木曜日, 11月 20, 2008

「明日は我が身…」中央省庁の官僚や裁判官に衝撃広がる


読売新聞  2008年11月19日(水)23:12

 旧厚生省の元事務次官宅が相次いで襲われた事件で、中央省庁の官僚や裁判官は強い衝撃を受けている。

 道路特定財源の無駄遣いが問題となった今春、国土交通省のある幹部は、インターネット上に「道路関係団体と癒着している」などと名指しで書き込ま れた。見知らぬ相手からの批判に不安を感じたが、「今回の事件の衝撃は、はるかに超えている。命まで覚悟しなければならないのか」とため息をついた。

 成田空港の拡張を巡り、過激派に、自宅に爆弾を仕掛けられた経験を持つ旧運輸省OBは「当時も、家族や近所の人まで巻き込もうとしたことに血の気 が引いたが、今回の事件の印象は、当時と微妙に異なる」と言う。「自分は役所全体を脅すために狙われたが、今回は特定の個人に矛先が向けられた気がする」 と話す。

 関東地方の地裁で民事裁判を担当する男性裁判官は約10年前、担当していた訴訟の関係者と見られる人物から「自分たちの意に反する判決を出せば、 家族全員殺す」という手紙を送りつけられたことがある。結局、何も危害はなかったが、沈うつな気分に襲われた。今回の事件についても「もし、年金問題が犯 行動機なら、誠実に仕事をした人の命を狙う事は絶対に許せない」と話した。

 刑事裁判の経験が長い最高裁幹部は、オウム真理教の信者が長野地裁松本支部の裁判官官舎を狙った松本サリン事件の衝撃を思い起こした。「被告から 脅迫の言葉を投げつけられることはあっても、相手が見えないことは、あまりない。今回のような犯罪は時間とともに社会不安が増す。一刻も早く解決されなけ れば」と言う。

 殺害された山口剛彦・元次官が旧厚生省の年金課長だった際、直属の部下だった前宮城県知事の浅野史郎・慶応大教授は「吉原さんも山口さんも次官を 辞めてかなりたつ。なぜOBが狙われたのか、なぜ家族が巻き込まれたのか、不可解なことが多すぎる」と指摘する。その上で「霞が関全体に『明日は我が身』 というおびえや不安が広がった。中央官庁の仕事に携わる人たちを 萎縮 ( いしゅく ) させ、その意味では国家的な危機だ」と事件の影響を深刻に受け止めた。

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バランス感覚の問題として、考えてみる。

真面目に仕事に取り組んでいる人間を、変に萎縮させるようなこの手の犯罪が、許されるべきでないことは重々承知しているものの、不特定多数の人々から集めた「なけなしの」お金を扱っている自覚に欠け、発覚さえしなければ問題なしとの感覚で、いい加減な仕事に終始していた人間に対する警鐘となった、との見方もある。

無論犯罪行為に対して、志如何で全てを容認するような論調に、組するつもりは毛頭ないが、G8で第二位の自殺者比率という情けない現状を前にすれば、既得権益にぶら下がる「勝者」と思しき面々に対して、誰もが一家言持ったまま暮らしているのも実情だ。

やはり、単純に考えるべきと思う。

人殺しは悪い行為である。 犯罪者検挙前のタイミングではあるし、社会的な歪をどうこう論じる以前に、まずは、この一点を明確にすべきなのだろう。

ただ、考えておかなければならないのは、仕事の結果という意味において、大きな意味では、公務員に対して、何ら「責任」が発生しない点である。 糾弾されるべきは、国民の代表者である政治家だとする理屈は理解できたとして、職責を全うさせるためには、その地位が保護される公務員の行動は、時として社会通念から、大きく逸脱して映じる場合がある。
単純な図式に落とした場合、彼らの行動が生活苦を強いるのであれば、テロと呼ぶには似つかわしくない程度の「恨み辛み」が、今回の事件の顛末であるケースも十分に考えられる。
次の被害に怯える状況を打破するためには、本当の意味での「構造改革」が、必要なのかもしれない....。

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