水曜日, 12月 31, 2008

2009年の世界経済 回復に必要な3つの優先事項


フィナンシャル・タイムズ 2008年12月30日(火)13:00
(フィナンシャル・タイムズ 2008年12月28日初出 翻訳gooニュース) ヴォルフガング・ミュンヒャウ
 2009年の経済を予測するのは、簡単でもあるし難しくもある。米国や欧州やアジアのほとんどにとって、ひどい年になるだろうと予測するのは簡単なこと だ。先進工業国は各国連動してひどい景気後退に陥るだろう。世界的な国内総生産(GDP)もおそらく1930年代以来初めて、縮小するだろう。これを避け たくても、私たちにできることはあまりない。
 来年の経済予測で難しいのは、政策決定者たちがどこまで実行できるかどうかだ。不況がいよいよ恐慌にまで悪化するのを回避し、2010年からの持続可能な 回復のための基礎づくりができるのかどうか、予測するのは難しい。これについて私がほぼ確信をもって予測できるのはただ、各国政府の対策がとても重要性を 増すだろうということのみだ。
 今の経済をどんどん悪化させているマイナスの力は、「デレバレッジ(レバレッジ解消)」。それは分かっている。借金過多の家計や資金不足の銀行が、賃借対 照表(バランスシート)を調整しているのだ。借金過多の家計の場合は、貯蓄することで。資金不足の銀行の場合は、貸し出しを抑制することで。このプロセス がほぼ完了するまで、持続的な経済回復などあり得ようもない。
 その段階に至るまでにはまだかなりかかる。たとえば私の計算では、長期的な価格推移に立ち返り、住宅価格/家賃比率がもっと持続可能な水準に回復するに は、米国住宅市場の実勢価格が最高値から最安値まで40~50%の幅でぐるりと一巡する必要がある。私たちはこのプロセスの真ん中あたりまでやってきた。 幸いなことに、ほとんどの名目調整は2009年末か2010年初頭までには終わるだろう。
 しかし金融セクターについて私はもっと悲観的だ。金融セクターもやはりレバレッジを減らしてはいるが、さらに大量の公的資金の注入がなければ、持続可能な ポジションを素早く回復することはできないだろう。しかしそのためには、大々的かつ根本的な再構築が必要となり、それには時間もかかる。
 こうやってざっくりまとめた概観をもとに結論すると、2009年に優先するべき政策課題は3つある。各国の中央銀行はデフレを回避しなくてはならない―― というのが、一つ目の優先事項だ。中央銀行は今この時こそ、物価安定を目指さなくてはならない。物価安定とここで言うのは、欧州的な意味合いでだ。つま り、年率2~3%という小幅ではあるが確実にプラスなインフレ基調を確保しなくてはならないという意味だ。実施されている諸政策の規模や威力を思えば、各 国の中央銀行はこれを達成するだろうと思う。
 しかし私が心配なのは米国で、米国はかなり後になってからインフレ率を上げようとするのではないだろうか。そうすれば米国の財政赤字の実質水準は減るけれ ども、為替レートや資金フローなどの面でとてつもない歪みが生じ、ひいては新たな国際金融・経済危機を引き起こしてしまう
 ふたつ目の優先事項は、金融セクターを縮小することだ。金融部門が無秩序に破たんなどしたら、それは壊滅的な状況となるが、だからといって今の過剰な規模 で金融部門がこのまま持続することは、望ましくもなければ可能でもない。たとえば、債務不履行のリスクを保証する金融商品「クレジット・デフォルト・ス ワップ(CDS)」の市場はどうだ。国際金融の安定に対するとてつもないリスクをはらみながら、市場参加者が金儲けできるという以外に何の経済的な意義も ない、50兆~60兆ドル規模の無規制なカジノではないか。私は原理原則として、経済的な意義のあるなしに基づいて金融活動を規制しても構わないと思って いる。経済的な観点でいうと、CDSは保証としての機能を果たしているので、だったら保証として扱い規制すればいい(そうしたらもちろん、CDSは機能し なくなるのだが)。
 さらに言えば、当局は金融業界をあまり事細かに規制しようとしない方がいい。そんなことをしても、規制当局が負けるに決まっている。ガチガチに決められた 規制ルールの適用を回避するために、既存の金融手段を使ったり新しいのを作ったりすることにかけて、金融セクターは実に長けている。それよりも注力すべき なのは、「倒産するには大きすぎる」などという銀行を分割すること。あるいは、一国の金融部門の規模を、その国のGDP規模に見合ったものに縮小すること だ。特に、国の経済規模の何倍にもふくれあがった銀行部門の債務高を国が保証するなど、止めるべきだ。
 今起きているのは世界的な危機で、危機の余波も様々な形で世界中のあちこちで派生する。だからこそ、対策は世界レベルで調整しなくてはならない。これが3つ目の、そしておそらく最重要な優先事項だ。
 バラク・オバマ次期米大統領の経済チームから聞きたいのは、刺激策の総額が7000億ドルになるのか8500億ドルになるのかという狭量な議論でもなけれ ば、それをどういう事業に使うかと言う議論でもない。私がそれよりも知りたいのは、アメリカの新政権が、共同戦略にどうやって欧州や中国を取り込むつもり なのかということだ。
 一方で各国政府は、インフラ整備や教育にこれまで以上に資金をつぎ込むような真似はしないほうがいい。そうすれば何かの解決につながると期待してのことかもしれないが、そこで解決される問題は、私たちが今すぐ直ちに解決しなくてはならない問題とは違う。
 それに今のところ、本当の意味での政策協調が見えていない。これは諸外国との協調がなければ検討もしなかっただろう政策を、実施するという意味での政策協 調だ。少なくとも欧州では現在、政策協調プロセスは逆のベクトルで動く。つまり各国政府がそれぞれ単独に、自分が何をやりたいか決めた後、欧州連合 (EU)のレベルに持っていって「政策協調」という外見を整えるのだ。
 経済が大破局を迎えるという、ありえそうなシナリオを組み立てるのは難しいことではない。これから並べる展開のいくつかを選んで組み合わせれば、現代史のあらゆる記録を塗り替えるひどい恐慌に見舞われるかもしれない――。
 ・世界的な保護主義の台頭
 ・各国が競い合って通貨を切り下げ
 ・ポンド危機
 ・中国の政情不安につながる社会不安
 ・ここぞというタイミングで起きるテロ攻撃
 ・ユーロ圏の指導者たちがいつまでも協調を拒否し続ける
 ・ユーロ圏の大国で支払い不履行が起きる
 ・新興市場の急落
 ・各国の金融政策がいつまでたっても協調されない
 ・CDS市場が破たん
 このほか言うまでもなく、巨大な国際的金融機関が債務不履行に陥ったり、ヘッジファンド業界が壊滅したりしたら、それはもちろん見逃せない事態となる。
 あるいはこうして破局を迎えるのではない、別の道もある。つまり、2009年不況の拡大をなんとか押さえ込んで、その間に派手さはないが着実で持続可能な回復の基礎をひたすら敷いていくことだ。それこそが、最良の展開だ。
 しかしそのためにはまず、国際経済とはそれを構成する各パーツの単純な総和ではない、それ以上のものなのだと認識する必要がある。ということは各国の政策 決定者はもっと賢くなり、協力し合い、そして既成概念にとらわれない自由で新しい発想をする必要がある。しかし政策決定者というのは元来、そういう風には 動かないもの。そこが問題なのだ。


よくわからん....。

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