金曜日, 9月 21, 2007

党の魂をめぐる戦い 自民党総裁選

フィナンシャル・タイムズ

(フィナンシャル・タイムズ 2007年9月19日初出 翻訳gooニュース) FT東京支局長デビッド・ピリング

安倍晋三首相が先週、突然の辞任表明で自由民主党を危機に突入させて以来、福田康夫氏と麻生太郎氏は、切っても切れない関係となった。どこに行くにも2人 一緒と言う状態だ。安倍氏に代わって自民党の総裁になり、よって次の総理大臣になろうと名乗りをあげた2人は、23日の総裁選挙に向けて国民に訴えかける ため、一緒にバスや飛行機であちこちを行脚している。

福田氏と麻生氏は実際、同じ目的を抱いている。それはつまり、自民党を守ること。しかし2人の政策やスタイルの違いから、2人は実は自民党の魂をめぐって 争っているのだということが、明らかになってきた。「安倍辞任」の大失態を党として乗り切った後、自民党がどういう政党になるのか、その根幹の部分を2人 は争っているのだ。

自民党幹事長の麻生氏は、党の右派から総裁を目指している。安倍首相と同様に、日本はもっと国際社会の舞台で頭角を現すべきだと考えている。弁舌に優れ、裕福な名家出身であると同時に、一般受けする親しみやすさも兼ね備えている。

福田康夫氏は対照的にドライで辛口、かつガリ勉的な政策通あるいは政治オタクだ。日本外国特派員協会で開かれた19日の記者会見では麻生氏が、福田氏は「霞が関の機械」の言いなりになりかねないと、言外に皮肉っている。

外交政策について2人のスタンスはかなり違う。A級戦犯数人を含む戦没者200万人が奉られている靖国神社について、福田氏は「参拝しない」と言明。一方 の麻生氏は、実際にはおそらく参拝しないだろうが、参拝する権利を手放すつもりはないと示唆して、「自分の国のために命を投げ出してくれた人に敬意を表す ることを禁止する国はない」と述べた。福田氏は、第2次世界大戦がもたらした全ての問題が誰にとっても満足のいく形で解決したと言えるわけではないと認識 した上で、近隣諸国との相互理解を求めていくべきだと主張。この立場も、戦後日本はこれまで十分すぎるほど戦争への負い目を抱えてきたとする麻生氏とは、 対照的だ。

両氏は共に、インド洋で多国籍軍への給油活動を継続することで、アフガニスタンでの「対テロ戦争」に貢献すると表明。この給油活動継続を可能にするテロ対 策特別措置法の延長問題が、安倍首相辞任の表向きの理由だった。アフガニスタンの国際治安支援部隊に関する国連安保理決議に、海上自衛隊によるインド洋で の給油活動などへの「謝意」が盛り込まれたことは、テロ特措法延長の突破口になるかもしれない。民主党など野党はこれまで、「アフガニスタンの対テロ戦争 は国連の承認を得ていない」として、特措法延長に反対していたからだ。

実のところ福田氏は、国際舞台でむやみに日本のプレゼンスを上げることに腐心していない。特に、従来の憲法解釈では禁止されてきた集団的自衛権の行使とみなされる活動について、福田氏は慎重だ。

安倍首相の「主張する外交」がどうも国民にしっくりこないまま終った後とあって、福田氏の穏健な外交姿勢は自民党にとって安心できるものなのかもしれない。しかし自民党が次の総選挙で勝つか負けるかを決めるのは、外交ではなく国内の問題だ。

国内の課題については、安倍氏前任の小泉純一郎前首相の人気と、小泉改革がもたらした自由主義市場改革への反発との間で、どうバランスをとるか。これが、 自民党にとって重大な課題だ。雇用が少なくて経済が停滞している地域の多くは夏の参院選で、自民党に厳しい反撃をくらわせている。

麻生氏は、「どこにも行かない道路」などを造る公共事業のばら撒きによる、強引な地方経済の振興には反対している。その代わり、地域経済が自ら復活できる よう、行政のしきたりを破り、地方分権を促進すると方針を示した。とは言うもののその一方で麻生氏は、明らかに保護政策や補助金などのことを意味しつつ、 国際競争をする企業に求められる「グローバル・スタンダード」を必ずしも地域経済に要求する必要はないだろうと付け加えている。

福田氏も「自立と共生」ということを訴えている。改革続行と規制緩和を進める上で、今までよりも優しい、家長的なアプローチを組み合わせることは可能だろ うという考えだ。小泉改革による市場主義による行き過ぎが、日本の格差を拡大させたという意見があると福田氏は言及。これまで阻害されてきた人々の声を、 政府がよく聴いてよく考えていかなければ、反発の嵐に押し流されて、改革そのものが「破滅」してしまうだろうとの考えを示した。



所詮大同小異なんだって....。

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