにはユーチューブが確定しているということだ。

土曜日, 1月 19, 2008

米大統領選の最大テーマは経済に

フィナンシャル・タイムズ 2008年1月19日(土)12:07

(フィナンシャル・タイムズ 2008年1月14日初出 翻訳gooニュース) ワシントン=エドワード・ルース

今年の米大統領選のメインテーマはどうやら久しぶりに、「大事なのは経済なんだよバカモノ」になりそうだ。1992年の大統領選でクリントン陣営が掲げた (そしてそれによって勝利を獲得した)選挙テーマだ。とはいえウォール街ではもう数カ月前から、「(選挙で)大事なのは経済なんだよ」と心配されてきたの だが。

米国経済が不況に陥る危険は50%と多くの経済学者が警告する中、ここ数日来、3人の大統領候補が(民主党のバラク・オバマ上院議員とヒラリー・クリントン上院議員、共和党のルディ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長)相次いで、それぞれの景気刺激策を発表した。

これはつまり候補たちがみな、最新の世論調査結果を重視していることの現れだ。調査によると有権者がいま最も重視している政策テーマは、経済。2007年にはイラク戦争だったものが、経済に取って代わられたのだ。

1月8日のニューハンプシャー州予備選の出口調査によると、民主党支持者の38%と共和党支持者の31%が、ほかのテーマを大きく引き離して、最大の関心事は経済と答えている。

さらに目を引いたのは、共和党支持者の80%と民主党支持者の98%が、経済について「とても心配している」あるいは「やや心配している」と答えたこと だ。両党支持者が関心事として挙げた3大テーマはほかに、移民問題と医療だが、いずれもやはり経済的な要素を背景に抱えている。

「目新しいのは、今や共和党支持者たちさえもが経済の悪化をひどく恐れていることだ」 ワシントンの政治アナリスト、チャーリー・クック氏は言う。「つい最近まで、経済に警鐘を鳴らしていたのは民主党支持者だけだったのに」

米経済の悪化がどの候補に有利に働くか、憶測は危険だと世論調査の専門家たちは言う。しかし民主党候補のなかでは、クリントン候補が有利になるだろうと見 られている。たとえば、経済問題が最大の関心事と答えたニューハンプシャーの民主党支持者たちは、オバマ議員よりもクリントン議員を高く支持した。

平均世帯年収5万ドル(約600万円)未満の有権者たちが一番支持するのも、クリントン議員だ。これに対してオバマ議員は、「希望と変化」を唱え、より教 育レベルの高い有権者の支持を集めている。平均世帯年収10万ドル(約1200万円)以上の有権者は、圧倒的にオバマ議員を支持しているのだ。

「一般論として、希望や変革という選挙メッセージに有権者が好意的に反応するのは、経済が好調なとき」 インターナショナル・ストラテジー・アンド・イン ベストメントのワシントン事務所のトム・ギャラガー氏はこう言う。「私が思うに、不景気になれば、自分には実行力があると主張する候補が有利になる」

一方で、不景気になれば有利になる共和党候補は、経歴だけをとれば明らかに、ミット・ロムニー氏のはずだ。前マサチューセッツ州知事のロムニー氏はヘッジ ファンド運営で設けた2億ドル以上の個人資産をもつ、もっとも金持ちの候補だ。しかし政策テーマについてことあるごとに立場を変えてきた、風見鶏的な選挙 活動が広く批判されている。「イデオロギーではなく自分の実務能力を売り物にしてきたなら、ロムニーは今ごろ躍進しているはずだが、今までそうしてこな かった」とクック氏。

やはり共和党候補では、アリゾナ選出のジョン・マケイン上院議員もマイク・ハッカビー前アーカンソー州知事も、経済に強いという定評はない。そして局地的 な不景気にずっと見舞われているミシガン州の予備選で、この3人がぶつかるわけだ(訳注・ミシガンではロムニー氏が勝った)。しかしハッカビー氏は一般受 けする経済ポピュリズムのメッセージを繰り返し展開するようになったし、マケイン氏はこれまでもずっと利権誘導型の政治を厳しく批判してきて、2人とも支 持率を上げている。

それでもほとんどの専門家は、本選のころになればイラク戦争がテーマとして再浮上しているはずだと見越しているが、それでも最重要テーマは経済のまま本選 にいくだろう。1992年大統領選を参考にするなら、選挙では政治テーマよりも経済が優先するものだ。1992年には米失業率が6月にピークに達し、そこ から減り始めた。しかし有権者たちは11月になってもまだ景気を心配し続けて、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領に2期目を与えずにビル・クリントン氏を大統領に選んだ。

1992年の大統領選はそのほかにも、やはり経済を主要テーマに掲げて出馬したロス・ペローという第3の候補の存在によって、混乱に拍車がかかった。 2008年に米経済が不況に陥れば、今回の大統領選も同じような展開になり得る。不況によって「最大の恩恵を受けるのは、もしかしたらマイケル・ブルーム バーグ(ニューヨーク市長)かもしれない。経営者としての経験を全面に打ち出す資格が、申し分なくあるわけだし」とギャラガー氏。「一方でイラクが主要 テーマだったとしても、市長の立場では大したことは言えないし」


市場の動きのが、早かったね。

金曜日, 1月 18, 2008

官僚の埋蔵金隠匿を容認する福田政権の杜撰な予算編成

ダイヤモンド・オンライン

 昨年来の株式相場の急落が一向に収まらず、景況感が厳しく冷え込む中で、18日、春の通常国会が召集され、年末にまとまった政府原案を軸にした予 算審議が始まることになった。ここで問題なのは、政府・与党が、この政府原案で、巨額の“埋蔵金”、つまり特別会計に秘匿されている剰余金の存在を有耶無耶にしたまま、一段と景気の足を引っ張る予算を押し通そうとしていることである。いったい、どこまで“官製不況”を増幅するつもりなのか。福田康夫内閣に 速やかな再考を求めたい。

 まず、霞が関の官僚たちが全容を明かそうとせず、福田首相が行政の長としての使命を果さずに、その“隠蔽”を黙認している埋蔵金の実体を推測して みたい。前回のこのコラムでも触れたデータだが、手掛かりとなるのは、2005年4月の経済財政諮問会議(当時の議長は小泉純一郎元首相)に提出された 「各特別会計の改革案」である。この改革案には、主要な31の特別会計の資産・負債状況がどうなるか、2005年度、2009年度、2014年度の3時点 について「現状維持ケース」と「改革ケース」に分けて6つの試算が明記されている。

◇ 特別会計の事業終了時には埋蔵金68兆円が見込まれる

 この中で、すでに完了した2005年度(現状維持ケース)について、資産から負債を引いた差額(剰余金)に着目。これを官僚たちが過去に溜め込ん できた埋蔵金と考えると、その金額が最も大きいのは、財務省所管の「財政融資資金特別会計」で、その剰余金額は実に26兆7291億円に達している。次い で、同じく財務省所管の「外国為替資金特別会計」に6兆2804億円、農林水産省の「国有林野事業特別会計」に5兆7120億円、厚生労働省所管の「労働 保険特別会計」に2兆5634億円、国土交通省所管の「空港整備特別会計」に2兆1400億円の剰余金が存在するという。これら5つの特別会計の合計だけ ですでに43兆4249億円の埋蔵金が溜まっている計算だ。

 そして、それぞれの特別会計で終了時点は異なるが、将来、事業を終了する際に、それぞれの特別会計が巨額の資産・負債差額を生むと見込まれてい る。この5つの特別会計でみると、その差額は、「財政融資資金特別会計」が2037年度に53兆4045億円、「外国為替資金特別会計」が2005年度に 4兆2803億円、「国有林野事業特別会計」が2006年度に4兆4961億円、「労働保険特別会計」が2014年度に4兆1523億円、「空港整備特別 会計」が2012年度に2兆3077億円といった具合である。これらを単純合計すると、実に68兆6409億円の埋蔵金が発生すると見込まれている計算だ。

◇ 政府原案の埋蔵金取崩額はたった10兆円足らず

 さて、そこで最も問題なのは、こうした43兆円とか68兆円といった規模の埋蔵金の蓄積や発生が2005年4月の段階で見込まれていたにもかかわらず、その実体の把握・公表がまったく行われないまま、今回も昨年末の政府原案が作成されてしまったことである。

 もちろん2005年度末段階の剰余金は、それぞれの特別会計が抱える様々なリスクを勘案すれば、直ちに全額を一般会計に戻してよいものとは言えま い。しかし、これほど巨額の剰余金をそっくりそのまま残しておく必要があるはずもない。むしろ、一般会計に比べて監視の眼が行き届かない特別会計に、これ ほどの剰余金があるとすれば、壮大な無駄遣いの温床となっても不思議はない。

 ちなみに、今通常国会で審議される2008年度予算の一般会計の歳入歳出規模は、83兆0613億円。第2の予算である特別会計で、43兆円とか68兆円といった埋蔵金が蓄積・発生しているならば、これを一般会計に戻すだけで、どれほど財政再建が進むかわからない。

 実は、今回の政府原案では、あの巨額の剰余金を抱える「財政投融資特別会計」から9兆8000億円の準備金を取り崩し、国債の償還に充当して国債 発行残高を圧縮することになっている。しかし、その金額はこの特別会計が2005年度末にかかえていたはずの剰余金(26兆7291億円)の4割にも満た ない。果たして、これで取崩額として妥当なのか。なぜ、他の特別会計からは一般会計への繰り入れをしないのか、まったくアカウンタビリティ(説明責任)が 果されていない。

◇ 埋蔵金を使えば消費税増税も不要

 補足しておくと、新規国債の発行額だが、過去3年間についてみると、2005年度に2兆2000億円、2006年度に4兆4000億円、そして 2007年度に4兆6000億円の削減を実現してきた。ところが、2008年度予算では、その削減額がわずか1000億円に縮小してしまった。

 さらに言えば、政府・与党は、今夏にも総選挙を終わらせたうえで、来年度に消費税を引き上げる構えを見せてきた。具体的には、政府は2009年度 に、基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げる方針を決定済みだ。そして、その財源として有力なのが消費税の税率引き上げである。政府は、現行5%の 消費税率を1%程度引き上げて、必要な財源の2兆3000億円あまりを補う腹とされている。だが、溜め込まれた巨額の埋蔵金を取り崩せるのならば、こうし た増税は必要が無いことになる。

 また、埋蔵金を有効活用することによって余裕が出てくるとすれば、企業の国際競争力に直結する課題とされながら、財源不足から先送りされてきた法 人税の引き下げ余地も出てくる。この問題では、日本経団連の御手洗冨士夫会長がかねて「現在の40%(程度の法人税実効税率)を30%に引き下げるべき だ」と要求してきた。実際に、ドイツや英国など欧州諸国で現在、法人税の28~29%程度への引き下げ競争も起きており、大きな懸案とされていた。が、や はり、歳入不足に陥ることが懸念されて、手付かずだったのである。

 ここで埋蔵金問題に対する姿勢が甘いという点で、政府だけでなく、 野党・民主党にも苦言を呈しておきたい。同党は16日の党大会で、今国会を「ガソリン値下げ国会」と名付けて、近く期限を迎えるガソリン税の上乗せ暫定税 率の延長を阻止することに全力をあげる構えを見せている。1リットルあたり155円前後に上昇してきたレギュラーガソリンを25円程度引き下げる効果があ るからだ。だが、道路特定財源全体としてみれば、この暫定税率の延長阻止は、国・地方をあわせて2兆6000億円程度の減税措置に過ぎない。

 ガソリン値下げ要求は、政権交代を目指す小沢一郎代表の肝煎りの戦略と言い、筆者は、そのことをかかげること自体にあえて異を唱える気はない。しかし、規模・効果から見て、もっと重要なのは埋蔵金論議であり、これを避けてよいとも思えない。

◇ 支持率下落を食い止めるには埋蔵金は避けて通れない課題

 昨年、日経平均株価が11%下落するなど、世界の主要市場で唯一2桁マイナスの“独り負け”市場となった東京株式市場。この東京市場では、今年に 入ってからも、日経平均株価がわずか8日間で昨年末より1800円以上も下げる急落が続いている。長年、低成長を放置してきた日本政府に対する市場の不信 感は非常に強いと言わざるを得ない。

 その一方、懸案の補給支援特措法が可決・成立したにもかかわらず、年初からの各種の世論調査における福田内閣の支持率が下がり、逆に、不支持率が 上がる傾向がどんどん強まっている。この傾向にも、通常国会に向けて、福田政権の経済運営手腕への不信感を強める大衆意識が見て取れるのが実情だ。

 まず、有耶無耶になりつつある埋蔵金論議にメスを入れ、個人消費、企業の設備投資、輸出と並ぶ4大経済主体の1つである政府部門の予算を正常化することが経済運営で避けて通れない大きな課題となっている。



なめられっぱなし....

木曜日, 1月 17, 2008

ねじれ異常国会閉会で思う、福田長期政権の予感 【週刊・上杉隆】


ダイヤモンド・オンライン

 今週(1月15日)、第165回国会が閉会した。

 振り返れば、なんと、まぁ、騒々しい臨時国会であったことだろうか。福田首相自身も、一昨日(火曜日)の記者会見で、その異常性について言及している。冒頭から、騒動続きの国会であったことは確かだ。

 昨年9月12日、取材を通じてある程度の予測はついていたものの、安倍前首相のあの突然の辞任には、筆者も驚きを禁じえなかった。『官邸崩壊』は免れないとは思っていたもの、新テロ特措法の成立を宣言した所信表明演説の直後の辞任など、いったい誰が想像できただろうか。

 すでに、遠い過去の話のようになっているが、じつは、あの前首相の「辞任劇」は、今回の臨時国会の中で起きた出来事だ。忘れそうになるのは、それほど、この国会がその後もドタバタ続きだったからであろう。

 臨時国会の終了によって、福田政権はとりあえず一つ目の関門を抜けたようだ。今後の政局を分析する上でも、この「未常識の世界」(中川秀直元幹事長)は重要だ。最初にこの越年国会を軽く振り返ってみる。

◇ 新テロ特措法のための国会

 辞任直後の自民党総裁選では、本命の麻生太郎候補が、「麻生クーデター」によって消えた。実際は、8派閥の談合による福田支持が麻生支持を上回っただけなのだが、陳腐な「陰謀論」が政治闘争に花を添えた。

 福田政権の誕生は、自民党の延命措置であったが、いざ国会が再会すると、やはり7月の参院選敗北の後遺症が大きく響く。

 参議院で野党が過半数を占めるという「ねじれ現象」によって、審議は事実上ストップした。福田政権は、11月までの法案通過がゼロという異常事態を余儀なくされる。

 その状況を打破するため、「福田=小沢」による党首会談が開かれた。しかし、唐突な「大連立」構想が持ち上がったため、与野党の関係はかえって膠 着化した。会談自体が否定されたうえに、小沢代表の辞任表明などの「茶番」もあり、「大連立」構想が陽の目をみることはなかった。

 窮した福田内閣は、再々延長による「越年国会」を決断、結局、憲法59条に基づく衆議院の3分の2による再議決を経て、懸案の新テロ特措法を成立させたのだ。

 このようにこの臨時国会は、まさしく新テロ特措法のための国会だったといっても過言ではないだろう。だが、もちろんそればかりではなく、他にも成果はあった。

◇ 小泉・安倍とは異質の「自ら旗を挙げない」政治手法

「薬害C型肝炎救済法」は、計26本通過した法律の中でも特記すべきものだ。12月25日に「議員立法」での成立を指示してから、わずか2週間での法制化は、福田首相が世論の動向を意識したからだといわれる。

 実際、他の通過法案も、たぶんに世論の動向に影響を受けた痕跡がうかがえる。

 たとえば、「振り込め詐欺救済法案」では、高齢者など裁判に訴える余裕のない被害者を速やかに救済するため、預金などを補償させる仕組みを創った。もちろん、多発するこの種の事件を反映して成立させた法案だ。

「改正温泉法」、「改正銃刀法」も、それぞれ、東京・渋谷の温泉施設での爆発事故、長崎・佐世保などでの銃乱射事件を意識して、成立を急いだ。

 さらに、国会議員の政治団体への原則1円以上の領収証公開を義務付けた「改正政治資金規正法」や、永住帰国した中国残留邦人への基礎年金の満額支給などを決めた「改正中国残留邦人支援法」は、薬害肝炎と同じく、世論に押されて成立したものだ。

 このように、前政権のKYぶりを「他山の石」としたのか、福田政権は、あくまで世論の動向を見極めながら、低姿勢の政権運営を選択しているように思われる。

 いわば、小泉=安倍政権が、「自ら旗を立てて、参集した賛同者とともに政治を行なう手法」であるとするならば、福田首相は「周囲の賛同者にそれぞれ旗を揚げさせて、その中から最善のものを選んで政権運営を行う手法」といった違いだろうか。

 こうして傾向は、福田首相の目指すものを見極めるうえで取材の格好の指針となる。

◇ マスコミは内閣改造断念と報じたが…

 たとえば、昨年末の訪中以来、各メディアが報じていた「年明けの内閣改造」も、福田首相のそうした政治手法を考えれば、そもそもが「誤報」だった可能性が高い。

 福田首相は、中国での内政懇(外遊中の首相が同行記者団に内政について懇談するもの)で、「内閣改造については白紙で、年明けにするかしないか、考える」としか語っていない。

 臨時国会閉会直後の17日には自民党大会が控え、18日には通常国会が始まる。さらに、本予算や日切れ法案(租税特別措置法改正案など)を抱えて 政治日程に余裕はない。そうした状況で、内閣改造などありえるだろうか。状況を十分見極めてからでしか決断しない福田首相が、支持率をさらに悪化させる可 能性のある内閣改造という賭けに出ることはあるのだろうか。

 筆者はきわめて懐疑的であった。じつは、訪中前、福田は閣僚の一人にこう語っている。

「内閣改造をすると、またしてもマスコミが『事務所費用だ』『身体検査だ』と書きます。そうすると、政権は無用な混乱をきたします。ここは、身綺麗な皆さんに、是非とも夏のサミットまで辛抱していただきたい」

 こうして筆者は年末に、「内閣改造はサミット後」という記事を『週刊文春』に寄せた。果たして、年明けの内閣改造はなかった。たまたま当たった結果を誇っているわけではない。福田首相の性格を考えれば、この時期の改造を見送るのは当然の帰結であったのだ。

 だが、各メディアは「福田首相 内閣改造を断念」と報じた。そもそも考えていないことを「断念」とされるのだから、首相もたまったものではないだ ろう。だからこそ、年頭の記者会見で、福田首相は「勝手にマスコミが(内閣改造に意欲と)書いただけです」とわざわざ苦言を呈したのだ。

「少なくとも、内閣改造や総選挙ということを、福田総理が考えたということはないと思います」

 昨日、福田首相の最側近で、毎日のように携帯電話で連絡を取り合っている衛藤征士郎衆議院議員も、筆者にこう述べた。

 じつは、内閣改造についてのメディアの「誤報」の例をあえて述べたのには理由がある。

 なぜなら、いま各マスコミはまたしても、今年中の「解散・総選挙は避けられない」といった報道を盛んに流しているからだ。

 本当にそうだろうか。福田首相の性格と、臨時国会での政権運営の方針を見ずして、そう語り、再び同じ過ちを繰り返そうとしている気がしてならない。

 あす(金曜日)から始まる通常国会の最大の関心事は、解散・総選挙の是非と「日切れ法案」等の成立の可否となっている。

 ねじれ国会によって、道路特定財源の暫定税率維持のための租税特別措置法改正は、年度内の日切れまでの成立は不可能だというのが大方のメディアの見方だ。その上で、追い詰められた福田首相は、解散を余儀なくされるといったストーリーを作っている。

 だが、筆者は、自ら旗を掲げない福田首相が、果断な決断を要する解散総選挙に踏み込むとはどうしても思えない。

◇ 福田首相は長期政権を視野に入れている?

 伊吹文明幹事長は、火曜日の記者会見で、通常国会の早い段階で予算関連法案を、本予算と同時に衆議院に提出する方針を明言している。ということ は、再び憲法59条を使って60日ルールに基づく3分の2議決による年度内成立が可能となるということだ。本予算は言うまでもなく、衆議院に先議権があ り、30日ルールが適用される。そしてこの難局を乗り切れば、当面、福田政権への大きな障害は消える。

 その場合、7月の洞爺湖サミットを控える福田首相が、衆議院の解散に打って出る可能性は極めて低いだろう。父・福田赳夫首相は東京サミットを決め たものの、「第2次角福戦争」に敗れて東京サミットにOBとしてしか出席できなかった。外交好きの福田首相が、国際会議の議長を目前で手放したくないとい う理由の他にも、こうした福田家の因縁が政治決断を左右させるかもしれない。

 付け加えるならば、通常国会の終盤の5月末には、第4回アフリカ開発会議が横浜で開かれる。火曜日の記者会見で、福田首相はその会議の成功にも並々ならぬ意欲を示している。

 このように、臨時国会を丁寧に振り返り、政権の政治手法を検証すれば、福田首相の慎重な方針が、通常国会で突然変わることはないと思われる。

 前出の衛藤議員は、約2年前に福田首相が彼に述べた次の言葉を教えてくれた。

「首相は、4年間できないような人ならば、ならないほうがいいでしょう。1年間全力投球なんていう人はだめですね。政策は予算を1回組めば済むも のではなく、3回、4回と予算を組んで初めて実行できるものです。首相になったら、予算を通し、きちんと執行されるかも監視しなければならない。それに付 随するさまざまな法律も通さなければならない。そうすれば、4年なんてあっという間です」

 メディアの報道とは違って、案外、福田首相は、すでに長期政権を視野に入れているのかもしれない。



残念ながら....

木曜日, 1月 10, 2008

官邸官僚の前に潰えた独立行政法人改革のお粗末

ダイヤモンド・オンライン

 2007年12月に閣議決定された独立行政法人(独法)の整理合理化計画。現在102ある独法は86まで減るものの、その実態は、すべて同じ所管省庁内での統合にすぎない。福田内閣の一大テーマであった独法改革は骨抜きにされ、単なる数合わせに終わった。

 渡辺喜美行政改革担当相のひとり相撲となった「独立行政法人改革」は、年の瀬も迫った12月24日の整理合理化計画の閣議決定でようやく幕を引い た。結果は、官僚側の大勝利といってよい。マスコミの援護射撃のみを頼りにした渡辺行革相だったが、官邸を動かす内閣官房の「官邸官僚」の前になすすべは なかった。

 福田康夫内閣にとって今回の独法改革は、安倍晋三前内閣のいわば“置き土産”である。農林水産省所管の独法、緑資源機構の談合事件摘発、同事件へ の関与を疑われた松岡利勝農水相(当時、以下同)の自殺という安倍政権を直撃した激震のなかで、安倍首相は緑資源機構の廃止を決定。同時に独法全体の「ゼ ロベースからの抜本見直し」を佐田玄一郎行革担当相に命じたが、その佐田氏も架空の事務所費計上問題で辞任、後任に起用した渡辺氏に委ねたのである。

 渡辺行革相は、行革担当相就任直後から新人材バンク(官民人材交流センター)設立をめぐり霞が関の中央省庁と“戦闘状態”に入ったが、安倍首相、塩崎恭久官房長官などの「安倍チーム」のバックアップでなんとか乗り切った。

 しかし、このときの渡辺行革相に対する霞が関の抵抗は前例がないほど執拗だった。財務省が新人材バンク案に反対する冊子を公然と配布しただけでな く、経済産業省は行革担当相の事務局である内閣官房・行革推進本部事務局に出向していた審議官を異動させ、後任を出すのを拒否。また、財務、経産両省は行 革担当大臣室に出向させていた事務官を引き揚げるということまでしている。

 小泉純一郎内閣では、「官邸」に睨み殺しにされた霞が関だったが、安倍内閣ではほぼ完全に息を吹き返したのである。

◇ 渡辺行革相は蚊帳の外 官邸主導で改革骨抜き

 2007年7月の参院選での自民党惨敗から1ヵ月後、安倍首相の突然の辞意表明で政権は崩壊し、代わった福田内閣でも渡辺氏は行革担当相として留任。そして新人材バンクの次の一大テーマとして打ち上げたのが「独法整理」である。

 しかし、霞が関の全府省は行政改革推進本部のリスト提出の求めに、8月、9月の2度とも「廃止すべき法人はない」とゼロ回答で応じた。これに対し 渡辺行革相は、2004年に行革推進本部内に設置され、独法改革を検討してきた「行政減量・効率化有識者会議」(座長は茂木友三郎・キッコーマン会長)の 「報告書」提出を機に一気に反転攻勢に出ようとした。

 報告書には国土交通省所管の都市再生機構、住宅金融支援機構、経産省所管の日本貿易保険など「11法人の廃止・民営化」が明記されていた。また国 民生活センター(内閣府)、国立女性教育会館(文部科学省)など7法人の統合・移管や、統計センター(総務省)、国立病院機構(厚生労働省)の非公務員化 なども盛り込まれていた。

 2007年11月27日、渡辺行革相はこれら11法人の名を明記した関係資料を用意し、記者会見で「報告書」をぶち上げる算段を固めていた。とこ ろが茂木座長の会見寸前になって、資料は回収されてしまった。差し替えられた資料からは11法人の名が削除されていたのだった。渡辺、茂木両氏は記者会見 の前に町村信孝官房長官、その後、福田首相の執務室を訪れ「報告書」を説明している。官邸筋は、町村官房長官の段階で法人名公表にストップがかかったと見ており、福田首相もそれに同意したと考えてよい。

 記者会見に臨んだ茂木座長は、「この段階で特定の法人名を出さないほうがいいという政府の判断だ」と説明した。これは「独法改革」が渡辺、茂木両 氏から取り上げられ、官邸主導で行なう方向が動かしがたいものになったことを認める発言でもある。この段階ですでに勝敗は決していたのである。

 その後、渡辺行革相と関係省庁の大臣との交渉が相次ぎマスコミも連日のように派手に取り上げたが、それは「抜本改革はしない」という官邸が決めたシナリオの下での茶番劇だった。

 閣議決定された整理合理化計画の最終調整を実際に行なったのは、町村官房長官(旧通商産業省出身)、二橋正弘官房副長官(元自治事務次官)が取り 仕切る官僚の牙城・内閣官房である。小泉、安倍内閣時代の官邸主導、政治主導が、福田内閣では「官邸官僚」主導となったことを如実に示している。

◇ 単なる数合わせで実態に変化はなし

 そもそも独法は、2001年の中央省庁再編で、事務・事業にかかわる「現業部門」を分離し、透明で効率的な運営をするということで57法人が新設された。

 だが、小泉内閣の「特殊法人改革」でその性格は著しく変質した。小泉首相は石油公団、道路公団など各省の大黒柱ともいうべき大型特殊法人の「解 体」を行なったが、それら特殊法人の旧来の業務のほとんどが独法として生き残った。つまり、看板がかけ替えられたにすぎない。「独法は行政改革のゴミ 箱」(総務省幹部)とするボヤキが出るのも当然で、現在、その数は102法人、2007年度には約3兆5000億円の国費が投入され、約13万人の職員がいる。

 今回、閣議決定した整理合理化計画では、廃止・民営化や統合によって削減が決まったのは16法人、国費の投入も約1500億円縮減できるとしている。

 しかし、それらはあくまでも官僚お得意の“数合わせ”にすぎない。最終局面で福田首相は、“改革の本丸”とされた国交省所管の都市再生機構が行な う賃貸住宅事業の民営化と、住宅金融支援機構の組織見直しについて2~3年後に結論を出すと裁断したが、これは問題の先送りで、空手形に終わるだろう。経 産省所管の日本貿易保険も、政府全額出資の特殊会社化されるが、政府が持ち株放出を行なわないことが前提条件になっており、実態は変わらない。

 結局、今回の「独法改革」で実現した大型法人の廃止は、安倍内閣で決定ずみの緑資源機構だけだ。しかも、その緑資源機構にしても、水源林造成は農 水省所管の独法、森林総合研究所に吸収されて生き残る。まさに“モグラたたき”と同じで、たたかれて一時的に姿を消したようでも、衣装を変えて再び頭をも たげてくるのである。そして官僚たちは再び独法に対する批判が強くなると見れば、次なる新たな衣装(組織形態)を考え出すことだろう。

 経産省で「改革派」とされた有力OBは古巣への絶望を隠さない。

「優秀な官僚は見切りをつけて辞め、“でも・しか官僚”が国費を食い尽くすという最悪の状態だ」

(ジャーナリスト 生田忠秀)



ここまでなめられても、なお、自公政治にしがみつく心理って、一般的じゃないと思う。
民主党に代わって、何が変わるんだ?って、少なくとも、官僚との癒着にメスをってなら、これまで接点のなかった人間に対応させた方がイイに決まってるじゃん。

情報を握る者に「富」が集中する中国


「一党独裁」と「市場経済」の矛盾
ダイヤモンド・オンライン

 新年明けましておめでとうございます。私は、年末年始を東京で過ごしました。東京の元旦の青空は、本当に鮮やかな青でした。中国で長い間生活している私にとっては、中国では先ずお目にかかれない晴れ晴れとした青空でしたので、特に印象深いものでした。

 東京という日本の首都におけるこの青空は、経済と環境の両立への努力の結果として、積極的に評価していいのでしょう。この面では、日本は一歩も二歩も中国の先を行っているのだと思います。

 一方、経済の活力はあるけれど、混沌として、いつでもスモッグに覆われている中国。発展の段階、その特性の違う両国、新年はどんな展開、交わりをみせるのでしょうか。

◇ 共産党が情報を独占しながら市場経済化を進めることの歪み

 さて、本題にはいりますが、その中国の発展にとって諸刃の剣となっているのが、共産党の一党独裁です。独裁による強権に基づき、自らの方向性をダ イナミックに推進できるというプラスの側面があります。一方、マイナス面は、いうまでもなく、官僚の腐敗、社会の調整弁機能の弱さ、そして一党独裁と市場 経済とが結びついた経済の歪みがあります。

 この内、「一党独裁と市場経済とが結びついた経済の歪み」は、我々ビジネスマンにとって非常に重要な視点であると思います。ここで「一党独裁と市 場経済」を考える前に、そもそも、80年に改革開放が叫ばれるようになるまでの中国において存在した社会主義計画経済というものを見直してみると、この問 題が分かりやすくなります。

 社会主義計画経済とは、共産党が情報を独占することが肝になります。共産党が絶対神であるがごとく、まずは、共産党と共産党員が情報を独占する。 そして、市場の裁量ではなく、共産党員の恣意で全ての財が分配されるというのが計画経済なのです。何を言いたいかというと、現在の社会主義市場経済の「社 会主義」の意味は、すなわち「情報の独占」ということです。情報の独占は、引き続き共産党が維持し、一方で市場経済を導入していることです。

 本来、市場経済の前提は、先ず情報の公開があり、公開された情報を各プレーヤーが享受したうえで、競争し、社会全体が発展するということであると 思います。従って、社会主義市場経済は、同時に情報の独占が存在するという意味で大いなる歪みがあるわけです。中国のその歪みが、いたるところに噴出して いるのが、現在の中国ということです。

 中国共産党も、当然この問題を認識していると思いますし、どんどん情報の透明化をしようと体制を整えております。ただし、私が見ている限り、まだ まだ肝心な情報というのは共産党が握っていますし、それを入手できるのは、やはり周辺の共産党員であったり、その親族であったり。やっと公開されるころに は、ある程度既成事実になっているようなことがまだまだ多いと思います。

◇ 情報操作、市場操作は当たり前富める者がますます富む構造

 そんな状況のなかで、一方で市場があり、裏で最初に情報を得られる人が市場を操作したら、これは絶対勝てますよね。今、世界の商品相場で波乱要因は中国だと言われていますけど、それは需要が膨大という意味で当然だと思います。

 ただ、一方で、中国では、商品相場で何億ドルと運用する個人がいます。これは私の推測ですが、彼らはそれだけ資金を持っているから、共産党から内部情報を得られていることは想像に難くないと思います。彼らは、これから当面勝ち続けると思います。

 なぜかというと、中国の来年の需要がどうだとか、農作物の作付けがどうだとか、そんな情報は、多分、世界のだれよりも先に共産党から聞いている可 能性があるからです。ですから、中国に個人のスタープレーヤーがいるということは、そういう背景があるのではないかと推測されます。

 上は1つの極端な例ですが、さまざまな局面で情報の偏在が一部の富に結びついているというのが今の中国の現実です。誰かが先に豊かになるという、 先富論からすればいいのかもしれませんが、程度が過ぎると社会全体の発展の阻害要因となることは誰もが知っています。もちろん、日本でも米国でも、本当に 価値のある情報というのは、少数の人が握っているものかもしれません。ただし、この傾向が激しいのが今の中国と考えていただければいいと思います。

 結果、こうした情報を得られる人、企業は、当然、独占的な利益が得られますから、その力に乗って、世界戦略にも乗り出そうとしている。一方、そう いった情報に接することができない人は、やはり高度成長のメリットに浴することができなくて格差になってしまう。これが行き過ぎたので、そういう意味も含 めて情報の透明化を図らなければならない。情報の透明化というのは法制の運用面での安定化でもありますから、そういうことを一生懸命やろうとしているの が、今の胡錦濤さんの一連の動きであるというふうに見ていただければいいと思います。

◇ 西側並みの情報公開が可能になる日はいつか

 情報の透明化において、1つのターニングポイントは、2002年から2003年にがけて発生した、例のSARS問題だと思います。中国当局が、情 報を隠蔽したがために問題が大きくなってしまって、結局、衛生部長が解任されました。これは、おそらく、共産中国建国以来、役人が情報を公開しなかったこ とによって処分された初めての事例ではないかと思います。

 それまでは、情報を公開することによって処罰されてきました。それが、初めて情報を公開しないことによって処分をされたという意味で、あの SARS事件というのは、中国の情報公開元年じゃないかというふうに思います。そうすると情報公開元年からまだやっと5年あまりで、まだまだ緒についたと いうことかと思いますが、中国でビジネスする者としては、この勢いがこれからも少しずつ進んでいってもらえればと思います。

 では、どういうふうに進むかというと、これも私が体験的に感じているのですけど、やはり、いい情報というのは、人の周りから少しずつ出てゆくも の。共産党員の同僚だったり、その家族だったり。また、共産党の高官、次は国有企業があります。家族もビジネスをやっていますし、国営企業も当然その情報 を利用して儲けようとする。そして、情報が少しずつ伝わっていって、周辺の人からどんどん豊かになってくる。

 そして、情報がいつ西側並みに公開されるかというのは、おそらく、中国全体の富裕層がもう少し増えた段階。要するに、権力者の周りの人たちがおなかいっぱいにならないと、多分、情報の共有化、透明性というものは進まないのではないかと感じております。

 さらにその時は同時に、民主化を進めるうえでの機が熟した時期といえるかもしれません。そして、一党独裁が徐々になくなってくるのだと思います。 ただ、その時は、中国も安定成長に入り、リスクは減りますが、人民元も、人件費も高くなり、外資にとっても中国の位置付けが変わってくるというのが将来の 姿であると思います。



現代中国は掴み切れない....。