水曜日, 10月 01, 2008

焦点:旧政府系金融機関、当面は高い信用力維持


2008年10月1日(水)13:37

 [東京 1日 ロイター] 10月1日から新組織としてスタートする旧政府系金融機関について、クレジット・アナリストの間では、民営化に伴うリスクがあるものの、当面は高い信用力が維持される見通し、との見方が多い。

 2008年度下期には複数の機関が財投機関債など債券の発行を計画しているが、投資家の需要は従来通り強く、順調に消化されそうだ。一方、起債スプレッドに関しては、今後のビジネスモデルを点検しながら決定される方向になりそうだ。

 <政府系金融機関は株式会社化、民業補完を原則>

  政府系金融機関の見直しは、小泉政権下で打ち出された構造改革の柱の1つで、貸し出す資金の効率的な配分を民間に委ねる目的で進められてきた。政府系金融 機関を含む特殊法人の整理合理化計画では163法人のうち118法人が見直し対象となった。1日までの再編で17法人が廃止、4法人が統合、43法人が民 営化、39法人が独立行政法人となる。

 今回の統合・再編で、国民生活金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫国際協力銀行の国際金融部門の4機関が日本政府全額出資の特殊会社として、株式会社日本政策金融公庫に統合されるほか、日本政策投資銀行は5─7年の移行期間を経て完全民営化される政府出資の株式会社となる。公営企業金融公庫は解散し、地方公共団体が出資する地方公営企業等金融機構に生まれ変わる。

 統合について、日本政策金融公庫は「民業補完を原則としつつ政策金融をきちんと実施していく。株式会社となることでガバナンス(統治)を重視し、透明性が高く、効率的な事業の運営を目指す」と述べた。

 <株式会社政投銀、無担保で財投機関債を発行>

  株式会社になった日本政策投資銀行は、2008年度下期に700億円の財投機関債の発行を計画している。起債運営について、同行は「投資家の需要を探りな がらマーケットの動きをみて適切な条件で発行したい。金融商品取引法の適用を受け、情報開示の必要があるため、有価証券届出書方式で起債することになる」 と話した。10月からはこれまでの一般担保付きではなく、無担保として発行される。

 日本政策金融公庫は、2008年度下期に財投機関債の発行を予定していない。資金調達について、同公庫は「財政融資資金と財投機関債などを適切に組み合わせた調達を基本とし、ALM(資産と負債の総合管理)、調達コストの観点から検討していく」と述べた。

  地方公営企業等金融機構が発行する債券(除く政保債)は、地方債として位置付けられる可能性がある。2008年度について、運用者側はこれまでどおり財投 機関債として分類する見通しにあるが、マーケットでは、2009年度上期からは地方債に分類されるとみている。同機構に関して、みずほ証券・金融市場調査 部チーフクレジットアナリストの香月康伸氏は「財投計画に入らないため、発行体の起債は自由度が増す」とみている。下期は1000億円の発行を予定してお り、一般担保付で発行される。

 <日本政策金融公庫など高い信用力を維持、起債スプレッドへの影響に注目>

 マーケットでは、多くの投資家が日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、地方公営企業等金融機構の発行する債券への運用方針を、信用力の面で従来の機関が発行した債券への運用方針から大きく変えないとみている。

  信用力について、三菱UFJ証券・デットリサーチ部シニア・クレジットアナリストの安蒜信彦氏は「日本政策金融公庫、日本政策投資銀行は当面、政府が全額 出資するなど政府サポートがあるため、高い信用力を維持できる」と話す。地方公営企業等金融機構についても、信用力への評価はこれまでどおり高い。

 格付投資情報センター(R&I)は9月30日、日本政策金融公庫の発行体格付けをAAA、地方公営企業等金融機構をAAA、日本政策投資銀行をAAに新規格付けした。

  起債スプレッドへの影響について、日興シティグループ証券、コーポレート・ボンド・リサーチ、シニアクレジットアナリストの江夏あかね氏は「旧組織から変 わったとしても高い格付けを維持するなど短期的には影響はほとんどない。マーケット環境面からも質への逃避で運用資金が流れやすくなっており、これまでど おりタイトなスプレッドで起債は可能」とみている。一方、ある国内証券の起債担当者は「政府出資から民営化される点をスプレッドに徐々に織り込んでいくこ とになる。ビジネスモデルを慎重に分析する必要が出てくる」と述べた。日本政策投資銀行は2日に中期計画のビジネスコンセプトを発表する予定。

 (ロイター日本語ニュース 伊藤 武文記者 片山 直幸記者;編集 橋本 浩)

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リンク先込みで貼り付けできるの?
ちょっとメモっときたい記事だっただけなんだけど....。

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