金曜日, 12月 12, 2008

<クローズアップ2008>無保険の子、救済法成立へ 地方が国を寄り切る


毎日新聞2008年12月11日(木)13:00
 中学生以下の「無保険の子」を一律救済する国民健康保険(国保)法改正案を10日、衆院厚生労働委員会で全会一致で可決した。来週にも改正法が成 立する。厚生労働省は「世帯単位の原則」を盾に子どもだけを対象とした一律救済に抵抗してきたが、住民福祉を担う市町村が続々と独自救済に乗り出し、流れ をつくった。法改正は大きな前進となるが、高校生を含む「18歳以下」への拡大や、国保会計の赤字に苦しむ多くの自治体に対する国の財源措置などが今後の 課題となる。【竹島一登、平野光芳】

 「野党案は放っておくはずだったが、風向きが変わった」。自民党厚労族幹部は、急転直下の解決をこう振り返った。
 厚労省は10月末、全国調査の結果公表に合わせて急病などに限った保険証交付を軸とする対策を通知しただけで、法改正は否定する姿勢を貫いていた。
 民主党など野党3党は11月、「18歳未満」を救済する独自案を提出したが、与党は否定的だった。一方で、11月28日に国会の会期延長が決定し、与党も何らかの対策を示すよう迫られてもいた。
 毎日新聞の今月初旬の全国調査では、無保険の子がいる816自治体のうち235自治体が救済に乗り出していた。一方、他の自治体は子どもだけを救済することは「世帯単位の原則」を掲げる国保法に抵触しかねないと二の足を踏んでいる。

 このままでは市区町村の対応にばらつきが出て、実務が混乱すると懸念した新潟県の泉田裕彦知事と佐賀県の古川康知事は2日、厚労省の江利川毅事務次官に「救済を法制度に位置付けるべきだ」と直談判した。こうした地方の圧力が与党にかかった。
 与党側は先週の非公式協議で「市町村が独自に行っている公費医療助成の対象年齢までを認める」とする案を示したが、民主党は「一律救済でなければ他法案にも協力できない」と譲歩を迫った。
 この結果、自民の鴨下一郎、民主の山田正彦両衆院議員が水面下で協議を続け、先週末までに「15歳以下」を軸に合意。正式に野党が改正案を受け取ったのは今月8日朝。同日中に両党ともに了承手続きを取り、土壇場で決着にこぎつけた。

 ◇ 短期保険証を発行 6カ月ごと状況確認--中学生以下
  保険料を滞納すると、まず有効期限1年(一部2年)の通常保険証から、期限が短い短期保険証に替えられる。滞納が1年以上続くと、保険証に代えて、医療費 の全額自己負担が必要になる資格証明書の交付となる。改正法が施行されれば、滞納世帯でも中学生以下の子どもには保険証が発行される。保険証はどう変わる のか。
 現行では、発病や被災など特別の事情がある場合、滞納世帯への資格証発行は免除している。また被爆者や未熟児などには手厚い医療が不可欠として、個人単位で保険証を交付している。改正案はこの例外規定に中学生以下の子どもを加えた。
  来年4月以降、市区町村が中学生以下の子どもに保険証を発行する。4月1日時点で無保険の子がいれば速やかに発行すると規定しており、市町村は正確な実態 把握を迫られる。子ども向けの保険証は、有効期限6カ月の短期保険証となり、期限が切れれば新しい短期証が発行される。更新期限ごとに親の保険料納付が可 能になったかを確認し、滞納の助長を防ぐためだ。

 ◇ 「18歳以下」に拡大課題
 「子どもを守る法的裏づけができた」(千葉市)、「救済が正確に定められた」(大阪市)など、市区町村からは改正法案可決を評価する声が相次いだ。
  厚労省は「子どもを救済すると滞納する親が増えるのではないか」と危惧(きぐ)し、法改正に抵抗してきた。厚労省調査(9月15日現在)で無保険の子が 3692人いて全国最多だった横浜市によると、子どものいる滞納世帯は約2900世帯で、国保加入の約55万世帯の0・5%に過ぎない。市保険年金課は 「払いたいのに払えない人が圧倒的に多い」と話し、滞納の助長にはつながらないとみている。
 自治体独自の救済策は、対象年齢にばらつきが ある。高校生を含む「18歳以下」と、児童福祉法に基づいた「18歳未満」が広く救済を目指す設定だ。11月に18歳未満の救済を図った札幌市は「医療保 障という法の趣旨に沿ったもの」と当初方針を維持する。法改正後も、対象年齢の引き上げは課題となる。
 慢性的な国保の赤字会計に悩む自治体が多い。このため独自救済ができなかった自治体があった。国保加入者は自営業者や非正規雇用者が多く、不況で財政運営は厳しさを増すため、法改正で生じる救済費用の財源措置を求める声は強い。
 また国保の財政難を反映して保険料が上がり、滞納を招いているという見方もある。宮城県石巻市の担当者は「国保に入れば、社会保険加入の同じ所得の会社員と比べ、負担は2・5~3倍だ。やむを得ない滞納による赤字は、公的に補てんすべきだ」と指摘する。

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弱者救済もさじ加減か? 実運用の話より、行き着くところは「財源」のような気もするんだけど....。

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