金曜日, 12月 05, 2008

この国はどこへ行こうとしているのか

毎日新聞2008年12月5日(金)18:00

 ◇「恕(ゆるす・思いやる)」の字書きたい--清水寺貫主・森清範さん(68)

 盛りは過ぎたとはいえ、まだまだ美しく色づいた紅 葉に迎えられ、京都は清水寺への参道を歩く。インタビューにうかがう貫主(かんす)の森清範さん(68)は1年前の暮れ、奥の院の舞台で、あの漢字一文字 を揮毫(きごう)した。「偽」。でも、あれから1年たって、よりふさわしい文字が浮かばない。
 「そうですねん」。貫主というから威厳ある おっかない坊さんかと思っていたら違った。「あの<偽>にはヒフンコウガイしました。漢字、大丈夫ですやろな、記者さん! ハハハ」。冗談大好き、おもろ いおっさんで安心した(漢字、どう書くんだったかなあ)。いまや師走の風物詩ともいえる「今年の漢字」、阪神大震災のあった95年から日本漢字能力検定協 会が主催し、この12日に発表される。
 「いやー、もはや日本だけのニュースやなくなってますよ。インターネットとかで世界に飛んでいる。 お寺に海外の要人が来られては、日本を表すのは<偽>ですか、となんべん言われたことか。ああ、恥ずかしい。恥ずかしい。そやけど、漢字が中国でできて以 来、なんと50いくつもの<いつわり>を意味する字があるそうです。お釈迦(しゃか)さまもこの偽りの心こそが人間そのものと言っておられます」
  穏やかに茶をすすっていた顔が険しくなった。「タガがなくなってしもうたんですわ」。タガ? 「人間が偽りの心をむき出しにしてどうするんです。戦後、ア メリカから民主主義がきた。それはよかった。でも、個のみを主張する個人主義の風潮がまん延してしもうてね。米国にはちゃんと信仰がある。神さんが見ては るんです。神さんと人間の契約なんですよ。そこに歯止めがある。日本は宗教心を消し去ろうとした。神さんも仏さんも見てない、そやから何をしてもいい、 と」
 「網」にたとえた。魚や虫をとる、あの網である。「仏教ではよく使います。網を見てください。必ず上下左右の糸を共有しているで しょ。そのつながりが網を構成しています。ひとつの糸だけでは網にならない。利己やなしに利他の心がないと、うまくいきませんわなあ」。そっと目をつむ り、そして利己といえば……と思い出したように語りだした。われらが首相、麻生太郎さんのことだった。
 「人間、自己愛はしようがありません。だからお互い仲ようするんです。助け合うんです。相互扶助。それを総理たる人がなんですか、たらたら食べて、飲んで何もしない人の分の金を何で私が払 うんだ、なんて。ようそんなアホなことが言えましたな。名古屋の演説でもそうでした。岡崎だったらいいけど、名古屋で同じことが起きたら洪水だよって。根 は一緒です」
 ほとほとあきれはてた声で、ある短歌をそらんじた。

 わが胸の
  燃ゆる思いに
   くらぶれば
    煙は薄し桜島山

 「幕末、筑前は福岡藩の勤皇の士、平野国臣が詠んだ歌ですよ。こんな境地になれる政治家に出て来てほしいですわ。国を憂え、人をいかに幸せにするか、その情熱がどれほど激しかったか。桜島の噴煙すら、あんなのたばこの煙だみたいな感じですから」
 ■
  先の見えぬトンネルの中であえぐ国民にカネをばらまけばいいなど、およそ政治ではない。永田町がいかに能天気か。なら、誰を頼ればいいのか? エピソード を紹介してくれた。ある日、米国の元副大統領、モンデールさんが訪ねてきたとき。「清水の舞台から飛び降りるとは、グランドキャニオンから飛び降りるって ことですね、とおっしゃったんです。誤解されてるんですな。あの言葉は観音さまに一切をおまかせする、観音さまと一緒に歩む気持ちになる、そうすれば見 守ってくださる、心の安らぎが得られる、という意味でしてね」
 平安の昔から庶民の信仰を集めた観音さま、インテリだった紫式部も清少納言 もお参りしている。どこかに安らぎがなければ、不条理なこの世を生き抜くのは難しい。ある意味で知恵である。「信仰心だけやない。日本には日本のやり方が ある。そろそろそれを掘り起こし、生活に取り戻していく。必要ですよ。もともと勤勉でしょ。近江商人の三方よしの精神もそう。売り手よし、買い手よし、世 間よし。それを忘れ、むちゃくちゃになった。偽物だらけ」
 もっと、もっと無駄を、とも繰り返した。ノーベル賞ラッシュの話題になったとき である。「やっぱり、ほんまもんの力をつけるには余分なことやらんと。小僧も寺に入ったらすぐお経教えてもらえるかというと、そうでない。朝は掃除、ご飯 炊き、そして後片付け、そんなのをずーっとやってきて、お前、そこへ座れ、それからお経です。子守やお使いもするなあ。それがプラスになるんですわ」。効 率ばかり追い求めるな、としきりに戒めるのだった。
 ■
 さて、大きく地球に目を転ずれば、戦火は絶えない。テロのニュース が続く。「ユネスコ(国連教育科学文化機関)憲章の前文、ご存じですか? こうあります。<戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和 のとりでを築かなければならない>。これ、まるでお経やないかと思いました。戦争は自然発火するんやない。誰かが火をつけるんです。平和も勝手に生まれな い。不断の努力がいる。日本、してますか?」
 またこんなエピソードを紹介してくれた。EU(欧州連合)の代表団が寺にやってきて、抹茶を たてた。使ったのは霊験あらたかな音羽の滝の水。「所願成就、もろもろの望みがかないます、とお出ししたら、ドイツの方が言うんです。ここにいるみんなの 思いは違う。通貨、経済、文化……。その妥協点を見いだそうとしている。なのにこの水を飲めば解決する、いったい、どういうわけか、と。参りましたね。考 えました。霊水を一口飲めば、みなさんの心は観音さまになる。そうすればヨーロッパはむろん世界が観音さまの浄土になります、と」
 ところで、今年の漢字、どんな字になると? 「あれはね、当日の朝、封筒にのり付けして渡されるんです。けいこする時間はありません。ぶっつけ本番。そうですな あ、2年連続で<偽>かなあ。いや、ひょっとすると」。そうつぶやき、指で字を書いた。それ「失」ですか? 「失言の失、信用を失うの失や。どうなるかわ からんけど。練習しとかなあかんかな」。いつか書きたい字はありますか?
 「ああ、よう聞いてくれはった。<恕(じょ)>。書いてみたいで すなあ。忠恕という言葉もありますが、心の底から思いやる、相手の気持ちになるという意味です。これ、人倫の基本だと孔子さんが言ってますよ。発心即到と いう言葉もあって、思いついたら、すでに到(いた)っている。できなくてもいい、そうしようと前向きの気持ちでいきましょうよ」
 麻生さん、たとえ漢字が苦手でも、貫主の揮毫を見て、この国のいまをしかと認識してほしい。とてつもない日本と楽観していられるかどうか。「顔に墨でペケでも書きますか、ハハハ」【鈴木琢磨】

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 ■人物略歴
 ◇もり・せいはん
  1940年、京都市生まれ。55年、清水寺貫主、大西良慶和上のもとで得度。花園大文学部卒業後、円福寺専門道場で雲水修行。泰産寺住職などを経て、88 年、清水寺貫主・北法相宗管長に就任。全国清水寺ネットワーク会議代表。著書に「一文字説法 観音のこころ」「心を活かす」「心に花を咲かそう」など。
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今のご時勢、「恕」の字は出てこないよなぁ。
つくりが少し違う字なら、毎日顔出すけど....。

「ぶら下がり」答えない方がいい…首相イライラ?
読売新聞2008年12月5日(金)22:30
 「これから、ああいうのはなるべく答えないようにした方がいい」
 麻生首相は5日の衆院予算委員会で、記者団の質問に立ったままで答える「ぶら下がり取材」に対し、強い不満を示した。
 民主党の原口一博氏が、日本郵政グループの株式売却凍結に言及した11月19日の首相発言の真意をただしたのに対し、首相は「株価が安い時に売る やつがいるかと(記者に)言っただけなのに、永久に売らないみたいな話に(なった)」と強調。「とにかく、よう(話が)作り替えられる」「ゼロからずーっ と説明するのは、正直、ぶら下がりなんかの時はとても出来ない」とも語った。
 首相は委員会終了後、首相官邸でのぶら下がり取材にはいつも通り応じた。国会でのメディア批判は、相次ぐ発言のぶれが報道され、内閣支持率が低迷していることへのいら立ちの表れと見られる。


「マンガばっか読んでる訳じゃない」首相、故事うんちく
朝日新聞2008年12月5日(金)21:49
 「おまえ、マンガばっか読んでんじゃねえか、なんて言われても困りますんで」。麻生首相は5日の衆院予算委員会で、小泉元首相が所信表明演説で引 用した長岡藩の「米百俵」の故事が話題にのぼると、「佐久間象山の弟子に『二虎』と言われた一人が吉田寅(とら)次郎、後の松陰。もう一人が(長岡藩の) 小林虎三郎。その話ですね」とうんちくを傾けた。
 ただ、別の場面では、事実関係に誤りも。首相は日経平均株価の史上最高値を「89年12月28日の3万9980円」と述べたが、実際は12月29日の3万8915円。首相はしばしば経済や金融にまつわる数字をそらんじてみせるが、うろ覚えもあるようだ。

そもそも「軽い」発言繰り返す総理がしょーもな過ぎるんだろうね。
コイツの言うこと、ぶら下がってまで取材する価値なんざないって、バッサリ切り捨ててやりゃイイのに、マスコミってのは、仕事と割り切りが過ぎるんでないかい?
KYの定義について、こんな話を何かのTVで見た。
麻生ってのはKYの塊だって話
 - 空気    読めない
 - 漢字    読めない
 - 国民感情 読めない
 - 経済    読めない
 - 解散    やれない

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