日曜日, 12月 28, 2008

若者顧みぬ政治に異議―ルポにっぽん


朝日新聞2008年12月28日(日)02:20
 差し出された名刺にはフリーライターと記されていた。昨年、パソコンで名刺をつくるまではフリーターだった。コンビニで働きながら考えた世代の問題を月刊誌「論座」に寄稿した。それが赤木智弘さん(33)の分岐点だった。
 東京の暮らしは厳しかった。ハンバーガー店などの稼ぎでは生活費が足りず、消費者金融から借りた。栃木の実家に戻り返済のために働いていると、問題はどこにあるのかと考えるようになった。
 〈社会に出た時にはバブルは崩壊し、企業は採用を絞っていた。景気回復後もフリーターを正社員に雇おうとはしなかった。経済成長時代を生きてきた世代が身を守るため、不利益を押しつけている。貧困から抜け出せない「平和な社会」なんてロクなもんじゃない。〉
 でも、私もその一人だけれど、個人や企業は身を守ろうとしがちです。政治が公平なルールを作るべきでは――。そう尋ねると、赤木さんは不信感をのぞかせた。
 〈政治は投票率が高い高齢者にばかり、目を向けている。昨年の参院選は年金が争点になったが、財源となる保険料を払えない若者の増加は顧みられなかった。水源を枯らしておいて「蛇口から出る水を増やせ」と言うようなものでしょう。〉
 少子高齢化で若い世代が背負う重みは増していく。年々逆立ちする人口ピラミッドからもその重さがみてとれる。なのに政治は彼らの声に鈍感だ。投票率が低 く、魅力ある「票田」と映らないからだ。だがその結果、高齢化社会の支え手が弱れば、逆さピラミッドは「倒壊」してしまう。
 〈これからは頼る親も退職し、食べることに事欠く人が増える。私たちに残された時間は短いのです。こんな政治は早く崩壊してほしい。その方が再建も早い。〉
 この秋、再び東京の暮らしを始めた。フリーライターとして訴えるために。
    ■   ■
 「高齢者の意見ばかり反映される政治ではいけない。ワカモノ民主主義を築かなければ」。政策を競うイベントで、千葉県市川市議の高橋亮平さん(32)が呼びかけた。
 同世代の仲間とまとめたのがワカモノ・マニフェスト。選挙権・被選挙権年齢を引き下げ若者の政治参加を促す。「世代間格差是正基本法」では情報開示も義務づける。
 情報の一つが世代会計だ。内閣府の試算によると、20歳未満と今後生まれる将来世代は、一生のうちに1億5千万円以上の税や保険料を払うのに、政府から 受けとるサービスは1億1千万円足らず。4600万円の「負担超」で、4900万円の「受益超」の60歳以上とは1億円近い差がある。支える側が減り支え られる側が増えるうえ、国が重ねた借金まで背負うためだ。負担を強いられるのは選挙権を持たない世代だ。
 内閣府は2年に1回程度試算していたが、05年が最後。なぜかと聞くと「厚生労働省の試算とは単純に比較できないのに、比べた問い合わせが多かっ た」との説明だった。若者の年金離れが進む中、厚労省は試算で、どの世代も払った保険料より多くの年金を受け取ると示した。年金に投じる税も考慮していな いこの試算と矛盾していると言われないよう、「将来世代は負担超」と示すのをやめていた。
 高橋さんは打ち切りの背景に、政治家の働きかけがあったといううわさを耳にした。真偽を聞く私に、内閣府は担当者の異動などを理由に「分かりかねます」と答えた。
 高橋さんは、初当選した03年は民主党公認。07年は無所属で立った。「自民も民主も将来にツケを回そうとしている。根本の民主主義の仕組みが疲 弊しているんです」。11年の統一地方選で同世代の同志を募り、各地で首長を誕生させるシナリオを描く。新しい政治をつくるために。
    ◇
 政治の「不公平」への異議があちこちで聞こえる。その一つが世代の問題だ。将来世代をはじめ、顧みられない多くの民意。成長の時代が終わり、縮む時代の入り口に立ついま、日本型民主主義のひずみは際だつ。(松下秀雄)


何言えばいいんだろ?....

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