金曜日, 9月 12, 2008

埋蔵金6兆円で好景気に

「高橋洋一(東洋大学教授)
Voice2008年9月12日(金)14:09
◇ 無駄にもっていた埋蔵金

 行政の無駄を省くべきだ。この意見に反論する人はいまい。ただ、人によって「無駄」の程度に差が出るのは致し方ないだろう。
 ちなみに与謝野馨経済財政相は、「予算の無駄には2種類あって、会計検査院が指摘するような間違った使い方ということと、この政策は無駄な政策だという政 策の評価の問題とがある」と講演で述べていたが、先日のテレビ番組では、天下りや官製談合、特殊法人などでの無駄遣いの指摘に対して、「無駄遣いはない。 政策判断の問題だから」といっていた。
 もちろん、政策判断の程度の差という問題はあるが、それをオープンな場で議論することは有用だろう。そうすれば、無駄の意味も明らかになるし、何より政策議論の質が向上する。これは長期的には行政の「無駄」をなくすことになるだろう。
 一例として、筆者がこれまで指摘した「霞が関埋蔵金」について考えてみよう。
 筆者と埋蔵金の関わりはこれまで3回ある。1回目は3年ほど前である。経済財政諮問会議において、特別会計の資産負債差額が50兆円弱あり、それらの1部 は取り崩しても問題ないと指摘した。その結果、財政融資資金特別会計などから20兆円の取り崩しが閣議決定され、その内容を盛り込んだ「簡素で効率的な政 府を実現するための行政改革の推進に関する法律」が2006年6月に成立した。
 2回目は、2007年11月の話だ。自民党財政改革研究会(与謝野馨会長)が、増税路線を打ち出したが、中川秀直元幹事長が異論を唱え、増税の前に特別会 計積立金のうち財政貢献できる部分があると主張した。ところが、この増税反対論に対して、財政改革研究会は「そのような話は霞が関埋蔵金伝説だ」と揶揄 し、「埋蔵金は存在しない」と応酬した。中川氏は、具体的に財政融資資金特別会計と外国為替資金特別会計の繰越利益・当年度利益が合計40兆円あると指摘 し、それらは過大であると反論した。財政当局はこの指摘を受け「埋蔵金」の存在を認め、10兆円を2008年度予算に取り入れることとした。
 1回目と2回目での「埋蔵金」は、特別会計のバランスシートにおける資産負債差額の総計である。資産負債差額が行政の「無駄」につながるかは、慎重な検討を要する。まず、無駄に使わなかったからこそ、その結果、資産負債差額として残っているといえる。
 ただし、過剰にもっているかどうかで、有していることが無駄であるかどうかがわかるであろう。1回目の20兆円、2回目の10兆円はいずれも取り崩され て、一般会計や国債償還に使われたのであるから、結果として特別会計では過剰な剰余金をもっていたわけである。それは無駄にもっていた埋蔵金だったといわ れても仕方ない。
 3回目の関わりは今年7月に出た「清和骨太」の埋蔵金50兆円である。7月4日、自民党の総裁派閥である清和政策研究会が発表した政策であるが、まず、「骨太」の意味を説明しておきたい。
 そもそも「骨太」というのは、正式名称についていえば、2001年は「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」、2002年から 2006年まで「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」、2007年と2008年は「経済財政改革の基本方針」である。いずれも、6月までには閣議決 定されて、次年度の予算方針などの前提となる国の経済政策の基本方向を定めている。
 じつは2年前に、「骨太2006」というものがあって、その後の5年間、2011年度までの「5年間の予算シーリング」がすでに決まっており、それで2011年度のプライマリーバランス黒字化が目標となっている。
 ところが近年、社会保障費2200億円をカットすべきかどうかという問題や、基礎年金について国庫負担割合の引き上げにどのように対応すべきかという問題 があり、さらには、ここ2年間の名目成長率が政府見通しを大幅に下回り、税収も下方修正せざるをえなくなっている。ということは、本来であれば経済状況を 踏まえて、2011年度の黒字化目標を含め、今年の「骨太2008」では「骨太2006」を改訂すべきであった。
 埋蔵金の話を抜きに、来年度以降の予算の話などできるわけないが、なぜか諮問会議が埋蔵金の話をしないまま、6月27日に「骨太2008」は閣議決定され た。社会保障費の問題や2011年度のプライマリーバランス黒字化などについて、この「骨太2008」では解が盛り込まれておらず、明らかに不完全であっ た。そこに、清和研の政策提言は、具体的な財源の裏づけのある答えを示した。つまり、埋蔵金の活用によって、社会保障問題への対策や、成長・環境などの新 たな課題にも対応しつつ、2011年度のプライマリーバランスの黒字化の方針は堅持できるとした。
 8月1日、福田康夫総理は政権発足後初の内閣改造を行なったが、「清和骨太」の作成に関係していた、いわゆる「上げ潮派」は一掃されたかたちだ。
 しかし、「清和骨太」が示した事実は、今年度の補正予算編成や来年度の予算編成に確実に大きな影響を与えるはずだ。つまり、少なくとも来年度までは、消費 税増税の議論はできない。福田総理が自ら公言しているが、50兆円の埋蔵金が否定できない以上、増税論議はできるはずがない。伊吹財務相(前自民党幹事 長)も、埋蔵金は10兆円以上あることを認めており、今年度補正予算と来年度予算ではそれを活用せざるをえないわけだ。

◇ 4四半期ぶりのマイナス成長
 以上を踏まえて、3回目の埋蔵金50兆円を説明しよう。7月4日、「上げ潮派」といわれる中川秀直自民党元幹事長らが中心となって、清和政策研会として 「『増税論議』の前になすべきこと」という政策提言を行なった。陣頭指揮をしたのは杉浦正健さん、奥野信亮さんである。山本拓さんも精力的に活動してい た。私も手伝って、派閥集団が新たな「霞が関埋蔵金」の存在を指摘したのだ。
 今回の埋蔵金50兆円は、3つの部分からなる。第一に、今年度中に使えるものとして6兆円。第二に、来年度予算に使えるものとして10兆円。第三に、その後3年間で使えるものとして19兆~37兆円だ。
 これらが無駄なお金であったかどうかであるが、6兆円と10兆円は、使われていなかったという意味では、ひどい無駄遣いであったわけではないが、うまく使 われてこなかった金であることは間違いない。19兆~37兆円はこれからよい政策をすることによって生み出すわけで、無駄な政策をしない結果といえる。以 下では、補正予算が話題になっているので6兆円を中心としつつ、10兆円にも触れてみよう。
 第一の6兆円は、新たな負担なしで補正予算に対応するにはこの部分で賄える。なぜ補正か。いろいろと大型補正の声も聞かれるが、なぜかといえば、とうとう 景気が悪くなったからだ。8月13日、内閣府は2008年4―6月期の国内総生産(GDP)速報値を発表したが、実質GDPは前期比0.6%減、年率換算 で2.4%減だった。2007年4―6月期以来、4四半期ぶりのマイナス成長だ。民間エコノミストのあいだでは、今年初めからすでに景気後退に入っている のではないかといわれていた。政府が景気後退を認めるのはいちばん最後であるので、これで景気後退が確実になったといえる。
 同じ内閣府が発表している景気動向指数、景気ウォッチャー調査をみると、景気減速は2007年中に始まったのだろう。この景気後退は、しばしばアメリカ経 済の景気減速を背景にした輸出の減速が主要因といわれ、内需の柱である個人消費や設備投資の落ち込みが響いたとされている。しかし、4―6月期のアメリカ の実質GDPの伸び率は、鈍化したとはいえ、まだ0.5%増であった。サブプライム問題の本家本元のアメリカのほうがまだマシということは、日本の景気後 退が国内要因(ホームメイド)であることを強く示唆している。
 ただし、日本の景気後退は大したことはないという意見もある。8月4日付の『フィナンシャル・タイムズ』紙は、「日本の景気後退は景気後退でない」と題し て、「住宅バブルや金融危機もない。アジア向け輸出も伸びている」と指摘し、「日本政府に求められているのは、改革強化であって、設計の悪い財政出動でも インフレに対する日銀の過剰反応でもない」としている。そのうえで、日銀に対しては「金利を維持し、長年のデフレに慣れきった日本人に対して、ガソリン以 外にも価格上昇を覚悟させるようにせよ」、政府に対しては「漁船のための燃料補助金は悪い。道路建設もさらに悪い。無駄な財政出動に抵抗し、小泉構造改革 に回帰せよ」と提言している。
 これは1つの正論であろう。それに、この機会に予算分捕りもあり、与党から見れば選挙向けのばらまきとなる恐れもある。ただし、どうしても「景気対策」が必要というのであれば、この正論の趣旨に即したものにすべきだ。

◇ 日本の景気が後退した理由
 具体的な景気対策を論ずる前に、日本の景気後退の理由を整理しておきたい。
 景気減速が2007年中に始まったとすれば、効果のラグを考慮して2006年中の出来事に注目すべきである。
 いまサブプライム問題をきっかけとして、アメリカ経済は危機状況に陥っているが、2006年には住宅価格の上昇率が鈍化するとともに、住宅ローンの延滞率 が上昇してきたという状況であったものの、サブプライムローンが世界的に問題視されはじめたのは2007年夏ごろからである。しかも、日本はサブプライム 問題の発信地ではない。
 まず思い出すのは、定率減税の廃止だ。定率減税は、所得税と住民税の税額をそれぞれ20%、15%減額するもので、景気対策のために暫定的に1999年から導入されていた。それが、2006年(度)と2007年(度)で半分ずつ段階的に廃止された。
 定率減税の廃止は、マクロ経済的観点からみれば、3兆円強の所得税増税になる。その経済効果は、ある試算によれば、実質GDPを0.5%程度低下させるという。
 また2006年は、日銀が金融引き締めに転じた年でもあった。2006年3月9日、日銀は量的緩和政策を解除した。2006年7月14日、2007年2月21日、日銀は誘導金利をそれぞれ0.25%ずつ引き上げた。
 量的緩和政策の解除は金利に換算すると0.5%程度の効果であるといわれているので、一連の金利引き上げは1%程度と思っていいだろう。ある試算によれば、この一連の金利引き上げによるマクロ経済効果は実質GDPを0.5%程度押し下げるといわれている。
 いずれにしても、マクロ経済的には、2006年に財政引き締めと金融引き締めが同時に行なわれたわけで、形式的に考えても、実質GDPを1%程度押し下げてもおかしくない。
 ちなみに、実質GDP伸び率について、2007年度の政府の見通しは2.0%であったが、実績は1.6%。2008年度の政府見通し2.0%が、実績見通 しは1.3%にとどまった。また、名目GDP伸び率について、2007年度の政府の見通しは2.2%であったが、実績は0.6%。2008年度の政府見通 し2.1%が、実績見通しは0.3%にとどまった。
 この名目GDPの低迷と裏腹のことであるが、ホームメイドインフレの指標とされ総合的な物価の動きを示すGDPデフレータについて、2007年度の政府見 通しは0.2%であったが、実績は▲1.0%、2008年度の政府見通し0.1%が、実績見通しも▲1.0%と2年連続して大きく下回った。

◇ 金融のイロハを間違った日銀
 こうした経済指標を見ても、2006年の財政引き締めと金融引き締めのどちらが主因であるかを判断することは難しい。ただ、明確な決まりはないが、政府見通しについて、実質成長率は政府、GDPデフレータは日銀の責任という漠然とした思いはある。
 もっとも、日銀はその責任分担さえ拒否してきた。現行の仕組みでは、日銀は、政府経済見通しについて、マクロ経済運営に関して基本的視点を共有するのみで あり、コミットメント(結果責任を伴う約束)はしていない。この意味で、政府見通しの達成義務は政府だけにあり、それが達成できなくても、日銀は政府に対 して何の責任もないことになる。日銀は、どこにもコミットしておらず、経済運営の結果についていっさい責任は生じないというのだ。
 考えてみればこれはおかしいのだが、いまの日銀法の下では仕方ないことである。ちなみに、日銀法では「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊 重されなければならない」(第3条第1項)、「日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければなら ない」(第3条第2項)となっており、政府との関係は、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが 政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」(第4条)と規定されているのみ で、意思疎通さえすれば、結果は問わないのだ。
 これは、中央銀行の独立性を曲解しており、日銀法の欠陥であるといわざるをえない。現行制度の下では、先進国の行政機関で導入されているPDCA(PLAN‐DO‐CHECK‐ACT)サイクルさえ、日銀には適用できない。
 中央銀行の独立性については、中央銀行は政府と目標を共有するが、その達成手段は中央銀行に任せ、政府が口出ししないとなっているのが世界標準である。と なれば、中央銀行の目標について、政府が設定するか、または政府と中央銀行が設定し、その目標の達成は中央銀行に任せて、中央銀行のPDCAサイクルを適 用できるわけだ。このような中央銀行と政府の関係について、しばしば「中央銀行は目標の独立性をもたず、手段の独立性をもつ」と表現している。
 こうした見方について、日銀としては政策委員会・金融政策決定会合で決めた金融市場調節方針にコミットメントしていたとの反論があるかもしれない。たしか に、2001年3月から2006年3月まで、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的に0%以上となるまで継続するとの明確な「約 束」に沿って、量的緩和政策を継続してきた。
 ただし、これは外部から見たら「言い訳」にすぎない。というのは、日銀は物価見通しをこれまで何度も下方修正して、それでシナリオどおりだという後出し じゃんけんばかりやっている。日銀はフォワードルッキングといって、先読みの政策をやってきているというが、先読みがあったためしはない。
 また、見るべき物価を間違えている。一般的に、物価はGDPデフレータで見るのが優れている。ただしGDPデフレータは統計作成が遅れるため、できるかぎりそれに連動するもので物価を見る必要があるので、コアCPI(消費者物価指数)で見るのが世界の常識である。
 海外では、このコアCPIは変動の激しいエネルギー・食品を除いているのが通例であるが、日本はなぜが生鮮食品しか除いていない。このため、コアCPIの 数字で海外から誤解を招くことが多かったので、竹中平蔵氏が総務大臣になった2006年から、エネルギー・食品を除いたCPIも公表するようにした。とこ ろが、マスコミ報道は相変わらず、古いCPI(除く生鮮食品)であり、日銀も古いものを使いつづけている。
 ちなみに、6月のCPI(除く生鮮食品)は前年同月比1.9%の上昇であるが、CPI(除くエネルギー・食品)は0.1%、4―6月期のGDPデフレータは前年同期比1.6%の下落であった。
 このようにいうと、「日常品で値上がりしているのでインフレではないか」という声が聞こえてくる。だがインフレというのは、正しくは全体の物価水準の上昇 であり、現在のような状況は「海外インフレ、国内デフレ」である。国内が本当にインフレになれば、賃金も地価も上がるはずであるが、そうなっていない。
 いずれにしても、ホームメイドインフレの指標であるGDPデフレータがマイナスである以上、日銀の金融政策は失敗したといわざるをえない。要するに、 GDPデフレータがマイナスのまま、しかもそれはCPI(除くエネルギー・食品)を見ていても容易に判定できたにもかかわらず、2006年から金融引き締 めを行なったのは、金融政策のイロハを間違ったのである。
 さらに、増税を行なう政府と金融引き締めを行なう日銀とのあいだの連携も結果としては不十分だった。こうして景気後退になった。

◇ もっとも効果的な経済政策は
 以上を踏まえ、景気対策を考えるなら、単純にいえば、2006年の逆をやればよい。つまり、金融政策を緩和しゼロ金利・量的緩和政策まで戻るとともに、財政政策も定率減税を復活させればよい。
 さらに、経済政策のセオリーを使うと、もっと効果のある対策もある。マクロ経済政策の効果について、マンデル=フレミング理論というノーベル経済学賞の栄 誉に輝いた有名な理論があるが、同理論によれば、変動相場制の下では、金融政策のほうが財政政策より効果が高い。財政政策は為替変動・輸出入変動を通じ て、その効果が海外にスピルオーバーするからだという。
 ここで、今年度中に使える埋蔵金6兆円に戻ろう。じつは2回目の埋蔵金10兆円(正しくは9.8兆円)について、今年度予算で国債償還に充てられていると 説明したが、正確にいうと、埋蔵金9.8兆円のうち、市中の国債買い入れに充てたのは3兆円だけであり、残りの6.8兆円分は、日本銀行が保有する国債 3.4兆円分と、財務省の資金運用部が保有する国債3.4兆円分を買い入れるとされていた。
 要するに、6.8兆円は広義の政府部門の国債償還に充てられているので、政府の外から見れば、何もしていないことになる。つまり、まだ使えるわけで、これが6兆円の意味だ。
 もうおわかりであろうが、マクロ経済効果が少なく財政赤字を増す定率減税の復活もさることながら、それよりも埋蔵金6兆円を活用すべきである。マンデル= フレミング理論の応用になるが、この6兆円を財政支出や減税より市中国債の償還に回すほうが、長期金利低下となって、金融緩和政策と相まって、大きなマク ロ経済効果になるにちがいない。
 こうしたマクロ経済政策ミックスは金利低下を促すので、実質的には設備投資減税と同じことになる。今回のようなエネルギー・輸入価格を上昇させ交易条件を悪化させる外的ショックに対して、省エネ体質にして長期的な競争力を強化するために、政策的にも望ましい。
 埋蔵金6兆円を使わないのは、もったいないし無駄である。使うとしても、財政支出や減税より、市中国債の償還のほうが、効果的という意味で無駄がない。ま して現在、与党内で議論されているように、金融政策なしで個別業界対策のような支援を行なうのは、ここで述べたマクロ経済政策ミックスと比べると、大いに 無駄な対策である。
 最後に、来年度予算に使える10兆円の内訳に触れよう。
 今年度の特別会計では、来年度への繰越金が25.4兆円ある。特別会計は、1年間で使い切れなかったお金は次年度に繰り越せるのである。だが余っているなら、その金を一般会計に返せばよい。
 ただ、約25兆円の繰越金のうち、翌年度に繰り越さないと資金がショートして支障が出かねないものある。しかし、一般会計に繰り入れても問題ない繰越金 が、私の見積もりによると、5.3兆円ある。その内訳は、労働保険特会で0.8兆円、財政融資特会で2兆円、外為資金特会で2.5兆円である。
 また、特別会計で今年の黒字分を繰り越すのは、会計学でいうフローの数字だ。一方で、ストックに当たる積立・準備金がある。そのうち、財政融資資金特別会計は、金利リスクに備え現在10兆円の積立・準備金をもっているが、ここから4兆円分を取り崩すことは十分に可能だ。
 もう1つは、労働保険特会である。先に指摘したとおり、雇用保険料が高すぎるのか、0.8兆円もカネが余っている。にもかかわらず、一般会計から毎年0.2兆円が投入されている。
 すき焼き三昧の離れに、粥をすすっている母屋から仕送りをする必要はなく、すぐ停止すべきだ。「骨太2006」では、社会保障費の自然増分を年に2200 億円ずつ抑制するとされ、それは難しいと厚生労働省は文句をいっている。だが、自分たちがもっている労働保険特会の埋蔵金だけで解決できる。さらに、労働 保険はストックベースでも4兆円以上余っているので、それらを取り崩しながら、長期的に維持可能な社会保障システムを考えたらいいだろう。
 こうしたお金をうまく使わなければ、無駄なお金といわれてしまうだろう。

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